対象副作用 | 年, 月; 号: p-p. | 研究方法 (相) | 対象患者 | 対象薬剤 |
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末梢神経障害炎 | 2015 Aug; 20(4): 767-75. | 第3相試験 | 大腸癌 | 牛車腎気丸 |
背景
日本の伝統的な漢方薬である牛車腎気丸は、10種類の生薬で構成され、糖尿病性ニューロパチーに伴うしびれ、冷感、手足の痛みなどの症状を改善する目的で使用されている。これまでに、牛車腎気丸がパクリタキセルおよびOXによって誘発される末梢神経障害に対して有用であると報告されている。今回、OX誘発性の末梢神経障害に対する牛車腎気丸の予防効果を検証するために、術後補助療法を実施するステージ3の大腸癌患者を対象として、牛車腎気丸の二重盲検プラセボ対照多施設無作為化第3相試験が計画された。
シェーマ
統計学的事項
評価項目:
グレード2以上の末梢神経障害の発症までの時間(time to neuropathy: TTN)
National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events (NCI CTCAE; version 3.0); the Neurotoxicity Criteria of Debiopharm (DEB-NTC)を用いて評価
副次評価項目:
OXの相対用量強度、有害事象発生割合
統計解析:
TTNは、Kaplan–Meier生存曲線とLog-rank検定による群間比較が行われた。過去の研究結果より、本研究では化学療法12コース終了時点の末梢神経障害の累積発生率をプラセボ群では40%、牛車腎気丸群では25%と仮定した。Log-rank検定において検出率80 %で15 %の差を検出するには、1群あたり95例で、6か月間のフォローアップ中にこれを達成するためのサンプルサイズは291例であった。半数の患者データ(150例)に基づいて事前に中間解析が計画された。中間解析の目的は牛車腎気丸群がプラセボ群と比較して優位性が示されれば症例登録を打ち切ることであった。統計解析はSAS ver9.2(SAS Institute)を使用して実施された。
試験結果
事前に計画された中間解析において、効果安全性評価委員会より試験中止が勧告された。
評価項目:
末梢神経障害(グレード2以上)の発症率は、牛車腎気丸群で50.6 %であり、プラセボ群の31.2 %に比し高かった。グレード2以上の末梢神経障害の発症までの時間(TTN)は、牛車腎気丸群の方が有意に短かった(P=0.007, HR=1.908 [1.181-3.083])。
グレード1の末梢神経障害は、牛車腎気丸群は43.8 %、プラセボ群62.4 %であった。
副次評価項目:
<OXの相対用量強度>
牛車腎気丸群83.41%、プラセボ群78.99%と、牛車腎気丸群で有意に高かった(p=0.033)。
用量強度は、牛車腎気丸群70.9 mg/m2/course、プラセボ群67.1 mg/m2/courseであった。
平均治療サイクル数は、牛車腎気丸群9.0サイクル、プラセボ群8.3サイクルであった。
5年後に全生存期間や無再発生存期間を調査する予定となっている。
<有害事象発生割合>
神経毒性以外の有害事象に両群間に差は認められなかった。
治療中止率についての記載はなかった。
結語
論文の解釈
監修:国立がん研究センター東病院 データサイエンス部 野村 久祥 先生