ASCO-GI 2020 FLASH REPORT - Abstract 383 -

A phase III study of nivolumab (Nivo) in previously treated advanced gastric or gastric esophageal junction (G/GEJ) cancer (ATTRACTION-2): Three-year update data.

Li-Tzong Chen, et al.

背景

 全世界における切除不能進行再発胃/食道胃接合部癌の罹患率は癌腫の中で5番目であり、東アジアではさらに罹患率が高い。本邦と韓国、台湾で行われたアジア共同第3相比較試験であるATTRACTION-2試験では、同対象の三次治療以降においてPlaceboと抗PD-1抗体薬であるニボルマブが比較され、ニボルマブ群が主要評価項目である全生存期間を有意に延長した(Kang YK, et al. Lancet 2017; 390:2461-71)。この結果をもって、現在本邦、韓国、台湾、シンガポール、スイスで切除不能進行再発胃/食道胃接合部癌に対する三次治療としてニボルマブが保険償還され、日本、韓国のガイドラインでは三次治療以降の標準治療として記載されている。
 本学会においてATTRACTION-2試験の3年update解析結果が報告された。

対象と方法

 本試験では、切除不能進行再発胃/食道胃接合部腺癌で、2レジメン以上の治療が行われた、ECOG PS(performance status) 0-1症例が対象とされた。症例はニボルマブ(3mg/kgを 2週毎に点滴静注)もしくはPlacebo(2週毎に点滴静注)に2:1で無作為割付けされた。層別化因子は、地域、ECOG PS、転移臓器個数(2未満か2以上)であった(図1)。

図1.試験デザイン

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(発表者の許可を得て掲載)

 本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)、副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)、最良総合効果(best overall response; BOR)、奏効割合(ORR)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、病勢制御割合(DCR)、安全性とされた(図1)。

 本発表ではpost hoc解析として、BOR別のOS、特定の免疫関連有害事象と予後とのサブグループ解析、2ヶ月以上治療ができた患者と特定の免疫関連有害事象とのサブグループ解析、PR以上が得られた患者のニボルマブ投与期間と特定の免疫関連有害事象との関連性が解析された。

結果

 本試験には493例が登録され、ニボルマブ群330例、Placebo群163例、両群の患者背景に大きな隔たりはなかった。本解析のデータカットオフは2019年2月17日であった。

表1.患者背景

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(発表者の許可を得て掲載)

 OS中央値はニボルマブ群で5.26ヶ月、Placebo群で4.14ヶ月 (HR:0.62、95%CI:0.50-0.75、p<0.0001)、3年OS割合は各々5.6%、1.9%とニボルマブ群で良好だった(図2)。3年以上生存した症例はニボルマブ群で15例、Placebo群で3例であり、Placebo群の3例のうち2例は後治療でニボルマブが投与されていた。

図2.OS/3年update解析

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(発表者の許可を得て掲載)

 PFS中央値はニボルマブ群1.61ヶ月、Placebo群1.45ヶ月 (HR:0.60、95%CI: 0.49-0.75、 p<0.0001)、3年PFS割合は各々2.4%、0%とニボルマブ群で良好であった。

図3.PFS/3年update解析

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(発表者の許可を得て掲載)

最良総合効果別の解析

 ニボルマブ群でPR以上が得られた患者のOS中央値は26.68ヶ月であった。Placebo群ではPR以上が得られた症例は認められなかった(図4A)。SDが得られた症例では、ニボルマブ群、Placebo群各々のOS中央値は8.87ヶ月、7.62ヶ月(HR:0.75、95%CI:0.50-1.15)とニボルマブ群で良好な傾向であった (図4B)。

図4.最良総合効果別のOS(ITT population)

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(発表者の許可を得て掲載)

安全性

 ニボルマブに関連性があると考えられる内分泌異常、消化器毒性、肝障害、注入反応、肺障害、腎障害、皮膚毒性の有害事象7項目を『特定の治療関連有害事象』と規定した。これら特定の治療関連有害事象の発現時期は、図5に挙げた通りである。
ニボルマブ群において、特定の治療関連有害事象を発現した患者(183例:55.5%)のOS中央値は7.95ヶ月、有害事象を発現しなかった患者(147例:44.5%)のOS中央値は3.81ヶ月であり、有害事象を発現した患者群で予後が良好な傾向であった (HR:0.49、95%CI:0.39-0.62)(図6)。

図5.特定の治療関連有害事象発現時期(ニボルマブ群)

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(発表者の許可を得て掲載)

図6.特定の治療関連有害事象発現とOS

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(発表者の許可を得て掲載)

 2ヶ月以上ニボルマブ治療を継続できた患者162例では、特定の治療関連有害事象が出現した115例のOS中央値が10.25ヶ月であり、有害事象が発現しなかった47例のOS中央値9.33ヶ月より予後が延長した(HR:0.58、95%CI:0.40-0.85) (図7)。

図7.2ヶ月以上ニボルマブを継続できた患者のOS(特定の治療関連有害事象の発現別)

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(発表者の許可を得て掲載)

 ニボルマブにてPR以上が得られた患者32例中21例で特定の治療関連有害事象が発現していた。21例中9例ではCR/PRが確定する前にこれらの有害事象が発現していた(図8)。

図8.ニボルマブ治療期間と特定の治療関連有害事象の発現時期(PR以上の患者)

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結語

 3年update解析においても、ニボルマブはPlaceboと比較してOSを有意に延長した。PR以上が得られた症例ではニボルマブによる恩恵が最も得られており、SD症例でもニボルマブ群でOSが良好な傾向にあった。
 安全性に関しては新たな情報を認めなかった。ニボルマブの特定の治療関連有害事象を発現した患者群でよりOSが良好であったが、これらの有害事象は決して奏効に先だって発現したわけではなかった。ニボルマブ療法を受ける症例では治療中、治療後に関わらず、これら特定の治療関連有害事象に注意を払う必要がある。

コメント
本発表はATTRACTION-2試験の3年update 解析であり、主要評価項目、副次的評価項目ともに主解析と一貫しニボルマブ投与群で良好な結果が得られた。しかし主解析では20%程度の長期生存例が期待されていたが、今回のフォローアップ解析では3年生存割合が5.6%であり、胃癌では他癌腫と異なりニボルマブ単独投与による長期生存症例がなかなか得られないのかも知れない。
 これまで、免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果は免疫関連有害事象が発現した症例で高いことが報告されていたが、今回の解析結果は既報の仮説を裏付けるものの一つとなった。また免疫チェックポイント阻害薬は後治療の効果を高めるといった報告もあり、本検討で最良総合効果がPDであった症例でもニボルマブはプラセボと比較し全生存期間のHRが0.83 (95%CI:0.62-1.12)と良好な傾向にあったことは非常に興味深い。ただし、ニボルマブ群で最良総合効果がPDと判定された症例の中には、免疫チェックポイント阻害薬特有のpseudo progression例が含まれている可能性もあり、本解析結果を持って免疫チェックポイント阻害薬が後治療の効果を高めると結論づけることはできないことには注意が必要である。

 いずれにせよ、長期フォローアップデータにおいても一貫してニボルマブの有効性が示されたことから、現状通り同薬剤は切除不能進行再発胃/食道胃接合部癌に対するkey drugの一つであることには変わりない。今後、切除不能進行再発胃/食道胃接合部癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性を最大化するために、最適な治療対象、最適な治療ライン、多剤との併用や逐次治療といった最適な使用方法の探索が必要と考える。
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長 兼 消化器内科 医長 山﨑 健太郎
執筆:香川大学医学部附属病院 腫瘍内科 助教 大北 仁裕 先生

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