ASCO-GI 2020 FLASH REPORT - Abstract 178 -

Plasma VEGF-D and PlGF levels according to prior use of biologics among metastatic colorectal cancer (mCRC): Preliminary results from GI-SCREEN CRC-Ukit study.

Taniguchi, et al.

背景

切除不能進行再発大腸癌において、血管新生因子を標的とした治療は生存期間の改善を示した。最近、血管内皮増殖因子(VEGF)-Dが血管内皮増殖因子受容体受容体(VEGFR)-2に対する抗体薬であるラムシルマブの抗腫瘍効果の予測因子(バイオマーカー)である可能性が報告された1)。ただし、VEGFやVEGFRなど血管新生に関与する因子と血管新生因子阻害薬の治療効果との関連性、治療ライン間での血管新生因子の動的な変化についての報告は少ない。さらにinterferon(INF)-γやTGFβ1などの免疫関連因子が血管新生因子の調整に関与する可能性も報告されている2)
今回、切除不能進行再発大腸癌に対する治療の効果と血漿中の血管新生に関連する因子との関連性について解析した。

対象と方法

本試験の対象は、20歳以上の切除不能進行再発大腸癌と診断され、下記の①もしくは②に該当し、登録後1)から5)の治療を受ける予定の患者である(図1)。また、RAS遺伝子変異検査を実施していることが適格規準である。

【対象患者の化学療法歴】

① 化学療法が施行されていない患者
② 一次治療にて抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体もしくはベバシズマブのどちらかが施行された後の患者

【登録後の治療予定】

1) 一次治療としてベバシズマブを含む化学療法
2) 一次治療として抗EGFR抗体を含む化学療法
3) 二次治療としてFOLFIRI+ラムシルマブ併用療法
4) 二次治療としてFOLFIRI+アフリベルセプト併用療法
5) 二次治療としてベバシズマブを含む化学療法

登録後、治療前と治療終了後の2ポイントにて採血を実施され、Luminex® マルチプレックスアッセイシステムを用いて、hepatocyte growth factor(HFG), placental growth factor(PlGF), VEGF-A/D, INF-γ, interleukin(IL)-6/8, thrombospondin(TSP)-2, osteopontin(OPN), soluble VEGFR-1/2/3, soluble intercellular adhesion molecule(sICAM)-1, soluble vascular cell adhesion molecule(sVCAM)-1,tissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)-1が測定された。
2群間の差はt-test, Brunner-Munzel test、 相関についてはPearson’s correlation test, 増減の傾向における検出についてはJonckheere-Terpstra testが用いられた。

図1

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(発表者の許可を得て掲載)

結果

本試験には、化学療法が施行されていない(Chemonaive)患者169例が登録され、治療前の検体が採取された(ベバシズマブを含む化学療法103例、抗EGFR抗体を含む化学療法66例)。また、解析時点でこれらの一次治療終了後に、ベバシズマブが使用された患者37例(PD後26例、non-PD後11例)、抗EGFR抗体が使用された患者22例(PD後10例、non-PD後12例)で検体が採取された。
一次治療後に登録された患者は148例で、一次治療でベバシズマブが使用された患者は114例、抗EGFR抗体が使用された患者は34例であった。
結果、Chemonaiveの血漿検体は169例(表1のA群)、ベバシズマブ治療後の血漿検体は合計151例(表1のB群)、抗EGFR抗体治療の血漿検体は合計56例(表1のC群)であった。

表1

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(発表者の許可を得て掲載)

A群ならびにB群においてVEGF-D値とPIGF値の相関が検定されたが、相関は認めなかった。一方で、A群とB群でVEGF-D値ならびにPlGF値が比較され、VEGF-D値とPlGF値と共にB群で有意に上昇していることが示された(p値=6.73e-05, <0.001)(図2)。

図2

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(発表者の許可を得て掲載)

また、A群とC群においても同様にVEGF-D値ならびにPlGF値が比較され、VEGF-D値はC群で有意に上昇していることが示された(p値=3.2e-03)。ただし、PlGF値はC群で中央値が高かったものの(7.21 vs. 9.11 pg/ml) 、両群で差を認めなかった(p値=0.08) (図3)。

図3

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(発表者の許可を得て掲載)

さらに、一次治療にベバシズマブを使用された患者において、治療前後に血漿検体が得られている37例(PD26例、non-PD11例)でのVEGF-D値、PlGF値が検討された。PD患者では有意に治療後のVEGF-D値、PlGF値の上昇を認めた(p値=0.03, 9.1e-05)。non-PD患者では有意に治療後のPlGF値の上昇を認めた(p値=0.01)(図4)。

