第1回座談会 -肝細胞がん治療の現状と今後の展望について-

この度、一般社団法人22世紀先端医療情報機構(理事長:吉野 孝之)が企画協力する、がん領域にセグメントした医師向け情報ポータルサイト「オンコトリビューン」がリリースされました。今回はHCC治療の第一線で活躍されている先生方にお集まりいただき、HCC治療の現状と今後の展望について、特に分子標的治療薬と免疫チェックポイント阻害剤に関する使い分けやこれらの新薬への期待について、ディスカッションしていただきました。

一次治療でのソラフェニブとレンバチニブの使い分けと適応

古瀬先生:
現状は、一次治療で使用できるのがソラフェニブとレンバチニブですが、レンバチニブが使えるようになってからもうすぐ1年です。どのように使用していますか?
小笠原先生:
新しい薬剤と古い薬剤があると、どうしても新しい方を選択する人が多いように思いますが、我々の施設では、基本的には主治医と患者さんとの関係性に任せ、好きな方を選ぶという方針をとっています。最近はレンバチニブの使用が多く、ソラフェニブが少なくなってきていますが、それが本当に妥当なのか客観的に評価しようと考えています。REFLECT試験はソラフェニブ群の後治療にレンバチニブを使用することを禁止した状況でのRCTですので、二剤のどちらを最初に使用したら良いかの客観的な評価が求められるでしょう。
池田先生:
当院の一次治療は、ほぼレンバチニブです。タンパク尿があるなどすると使いづらいですが、我々の施設は、新しい薬剤が出たら一度試そうという試みは常にあります。レンバチニブを使うと腫瘍の縮小が明らかなケースもあるので、レンバチニブの使用頻度が高くなっています。REFLECT試験では、2剤に全生存期間(OS)の差はないですが、新薬に期待するところが多く、使っています。
古瀬先生:
レンバチニブは思ったより早く普及したと思いますが、上野先生、その辺りいかがでしょうか?
上野先生:
当院でレンバチニブを経験したのはまだ半年~1年ほどで、いま毒性を実感している状況だと思います。レンバチニブを積極的に使っているのは、奏効率の高さのほか、OSが若干上をいっているという点です。しかし、使用するにつれて、効果よりも毒性で苦労していることが目立ってきて、本当にこのままレンバチニブが一次治療でよいのか、今後見直されていくのか、そこは小笠原先生と近い感覚をもっています。
古瀬先生:
臨床試験の症例は絞られているので、実臨床で広く使うとなると、半年以上経ちデータも溜まってくるので確かに見直す時期なのかもしれませんね。小笠原先生、こういうケースはレンバチニブを避けた方がよかったとか、ありますか?
小笠原先生:
高齢者で体重の少ない患者さんの場合はどのように使っていくのがよいか検討が必要です。
古瀬先生:
レンバチニブを一般臨床にもっていくときに、REFLECT試験で除外されていた対象はどうされていますか? Vp4、Child-Pugh分類B、腫瘍量50%以上などが除かれていたわけですが、そこは実臨床で全く使わないのか、使うとしたらどこに注意すべきか、小笠原先生の施設ではどうされていますか?
小笠原先生:
それらの症例にも使っています。ただ、安全性をきちんと検証してから一般化したほうがよいかと思います。
古瀬先生:
REFLECT試験に入っていなかった対象に使うときの懸念は安全性ということですか?
小笠原先生:
はい、安全性だと思います。これらの患者さんは恐らく1レジメンしか使えない方が多く、ソラフェニブのときは、ある程度安全性データが出て、Child-Pugh分類Bでも7点までは投与してよいとわかったので、レンバチニブも同様にきちんと検討した方がよいかと思います。
古瀬先生:
池田先生はいかがですか?
池田先生:
腫瘍量が多い場合はレンバチニブのメリットが大きいと考えています。抗腫瘍効果が強い薬剤は期待できると思っています。Vp4症例には血管新生阻害をすることにより肝不全が出てこないかという点を心配する意見もありますが、実際にやってみて、そこまで苦しいと思ったことはないです。Child-Pugh分類Bに関しては、レンバチニブは副作用が強く出てしまう人がいるので、安全性を確認した上で広めていくべきです。
上野先生:
Child-Pugh分類Bについてはかなり慎重に考えていて、ソラフェニブなのか、あるいは肝動注化学療法などもあるので、そこまで積極的にはレンバチニブを投与していません。
小笠原先生:
私は、Vp4症例への投与は、正直コントラバーシャルだと思います。Vp4の病態は非常に難しくて、肝臓の状態によってこの人は使える使えないというのは高度な判断になってきます。適切に患者さんの肝機能を含めて判断できれば、肝性脳症のリスクもある程度抑えられて使ってもいいとは思っていますが。
古瀬先生:
ソラフェニブに関していうと、Child-Pugh分類AやBを対象に大規模な前向き観察研究GIDEONが行われ、Child-Pugh分類Bにおける安全性や有効性がわかりました。レンバチニブに関しても多施設でデータを集めていくことが重要になってくるんでしょうか。
一同:
そうですね。

