第8回座談会
-CheckMate-649とATTRACTION-4について-
ESMO VIRTUAL CONGRESS 2020(ESMO2020)で、進行胃癌の1次治療にて、CheckMate 649試験とATTRACTION-4の2つの重要な試験の結果が発表されました。今回の座談会は、沖英次先生、川上尚人先生、設楽紘平先生、朴成和先生、山口研成先生にお集まりいただき、2つの試験の結果とその解釈について議論していただきました。
Contents
CheckMate-649とATTRACTION-4での疑問
- 川上先生:
- 今回、ESMOでCheckMate-649とATTRACTION-4という2つの重要な試験の結果が発表されました。OSとPFSがともにpositiveだったCheckMate-649の結果をみれば、1st lineにおけるニボルマブ+化学療法はHER2陰性胃癌に対する標準治療になり得るといえるでしょう。一方、ATTRACTION-4の結果については解釈が難しいところです。Double primary endpointsのPFSが positiveであった一方、OSはnegativeでした。なぜ、このように食い違う結果になったのか。CheckMate-649と何が同じで何が違ったのか。例えばPFSのHRはCheckMate-649もATTRACTION-4も0.68でした。このデータからは1st line でのニボルマブ+化学療法のpowerは証明できていると思います。一方、ATTRACTION-4ではPFSの benefitがOSに結びついておらず、これが一番の問題点であろうと私は考えています。CheckMate-649とATTRACTION-4のOSは、これまでのglobalもしくはアジアのPhase Ⅲにおける1st lineでの成績とほぼ同様の結果と言えますが、ATTRACTION-4の併用群ではPFS後の生存期間、つまりOSからPFSを引いたPPSが短いという事実があります。OSが17.45ヵ月、PFSが10.45ヵ月なのでPPSは7ヵ月です。SOLAR試験などに比べて極端に短く、このあたりがATTRACTION-4 で生じた疑問を解く鍵になろうかと思います。もう一つ、そもそもの疑問としてOSがnegativeだったKEYNOTE-062(ペムブロリズマブ+化学療法と化学療法単独の比較)に対し、CheckMate-649では非常にきれいな生存曲線の差が見られたことです。免疫チェックポイント阻害剤+化学療法がHER2陰性胃癌のスタンダードな1st line治療として期待される中、こうしたデータの解釈についてご意見をいただければと思います。
相反する結果について
- 山口先生:
- 最初のディスカッションとして何が違ったかという点ですが、いかがでしょうか。背景の国別登録数が圧倒的に違いますが。
- 朴 先生:
- これを違ったと解釈するのでしょうか。もし中間解析を行わずにOSのみの解析をしていたら、OSはKEYNOTE-062でもpositiveとなった可能性のある結果ですよね。HRの違いはありますが、95%信頼区間の中にお互いの中央値が入っています。多少の違いはあるものの、私は同様の傾向であるとの印象を感じます。
- 設楽先生:
- 朴先生と同じ意見です。免疫チェックポイント阻害剤が登場する前は、同じlineで似たような組み合わせの臨床試験を複数行うことはあまりありませんでした。しかし各企業がそれぞれの免疫チェックポイント阻害剤を用いた似たような治験を様々なlineで行うようになり、小細胞肺癌などでもそうですが、結果に食い違いが生じることも珍しくなくなっています。朴先生がおっしゃたように点推定値は確かに異なるもののHRが完全に逆転しているわけではなく、信頼区間は相当オーバーラップしているので、まったく違う結果というよりは微妙な違いというのが私の印象です。