図4

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(発表者の許可を得て掲載)

また、一次治療に抗EGFR抗体を使用された患者においても同様に、治療前後に採血が施行された22例(PD10例、non-PD12例)でのVEGF-D値、PlGF値が検討された。PD、non-PD患者での治療前後のVEGF-D値、PlGF値に差を認めなかった(図5)。

図5

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(発表者の許可を得て掲載)

結語

VEGF-DとPlGFはベバシズマブや抗EGFR抗体の治療によって個々に誘導されることを示した。治療前にVEGF-DとPlGFを測定することは、より良い血管新生阻害薬の選択に役立つ可能性を示唆した。

コメント
今回の解析で、ベバシズマブの治療前後の血漿検体において、VEGF-DとPlGFが有意に上昇を示した。これは同一患者においてベバシズマブ治療前後に測定された検体、特にベバシズマブを含む化学療法に対してPDとなった患者で同様の傾向が見られ、VEGF-DやPlGFの上昇がベバシズマブの治療抵抗性に関与していることが示唆された。今年のASCO-GIにおいて、一次治療のベバシズマブを含んだオキサリプラチンベースの化学療法に不応不耐となった切除不能進行再発大腸がん患者を対象としたFOLFIRI+パニツムマブ vs. FOLFIRI+ベバシズマブの比較試験(WJOG6210G試験)における探索的な解析がなされ、治療前のVEGF-D値が高い群では低い群と比べて無増悪生存期間や全生存期間が短いことが報告された3)。また、RAISE試験やVELOUR試験結果からVEGF-D、PlGFが高値の患者ではPlaceboと比較して、ラムシルマブやアフリベルセプトの効果が高いことが報告されている1, 4)。これらの報告から、一次治療のベバシズマブに不応となった後でVEGF-Dや PlGFが高い患者に対しては、二次治療における血管新生阻害薬の選択はベバシズマブよりもラムシルマブやアフリベルセプトの方が好ましいかもしれない。
一方で、抗EGFR抗体の治療前後の血漿検体において、VEGF-Dが有意に上昇を示したが、同一患者の抗EGFR抗体治療前後で実施された血漿では、有意差は見られなかった。後者は20例程度(PD例は10例)の解析結果であり、抗EGFR抗体治療によるVEGF-DとPlGFへの影響については、さらなる検討が必要と考えられる。ILとEGFRの関連性を指摘した報告もあり4)、免疫関連因子と抗EGFR抗体治療の耐性との関連性にも注目したい。
本試験によって、改めてベバシズマブの耐性機序において血管新生因子の上昇が関与していることが示唆された。最適な血管新生阻害薬を選択するためには、治療前の血管新生因子の測定が重要である可能性を再認識した。ただし、各々の血管新生因子と血管新生阻害薬の治療効果との関連性や最適な治療効果を得るための血管新生因子の最適なカットオフ値など十分には分かっておらず、本試験でのさらなる解析が期待される。
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長 兼 消化器内科 医長 山﨑 健太郎
References
1) Tabernero J, et al. Analysis of angiogenesis biomarkers for ramucirumab efficacy in patients with metastatic colorectal cancer form RAISE, a global, randomized, double-blind, phase III study. Ann Oncol. 2018; 29: 602-9.
2) Relf M et al. Expression of the angiogenic factors vascular endothelial cell growth factor, acidic and basic fibroblast growth factor, tumor growth factor beta-1, platelet-derived endothelial cell growth factor, placenta growth factor, and pleiotrophin in human primary breast cancer and its relation to angiogenesis. Cancer Res. 1997; 57: 963-9.
3) Izawa N, et al. Vascular endothelial growth factor (VEGF)-D and clinical outcomes in metastatic colorectal cancer (mCRC) patients (pts) treated with 2nd-line FOLFIRI plus bevacizumab (Bev): a biomarker study of the WJOG 6210G trial J Clin Oncol. 2020; abstract226.
4) Van Cutsem E et al. Impact of Prior Bevacizumab Treatment on VEGF-A and PlGF Levels and Outcome Following Second-Line Aflibercept Treatment: Biomarker Post Hoc Analysis of the VELOUR Trial. Clin Cancer Res. 2019; 14, doi: 10.1158/1078-0432.
5) Gelfo V, et al. A module of inflammatory cytokines defines resistance of colorectal cancer to EGFR inhibitors. Oncotarget. 2016; 7: 72167-83.
執筆:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学 医師 伊澤 直樹 先生

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