ASCO-GI 2020 FLASH REPORT - Abstract 5 -

Utility of circulating tumor DNA (ctDNA) versus tumor tissue clinical sequencing for enrolling patients (Pts) with advanced gastrointestinal (GI) cancer to matched clinical trials: SCRUM-Japan GI-SCREEN and GOZILA Combined Analysis.

Yoshiaki Nakamura et al.

背景

 「SCRUM-Japan GI-SCREEN(以下GI-SCREEN)」は、国立がん研究センター東病院が中心となり行った進行消化器癌患者の産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業である。進行消化器癌患者の遺伝子異常を解析し、各患者の遺伝子異常に対応した治療を提供することを目的に医療機関、検査機関、製薬会社などが協力して実施された。特定の遺伝子異常が見つかった患者では、新しい治療薬の臨床試験に参加できる可能性がある。

リキッドバイオプシーは、血液などの体液サンプルを使って診断や治療効果予測を行う技術である。従来の腫瘍組織の生検は侵襲が大きいため、複数箇所や繰り返しの生検は患者リスクが大きく、治療決定の遅れにも繋がる。しかしリキッドバイオプシーでは、血中を循環する腫瘍DNAの断片などを用いるため、低侵襲かつ迅速に解析することが可能であり、腫瘍組織生検の課題を克服できる可能性がある。

GI-SCREENでは腫瘍組織を用いて遺伝子異常を調べていた。GOZILA試験はGI-SCREEN研究の一環として、当初は「進行消化器癌」を対象にリキッドバイオプシー(next generation sequencing[NGS]ベースのctDNAアッセイ)での遺伝子解析を目的としていたが、GI-SCREENが進行消化器癌を含めた進行固形癌を対象とした「MONSTER-SCREEN」にとって変わることとなったため、途中から対象を「進行固形癌」に改め、試験が継続された。
 本報告は、GI-SCREENとGOZILAにおける進行消化器癌患者の遺伝子解析結果を比較検討したものである。

両試験の概要:

GI-SCREEN GOZILA
対象 進行消化器癌 進行固形癌(進行消化器癌を含む)
検体 腫瘍組織(生検組織または手術検体) 血液(血漿)
アッセイ Oncomine Comprehensive Assay Guardant360 (ct DNA Assay)
対象となるがん関連遺伝子異常数 V1: 143-gene
V3: 161-gene
74-gene
Central Lab Life Technologies Clinical Services Laboratory Guardant Health
開始時期 2015年2月 2018年2月

試験概要

 GI-SCREENとGOZILAの結果を用い、進行消化器癌患者の臨床試験への組み入れにおける、血漿または腫瘍組織を用いた遺伝子検査の有用性を比較検討した。

結果

2019年4月までに登録された進行消化器癌患者を対象とした。
GI-SCREENでは5,743例が登録され、そのうち5,621例で遺伝子解析が行われた。
GOZILAでは1,103例が登録され、そのうちの1,089例で遺伝子解析が行われた。

表1のような患者背景であり、一部の患者はRTK/RAS/RAFなどを対象とした臨床試験に組み入れられた。

表1. 患者背景

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(発表者の許可を得て掲載)

 遺伝子変異の検出率は、GI-SCREENで89.4%、GOZILAで91.1%であった。両試験間での遺伝子変異検出率に差は認められなかった(p=0.10, Fisherの正確検定)。

登録からサンプル受付までの期間は、GI-SCREENで14日、GOZILAで4日であった(それぞれ中央値)。
サンプル受付から解析までの所要期間はGI-SCREENで21日、GOZILAで8日、登録から解析までの所要期間中央値もGI-SCREENで35日、GOZILAで12日と、有意にGOZILAで短かった(p<0.0001, Mann-Whitney検定)(図1)。

図1. 登録、サンプル受付、解析までの時間の比較

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(発表者の許可を得て掲載)

 OncoKB Level of Evidence1)のLevel 3B以上のEvidenceを有する遺伝子変異は、GI-SCREENで54.3%、GOZILAで58.0%であり、両試験間に差は認められなかった。

【臨床試験への組み入れ】

・臨床試験への組み入れ患者数
遺伝子解析の結果、臨床試験に組み入れ可能と思われる遺伝子変異を有していた患者は、GI-SCREENで3,055例で、そのうちの126例(4.1%)が臨床試験に組み入れられた。GOZILAでは同様に632例中60例(9.5%)が臨床試験に組み入れられ、有意にGOZILAで多かった(p<0.0001, Fisherの正確検定)。
1ヶ月あたりの臨床試験への組み入れ患者数も、GOZILAが始まった2018年2月までは1.1人であったのに対し、GOZILA開始後は6.7人と飛躍的に増加した(図2)。

図2

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(発表者の許可を得て掲載)