レンバチニブの毒性マネジメントについて

古瀬先生:
レンバチニブで気を付けなければいけない副作用、またマネジメントが難しい副作用について何かありますか?
池田先生:
レンバチニブはハンドフット(手足症候群)を気にしなくてよい分、その点の毒性マネジメントは楽になりました。でも長期投与していくと徐々に蓄積性なのか毒性が出てきたところが問題かと思います。倦怠感や食欲不振というものはだんだんボディブロウのように効いてくるので、そこを適切に減量・休薬する方法で長期間投与することを心がけてやるべきだと思います。
古瀬先生:
減量や休薬でうまく乗り切っていくということですね。上野先生の施設では取り組みなどありますか?
上野先生:
うちの施設でもレンバチニブを長く投与できるマネジメントを心がけています。若干、肝性脳症の症例が散見され、重篤な合併症なので、早期発見ができるようにチームで取り組んでいます。
古瀬先生:
レンバチニブ投与中にビリルビンが上がってくる症例はないですか? 直接ビリルビンではなく間接ビリルビンが上がってきて、休んだら下がるという経験があるんですが、それは肝障害なんでしょうか?
小笠原先生:
我々のチームが共有しているのは、迷ったら減量・休薬しましょうということで、基本的にレンバチニブ投与例の70%以上は減量・休薬しています。そのため、有害事象の中止率は16%と低く抑えられています。古瀬先生がおっしゃるように、ビリルビンが少し上がってくるなど変な肝機能の動きをする症例は、自分らも経験しています。その場合は休んで減らせばビリルビンは下がりました。
古瀬先生:
なるほど。薬を減らすと下がるから、確かに薬の影響でしょうね。レンバチニブを使用する上での重要点は、迷ったら減量か休むという点ですね。

肝動注療法の位置づけ

古瀬先生:
一次治療のうち日本で解決しなければいけない問題に肝動注療法の位置づけがあります。池田先生はレンバチニブが出てきて、肝動注療法の役割はどう変わるとお考えですか。
池田先生:
難しいですね。肝動注療法は表裏がはっきりしていて、すごく効いた症例は確かに長生きしていますが、効かなかった症例は厳しいという問題点はあります。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の併用療法による抗腫瘍効果が高まってきている中で、肝動注療法を選択する理由は限られてくるように思います。肝動注療法でメリットを感じるのは、今までの分子標的薬に比べて安いということでしょうか。免疫チェックポイント阻害薬と比べると、ずいぶん安いので、たとえば、アジアの国々には支持されるのかもしれません。
古瀬先生:
肝動注療法は効く人をどうやってひろい出すかという点がポイントですね。上野先生も肝動注療法をおこなっていると思いますが、感触はどうですか?
上野先生:
治療方針が限られていて状態の悪い方の中では、一発勝負という意味で肝動注療法は残っていく可能性はあるかと思います。ただ、そのためのデータをつくっていかないといけません。
池田先生:
肝動注療法に関する10施設くらいのレトロスペクティブな検討を小笠原先生の施設が代表機関として実施されていますよね?
小笠原先生:
はい、肝動注療法またはソラフェニブを使った約2000例を連続的に登録する研究です。遠隔転移がなく脈管侵襲のあるサブグループにおける2剤の比較が興味のある部分です。そのようなサブグループでの実臨床における使用数は同じでした。約250例ずつでしたが、マッチングさせて比較したところ、肝動注療法がソラフェニブに比べて、有意にOSを延長したという結果が得られました。
古瀬先生:
Vpはどのくらいの症例が入っていたのですか?
小笠原先生:
2、3、4です。メジャーとマイナーで分け、層別化してマッチングしました。
古瀬先生:
効き目のある方にはよく効くようなので、肝動注療法が効く症例の選別がポイントですね。
小笠原先生:
Vp4の症例や、Child-Pugh分類 Bで7点の症例に免疫チェックポイント阻害薬がどのくらい効くかに関心があります。あまり効かないということであれば、その部分には肝動注療法が残っていくのかもしれません。

