第6回座談会
-EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するosimertinibによる術後補助療法ADAURA試験の結果を踏まえて-

今回の座談会は、釼持 広知先生、坪井 正博先生、三浦 理先生、山中 竹春先生にお集まりいただき、ADAURA試験の結果とその解釈について議論していただきました。

米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)で、根治切除後の早期stageのEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌(EGFR-mt)に対する術後補助療法としてのosimertinibの有効性と安全性をプラセボと比較検証した第3相試験(ADAURA試験)の結果がRoy S. Herbst氏らにより報告されました。本試験は、osimertinibの有効性が示され、EGFR-mtに対する術後補助療法を大きく変える可能性が示唆される結果が報告されました。そこで今回の座談会では、釼持広知先生(司会)、坪井正博先生、三浦理先生、釼持竹春先生にお集まりいただき、ADAURA試験の結果とその解釈について議論していただきました。

根治切除後のStage IB期~IIIA期EGFR-mtに対する術後補助療法としてのosimertinibを検討したADAURA試験の概要

釼持先生:
 今回は、ADAURA試験の発表の2nd authorである坪井先生を交えてADAURA試験の結果とその解釈について議論していきます。まず、坪井先生に、ADAURA試験の概要について説明いただきたいと思います。

試験デザイン

坪井先生:
 ADAURA試験は、根治切除後のstage IB期~IIIA期(UICC-7版のTNM分類に基づく)のEGFR遺伝子変異(common mutation)が陽性の非小細胞肺癌の患者さんを対象に、術後補助療法としてのosimertinibとプラセボを最長3年の投与期間で比較した第3相試験です(図1)。主要評価項目はstage II/IIIA期の患者さんにおける無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全患者集団におけるDFS、全生存期間(OS)、安全性などです。この試験は、本年4月に独立データモニタリング委員会で審議された結果、osimertinibの顕著な有効性が示しされたことにより、早期中止の勧告が出され、結果がリリースされることになりました。
 投与期間が3年に設定されたことについては当初より議論がありました。術後補助療法を検討した試験の多くが治療期間を2年と設定していますが、治療期間を終えた直後に再発リスクが上昇する傾向がみられるため、より長期の治療が必要だとの判断に至ったのだと思います。

図1. ADAURA試験デザイン