・臨床試験組み入れまでの期間
GI-SCREEN、GOZILA登録から臨床試験に組み入れされるまでの期間中央値は、各々5.9ヶ月、1.0ヶ月とGOZILAで明らかに短縮していた(p<0.0001, Mann-Whitney検定)。
検体採取から臨床試験組み入れまでの期間についても、GOZILAで短縮していた(中央値20.1ヶ月 vs 1.1ヶ月:p<0.0001, Mann-Whitney検定)。

遺伝子変異に応じた臨床試験に組み入れられた患者背景を表2に示す。
三次治療以降の臨床試験に組み入れられた患者はGOZILAの方で多かった。

表2. 臨床試験に組み入れられた患者の背景

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(発表者の許可を得て掲載)

・組み入れられた臨床試験での奏効割合
遺伝子解析結果に準じて組み入れられた臨床試験における奏効割合は、GI-SCREENで16.7%(126例中21例)、GOZILAでは20.0%(60例中12例)で、両群間に差は認められなかった(p=0.69, Fisherの正確検定)。
無増悪生存期間(PFS)中央値はGI-SCREENで2.8ヶ月(95%CI:2.2-3.3)、GOZILAで2.4ヶ月(95%CI:1.3-3.3)であり、こちらも両群間に差は認められなかった(HR 1.07 [95%CI:0.77-1.47]; p=0.70, Log-rank検定)(図3)。

図3. 臨床試験に組み入れられた患者の治療成績

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(発表者の許可を得て掲載)

・重複症例を除いた解析
 GI-SCREENとGOZILAの両方に登録されていた症例(重複症例)が26例存在した
その患者を除いて解析を行うと、奏効割合はGI-SCREEN 16.0%(100例中16例)、GOZILA 20.6%(34例中7例)となったが、上記同様、両試験での差は認められなかった(p=0.60, Fisherの正確検定)。
同様に、PFS中央値はGI-SCREEN 2.8ヶ月(95%CI:2.4-3.2)、GOZILA 2.6ヶ月(95%CI:1.5-3.6)と、こちらも両試験間での差は認められなかった(HR 0.98 [95%CI:0.64-1.49];p=0.91, Log-rank検定)(図4)。

図4. 重複症例を除いた解析

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(発表者の許可を得て掲載)

結語

 リキッドバイオプシーによる遺伝子解析は、腫瘍組織を用いた解析と比較すると、登録から遺伝子解析までの期間を短縮し、また、遺伝子変異に応じた臨床試験への組み入れまでの期間も短縮していた。リキッドバイオプシーによる遺伝子解析は治療効果を弱めることなく、遺伝子変異に応じた臨床試験への組み入れを増加させ、臨床試験への組み入れまでの期間を5倍以上速めることが明らかとなった。

コメント
 本演題は本邦で実施されている世界最大規模のゲノムスクリーニング事業であるSCRUM-JAPANの成果の一部を用い、組織または血液を用いた包括的ゲノムプロファイリング検査(CGP検査)の有用性を検討した報告である。その有用性を検討するため、CGP検査の目的である遺伝子異常に応じた臨床試験への組み入れまでの期間、臨床試験組み入れ割合・有効性などが比較された。
 本検討の結果から、組み入れ可能な臨床試験の数ではGI-SCREEN試験の方が明らかに多かったにもかかわらず、GOZILA試験が始まって以降明らかに臨床試験への組み入れのスピードが上がり、その割合も増加した。この結果はリキッドバイオプシーにより遺伝子解析までの期間を短縮できたことで、PSなど全身状態を維持しつつ適切な試験に適時登録できたことによるものが大きいが、発表では報告されていないがリキッドバイオプシーによる遺伝子解析結果を元にした臨床試験が増えてきたことも一因であると考える。
 本検討の結果、治療に結びつく可能性のある遺伝子異常の検出率は両検査で同程度であるにもかかわらず、侵襲が少なく、登録から遺伝子解析までの期間が短く、臨床試験への組み入れの可能性が高まったことは、リキッドバイオプシーの明らかな利点であり、近い将来、CGP検査のみならず腫瘍のスクリーニング、モニタリングにおける主要な検査になり得る技術と考える。
 本検討の結果を解釈するにあたっては、対象が「進行消化器癌」であることに留意する必要があり、今後、本結果が 「進行消化器癌の個別の癌腫(胃癌、大腸癌、膵癌 etc)」でも同様なのかどうかや、「他の進行固形癌(肺癌、乳癌 etc)」にも外挿可能なのかどうか、さらには「腫瘍・患者背景(腫瘍量、転移臓器、治療歴の有無など)」に関わらず同様なのか、といった検討が必要である。
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長 兼 消化器内科 医長 山﨑 健太郎
References
1) Chakravarty D, et al. OncoKB: A Precision Oncology Knowledge Base. JCO Precis Oncol. 2017 Epub
執筆:香川大学医学部附属病院 腫瘍内科 助教 大北 仁裕 先生

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