二次治療でのレゴラフェニブとラムシルマブ、カボザンチニブの使い分けと適応

古瀬先生:
今後、薬が増えてくると、それらを用いた二次治療や三次治療が行われます。現在はレゴラフェニブだけですが、今年中に血管新生阻害ラムシルマブが使えるようになります。カボザンチニブは欧州や米国では承認され、日本でも治験をやっていますのでしばらくすると承認される可能性があります。一次治療後に複数のチロシンキナーゼ阻害薬、あるいは血管新生阻害薬が使用可能となったときにどうやって使い分けていくべきでしょうか。二次治療についていかがですか?
上野先生:
RESOURCE試験の結果から、ソラフェニブとレゴラフェニブのシークエンスに一定のエビデンスがあるのは確かだと思います。一方、レンバチニブの後にレゴラフェニブをもっていけるのかどうか、少なくともルーチンにもっていけるのかどうかはまだ懐疑的です。レンバチニブの後に二次治療や三次治療がどのくらい入るかどうかは、レンバチニブを一次治療に使っていく上でのキーポイントになると思っています。
古瀬先生:
先生の施設では、レンバチニブ一次治療例のうち、どのくらいが二次治療へ入ってますか?
上野先生:
正確な数字は出ていませんが、レンバチニブが入った人の中で約半数程度ではないかと思います。
古瀬先生:
これから計算していくという段階ですよね。レゴラフェニブもラムシルマブもカボザンチニブもそれぞれエビデンスが出てきていますが、臨床試験の対象がそれぞれ異なるので、結果を一般化できるのかどうか。
池田先生:
レンバチニブ後のレゴラフェニブは忍容性が不明なところがあります。カボザンチニブは、比較的オールカマーに使用できる印象はありますが、毒性プロファイルは、レゴラフェニブとあまり遜色ないという印象です。ラムシルマブは、AFP400以上という縛りがありますが、AFP400を超える患者さんは恐らく過半数もいないので、少し限られた対象となります。ただし、毒性プロファイルが一番楽という点はメリットです。
古瀬先生:
一次治療をレンバチニブにした場合のソラフェニブの位置づけはいかがですか?
上野先生:
当院では、レンバチニブの後はソラフェニブを投与しており、レゴラフェニブに直接移行はしていません。
池田先生:
レンバチニブ後のソラフェニブが有効かという点は個人的には疑問で、他のキナーゼ阻害薬に比べて、多くのターゲットを阻害する力がレンバチニブにはあるので、その後に、同系統の、しかし、パワーとしては弱いキナーゼ阻害剤を投与したときに本当に有効なのかどうかはクリニカルクエスチョンです。
古瀬先生:
確かに池田先生が言うように、レンバチニブの後のソラフェニブがどれくらい効いているのかを確かめる必要がありますね。
小笠原先生:
別の視点になりますが、今ある日本のデータとして、一次治療のレンバチニブも、ソラフェニブの後の二次治療のレンバチニブも、奏効率は相違ないという報告があります。我々の研究も含めて、同様の研究結果が2報発表されています。ソラフェニブの一次治療後にレゴラフェニブを投与した症例はOSの中央値が26カ月以上であり、かなりいい成績です。その理由のひとつとして、二次・三次治療にレンバチニブが入り効いている症例が結構出てきているためです。そうなると、どの順番が本当によいのかは再検討が必要だと思っています。

免疫チェックポイント阻害剤の併用療法について

古瀬先生:
免疫チェックポイント阻害剤について、HCCを対象とした、さまざまな併用療法に関する臨床試験が走っていますが、小笠原先生は併用に関して、期待などありますか?
小笠原先生:
併用試験のデータを拝見する限りでは、非常にプロミッシングだと思っています。いずれ、単剤でどういった結果になるかわからないですけども、少なくとも併用療法の結果は肝がんの治療体系をよりもっと変える可能性があるかなと思っています。単剤の危険のインパクトより、より大きいのではと予想しています。
古瀬先生:
アテゾリズマブとベバシズマブの併用結果で、最初、奏効率61%だったのが秋に症例数が増えて32%に半減したわけですけども、そのあたり、上野先生は客観的にみていかがですか?

