ASCO-GI 2020 FLASH REPORT - Abstract 281 -

A randomized controlled phase III multicenter study on dose escalation in definitive chemoradiation for patients with locally advanced esophageal cancer: ARTDECO study.

Maarten C.C.M. Hulshof, et al.

背景

 頭頸部癌、肺癌、子宮頸癌、前立腺癌や膀胱癌に対する根治的化学放射線療法の照射線量は64~80Gyであり局所領域制御割合は70~85%である。一方で食道癌に対する根治的化学放射療法の照射線量は50.4Gyが標準であり局所領域制御割合は50%にとどまる。また、再発例のうち86%は原発巣での再発である。
 食道癌に対する根治的化学放射線療法において標準照射線量50.4Gyから64.8Gyへ線量増加による局所領域制御向上を期待しINT 0123試験が行われた。しかし64.8Gyは50.4Gyに対する優越性を示すことが出来なかった1)。ただしINT0123試験当時の照射方法は2~4門照射であり、64.8Gy群では標準照射線量50.4Gy照射後にboostとして原発巣に14.4Gy追加照射された。そのため治療期間は標準照射線量50.4Gyで5.5週間であったのに対し64.8Gyでは7週間必要であった。強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)や回転型強度変調放射線治療 (Volumetric Modulated Arc Therapy: VMAT)の普及により、治療期間を延長させることなく原発巣への照射線量を増量することが可能となったため、新たなDose escalation試験としてARTDECO試験が行われた。

対象と方法

医学的な理由もしくは患者希望により食道癌が行われないclinical stage T2-4, N0-3, M0の食道癌患者が対象となり、標準治療群(Standard arm)と試験治療群(Boost arm)に1:1でランダム割付された。割付調整因子は病理組織型が用いられた(図1)。

Standard armでは従来通り局所(原発巣)および所属領域(領域リンパ節)に50.4Gy(1.8Gy/日)照射され、Boost armでは局所に61.6Gy(2.2Gy/日)、所属領域に50.4Gy(1.8Gy/日)照射された。
併用化学療法としては毎週カルボプラチン(2×AUC)およびパクリタキセル(50mg/m2)が6回投与された。
主要評価項目は、原発巣における無増悪生存期間を評価する局所無増悪生存期間(local progression free survival:LPFS)と設定された。50%から65%への向上を期待し両側α=0.05、検出力を80%とすると260例の登録が必要と計算された。
副次評価項目は、原発巣および所属リンパ節での無増悪生存期間を評価する局所領域無増悪生存期間(locoregional progression free survival:LRPFS)、全生存割合、治療毒性と設定された。

図1. 試験デザイン

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(発表者の許可を得て掲載)

結果

2012年9月に試験を開始してから5年半後の2018年6月に終了となり、Standard armに130例、Boost armに130例それぞれ割り当てられた(表1)。
フォローアップ期間中央値は48ヶ月であった。
病理組織型としては扁平上皮癌がStandard armで61%、Boost armで63%含まれていた。並存疾患により切除不適と判断された症例がstandard armで28%、boost armで31%含まれていた。

表1. 患者背景

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(発表者の許可を得て掲載)

治療コンプライアンスとして、併用化学療法を少なくとも5コース投与された割合はStandard armで91%、Boost armで84%であり、放射線治療完遂割合はStandard armで96%、Boot armで92%であった。

主要評価項目である局所無増悪生存期間を図2に示す。3年局所無増悪生存割合はStandard armで71%、Boost armで73%であった。Boost armのStandard armに対する優越性を示すことはできなかった。

図2. 局所無増悪生存期間(主要評価項目)

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(発表者の許可を得て掲載)

病理組織型で分類すると、3年局所無増悪生存割合は扁平上皮癌で77%、腺癌で62%であった(図3)。病理組織型ごとに治療アームの違いを検討しても、扁平上皮癌および腺癌ともに治療アームによる有意差は認められなかった(図4)。

図3. 病理組織型別の局所無増悪生存期間

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(発表者の許可を得て掲載)

図4.病理組織型別および治療アーム別の局所無増悪生存期間

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(発表者の許可を得て掲載)

3年生存割合はStandard armで41%、Boost armで40%であった(図5)。

図5.全生存期間

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(発表者の許可を得て掲載)

全治療毒性はStandard arm群でGrade 4が10.8%、Grade 5が5.0%であったのに対しBoost arm群でGrade 4が13.6%、Grade 5が8.5%認められ、毒性が増加していた(表2)。

表2. 全治療毒性

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(発表者の許可を得て掲載)

結語

食道癌に対する根治的化学放射線療法では、原発巣に対し50.4Gyから61.6Gyへ線量を増量させても局所制御を改善することができなかった。食道癌に対する根治的化学放射線療法における標準照射量は50.4Gyである。

コメント
 強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy:IMRT)や回転型強度変調放射線治療 (Volumetric Modulated Arc Therapy:VMAT)などの新しい照射法もふまえ、食道癌に対する照射線量を50.4Gyから61.6Gyへ増量することの優越性を検討する目的で本試験は行われた。結果として線量増加の優越性は示されていない。生存曲線のカーブを見る限り、線量増加群にむしろdetrimentalなeffectも疑われる結果である。有害事象は線量増加群で増加する傾向にある。また、薬物療法が5コース入った率は線量増加群で低下しており、各薬剤のDIも低下していると予想される。
 食道癌では、局所照射増強による予後への効果は限定的であり、OSには全身治療である薬物療法が重要なのであろう。
監修:九州大学大学院 消化器・総合外科 第二外科 診療准教授 沖 英次
References
1) Minsky BD, et al. J Clin Oncol. 2002 ; 20 :1167-74.
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 古田 光寛 先生

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