POLO: Health-related quality of life (HRQoL) of olaparib maintenance treatment versus placebo in patients with a germline BRCA mutation and metastatic pancreatic cancer
POLO: Health-related quality of life (HRQoL) of olaparib maintenance treatment versus placebo in patients with a germline BRCA mutation and metastatic pancreatic cancer
背景
ポリADPリボ-スポリメラーゼ(以下PARP)はDNA一本鎖切断を認識し、DNA損傷を修復する機構において重要な役割を持つ。また、Breast cancer susceptibility gene (以下、BRCA遺伝子)がコードするタンパクであるBRCAは、DNA二本鎖切断を認識し、DNA相同組み換え修復を行う機構において重要な働きを持つ。通常では、PARPが何らかの理由で働かなくても、BRCAの働きにより細胞は生存することができるが、BRCA遺伝子変異を有する細胞ではPARPが働かなくなると、DNA損傷を修復する機能がないため、細胞死をきたす。このため、BRCA遺伝子変異を有する卵巣がん、乳がんにおいてPARP阻害剤であるオラパリブが有効性を示し、すでに本邦でも使用されている1) 2) 3)。
POLO試験は、生殖系列のBRCA遺伝子変異陽性の進行膵癌に対する、プラチナ含有レジメン後の維持化学療法として、オラパリブ単剤とプラセボを比較したランダム化第III相試験である。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、プラセボ群に対するオラパリブ群のハザード比が0.53(95%信頼区間:0.35-0.82、p=0.004)と有意に優れ、進行膵癌においても生殖系列BRCA遺伝子変異陽性患者に対するPAPR阻害剤の有効性が示された4)。
しかし、維持化学療法はPFSの延長だけでなく、全生存期間の延長およびQoLの維持も重要な目的であり、POLO試験においてQoLは副次評価項目に設定されていた。今回はそのQoL評価の報告がなされた。
対象と方法
本試験の対象は、生殖系列BRCA1/2遺伝子を有する、プラチナ含有レジメンによる一次化学療法により16週間以上の病勢コントロールが得られている、遠隔転移を有する膵癌患者とされた。層別化因子はなく、オラパリブ群(300mg/Body、1日2回)とプラセボ群に3対2の割合で割り付けられた。維持化学療法はプラチナ含有レジメンの終了後4週から8週の間に開始され、増悪を認めるまで継続した。QoLの調査は治療開始時と開始後4週毎にEORTC QLQ-C30質問票により行った。Global HRQoLと身体機能スコアは10点以上の変動を臨床的に有意な改善(もしくは悪化)と定義した。ベースラインからの平均変化は線形混合効果モデル(Mixed model for repeated measures: MMRM)により評価し、有意なQoLの低下までの期間はログランク検定により評価した。
結果
オラパリブ群の92例中89例(96.6%)、プラセボ群の62例中58例(94.8%)においてベースラインのQoL調査がなされた。オラパリブ群およびプラセボ群において、ベースライン時のGlobal HRQoLと身体機能スコアはそれぞれ、70.4および74.3点、83.3および84.9点であり、両群間に差を認めなかった(表1)。