上野先生:
詳細は不明ですが、最初の数字がとてもいいので、かなり絞り込まれた症例でしょうが、32%という数字はどうなのかな、施設数の増加など、本当はもう少しいいかもしれないし振れ幅の範囲が限られた症例なので、これで期待度が変わるわけではないです。
古瀬先生:
たまたま30前後で少し落ちちゃったのかもしれませんね。しかし、かなり抗腫瘍効果は高くなると考えていいんでしょうかね。レンバチニブとペムブロリズマブを出しているので、池田先生、併用の感覚はいかがですか?
池田先生:
HCCなので、VGFを阻害する効果が必要なのかなという点で、ベバシズマブが加わることで30%まで出てくるとは思いませんでした。相乗効果が出ていると。レンバチニブとペムブロリズマブ併用をやっている立場からこれを評価すると、ベバシズマブとアテゾリズマブの副作用のマネジメントは明らかに楽だと思います。そういう意味で3割出るということは魅力的に思います。Child-PughBでも可能性を感じる組み合わせだと思います。逆にレンバチニブとペムブロリズマブは、ある程度オールマイティに通用し、免疫チェックポイントの効果で上乗せ効果がかなりいい感じに出ていてよく効く感じはみなさんの想像通りです。実感もしています。しかし、副作用マネジメントは、レンバチニブ特有の徐々に苦しくなってくるので、ここで休薬・減量のマネジメントをしながら長期間投与を続けています。なので、レンバチニブとペムブロリズマブの方が副作用マネジメントが難しい。でもその分期待度も高い。といったところです。
古瀬先生:
レンバチニブは、VGFを抑えるだけじゃなくてFGFRも抑えるわけで、そのプラスアルファで理論的に期待できる効果はありますか?
上野先生:
最近、FGFとの相乗効果もあるらしいですね。
古瀬先生:
ベバシズマブよりもレンバチニブの方が、また違った意味で効果が期待できるかもしれないということですか?
上野先生:
そうです。
古瀬先生:
では、今後どのくらいのスピード感で併用は出てきますかね? 今、アテゾリズマブとベバシズマブ(※以下アテゾベバ)は、ソラフェニブとの第Ⅲ相試験中で、レンバチニブとペムブロリズマブ(※以下レンバペムブロ)はこれからですか?
池田先生:
試験が動きはじめています。
古瀬先生:
これはレンバチニブ対になるから、もう少し新しいエビデンスが出てくると。アテゾベバの弱いところはV’sソラフェニブなので、そこがどれくらいのデータが出てくるかですね。
池田先生:
弱いところなのか、逆に強いところなのか、私にはわからないです。我々にとっては、レンバペムブロV’sレンバチニブが、一番クリニカルクエスチョンを解決してくれる気がするんですけどね。アテゾベバの試験はポジティブになりやすい試験です。
小笠原先生:
こういった試験のコントロールアームを比較していけば、適切だったかということもわかってくると思います。ソラフェニブをコントロールアームに指定して、第Ⅲ相試験パーソナルでいくつも走っていますし、今後レンバチニブをコントロールアームにしていく試験が走っていき、全部出揃えば、コントロールアームを比較していけば、それが適切なセッティングかというのがわかってくると思いますがいかがでしょう?
上野先生:
若干、バックグラウンドとか基準によって、少し左右するかなと思いますね。
小笠原先生:
今まで行われてきたソラフェニブをコントロールアームにした試験を比較していくと、約10年間、第Ⅲ相試験やられてきて、それが少しずつ伸びてきたということと、それが適切なセッティングだったということが、今振り返ってみると結構検証されていると思うので、たぶん同じようなことが起こるのかなと思います。
古瀬先生:
それぞれのメリット、強い弱いが出せるといいですね。小笠原先生、肝臓の専門家として、免疫チェックポイント阻害剤は、ウイルス肝炎や肝毒性などを懸念されていましたが、いかがでしょうか?
小笠原先生:
治験の範囲での投薬ですが、肝臓だから問題があるというような印象は受けていないです。今やるべきこととして、もう一回バイオプシーに戻らないとダメかなと思っています。もちろん患者さんに対する侵襲性はありますが、システミックセラピーの前にバイオプシ―はあまりとってこなかったと思うんですけど、そういうことをもう一度考えなおしてもいいのかなと思っています。
古瀬先生:
それは同感です。僕はこの文章的治療になってきてから、調べたくても調べられない、どう変わったかというアーカイブでもいいから、これからしっかりとってください、と言う必要があるんじゃないですかね。
上野先生:
企業治験は比較的どれも必須ではないですか?
古瀬先生:
今の企業治験はあるけど、治験だけじゃなくて、過去のデータがないんだよね。治験に入りたいと来たら何もない、もう1回とらなければいけない。でもとるところはないよ。という状況。

臨床試験strategy ~TACEの位置づけについて~

古瀬先生:
今後の臨床試験のストラテジーとして、TACEの位置づけがどうなっていくか、肝がん・肝細胞がんのほとんどの患者さんはどこかでTACEに入るわけで、TACEの位置づけが大きな関心だと思いますが、池田先生は臨床試験としてTACEをどういう風に使っていきますか?
池田先生:
TACEのところが一番難しいと思っています。いわゆるBCLCでいくと、インターミディエイトステージがTACEのよい適用と言われていますが、そのインターミディエイトステージが幅広すぎて、若い方は根治を狙いにいくTACEを行うという先生方もいる、後ろの方はすでにTACE refractryとか、TACEable という言葉で、もう分子量的治療薬の適用でしょ、という先生もいる。その真ん中のところをどうするかという考え方になってくると思います。真ん中のところでよく言われているのが、TACE併用療法という、いわゆるマルチカイネ阻害剤の併用療法やチェックポイント阻害剤の併用療法というのが今一番騒がれているのですが、すべてことごとく失敗してきているという経過があって、唯一最近日本から出てきたランダム化第Ⅱ相試験ではありますが、TACTICS試験がPFSを延ばした、ただまだこれもOSへの影響は明らかにされていない。結局、TACEに絡む臨床試験でポジティブな結果が出ているものがなかなか出てきていない状況です。なので、今後ここに我々医者も企業もどのようにやっていくのか、有識者が集まって開発を進めていくことになるのかと思っています。
古瀬先生:
TACEの役割とは、切除・ラジオ波ができない患者で根治を狙うケースと、マルチで何とかコントロールして生存期間を延ばしていく2つの流れがあるわけで、小笠原先生は、根治狙いのTACEの位置づけというのはこのままあり続けるのか、薬物療法が出てくると変わっていくのか、どのように考えますか?
小笠原先生:
根治を狙う・・・根治というかダウンステージングですね、コンバージョンというか、手術の前にダウンステージングして、ラジオ波にもっていくとか、そういったTACEの位置づけは残っていくのかなと思います。ただ、TACEで治療制御をしてOSを延ばすという考え方というのは、もちろんシステムセラピーのインパクトにもよると思いますが、例えばIO併用療法がポジティブになったら、そこはリプレイスされていくかと。2010~2015年くらいまでだと、世界中で最も肝がん治療を行っているTACEなので、それがどこまで減っていくかというのは興味があります。
古瀬先生:
上野先生は臨床試験をTACEでやるとして、プライマリーポイントは?
上野先生:
逆に質問しようと思っていました(笑)。後ろもかなり複雑に入ってくる中で、OSで見ないとダメなんですかね、というのが本当に疑問です。エンドポイント・・・肝機能が保てるとか、OSでないエンドポイントを探さないとなかなか開発していけないのかなと思います。
池田先生:
企業さんが薬効を示したいということならPFSなどでもいいわけですが、医師主導でやろうとすると、最終的に患者さんの長生きという観点にたどりつくのでOSという考えになりますよね。見るものによって多少異なる気がします。何となくTACEの併用期間のPFSを延ばしてもOSの延長につながらないのではという印象をみんなが持っているところがあって、そうすると、どれが真の答えなのか・・・。
上野先生:
TACEはすごくいい治療だと思うんですけど、日本らしい治療ですよね。世界ではどんどん薬剤は増えていくのに日本でTACEが残っていると、日本が開発治験に参加しにくくなるんじゃないかと懸念がありますがいかがでしょう?
小笠原先生:
実は、TACEが最も行われているのは中国と韓国のアジア圏です。日本の方が、TACEからシステミックにいくポイントとしては他のアジアより早い気がします。
古瀬先生:
欧米もやってはいますが考え方が全然違うんですよね。日本は悪くなったらやる、欧米はレギュラーに何回かやって終わり、コンセプトが違うのに一緒に国際交流治験をやる意味がないとも考えています。
上野先生:
根治を狙うTACEは開発の邪魔にはならないですよね。オンデマンドか、いわゆるサポーティブというかそういうTACEは確かに開発の邪魔になるかもしれないですね。
古瀬先生:
ほとんどの人がTACEをやる中で、どういう形で臨床試験を組んでいくかは今後の課題になってきますね。薬剤の組み合わせは増えていき、どう薬が入っていくかというのは次の課題なので、簡単にプライマリーポイントは何にできるかとは決まらない。最終的な目的はOSが延びることだけど、それだけやっているとなかなかポジティブにならない。そこをPFSでいいのか、どうゆう条件が整えばPFSがアクセクタブルになるのか、これからも議論をしていきましょう。
今日はみなさんありがとうございました。