がん関連倦怠感 総説

A Practical Approach to Fatigue Management in Colorectal Cancer

結腸・直腸がん患者における倦怠感への実践的アプローチ

Clin Colorectal Cancer
Matti Aapro, et al.
対象副作用 年, 月; 号: p-p. 研究方法 (相) 対象患者 対象薬剤
がん関連倦怠感 2017 Dec;16(4):275-285. doi: 10.1016   結腸・直腸がん患者  

背景

がん関連疲労はがん患者が経験する最も深刻で複雑な症状うちの一つであり、QOLやADLの低下を招く可能性がある。しかし、がん関連倦怠感に対する認識は薄く、多くの医療従事者が過少評価してしまう。
NCCN(National Comprehensive Cancer Network)やEAPC(European Association for Palliative Care)はがん患者における倦怠感管理へのアプローチについて提案しているが、RCTによって倦怠感を軽減することが実証されている治療薬は少ない。
今回は結腸・直腸がん患者におけるがん関連倦怠感(CRF:Cancer-related Fatigue)について、要因や薬剤に関する報告、非薬物療法などに関する総説をまとめ、対処方法について検討を行った。

定義

NCCN:最近の活動に合致しない、日常生活の妨げとなるほどの癌または癌治療に関連した、辛く持続する主観的な感覚で、身体的、感情的かつ/または認知的倦怠感または消耗感
EAPC:疲労感、脱力感、エネルギー不足などの自覚的な感覚

疫学・影響・要因

がんと診断された時点で40%の患者が倦怠感を訴えているが、抗がん剤治療を行っている患者では80%に及ぶという報告がある。
倦怠感は患者の日常生活やQOLに影響を与え、持続する倦怠感を経験する患者は、そうでない患者と比較して死亡リスクが増えるという報告もある。また、社会的な役割や雇用形態の変更も余儀なくされる。
がん関連倦怠感の発症には、図1に示した通り様々な要因が関係している。

図1:がん関連倦怠感の要因

図1:がん関連倦怠感の要因

治療

① 薬物治療

薬物治療に関連する報告を表1にまとめる。有意差の認められた薬剤もあるが、神経刺激剤の使用自体が米国以外では少なく、倦怠感の重症度や投与期間などの条件にも注意が必要である。また、症例数が少ないため、より大規模な試験で再検討が求められる。

表1:薬剤ごとの試験結果

治療薬 用量 デザイン 症例数 評価項目 結果 引用
デキサメタゾン 8mg/日
内服
二重盲検法
ランダム化比較
プラセボ対照試験
84 FACIT-F 効果あり
(P=0.008)
Yennurajalingan 2013
デクスメチルフェニデート 10mg/日 二重盲検法
ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
154 FACIT-F 効果あり
(P=0.02)
Lower 2009
メチルフェニデート 必要に応じて2時間毎に5mg
(20mg/日まで)
ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
141 FACIT-F 差なし Bruera 2013
メチルフェニデート 54mg/日 ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
148 BFI 差なし Moraska 2010
モダフィニル 200mg/日
内服
二重盲検法
ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
867 BFI 重度の倦怠感には有用
(P=0.017)
Jean-Pierre 2010
エタネルセプト 2週に1回25㎎
皮下注射
ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
12 FSI 効果あり
(P<0.001)
Monk 2007
セルトラリン 5mg/日
内服
二重盲検法
ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
189 FACIT-F 差なし Stockler 2007
L-カルニチン 2g/日
内服
二重盲検法
ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
376 BFI 差なし Cruciani 2012
人参 2000mg/日 二重盲検法
ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
364 MFSI-SF 効果あり
(P=0.003)
Barton 2013
コエンザイムQ10 300mg/日 ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
236 POMS-F
FACIT-F
差なし Lesser 2013
インナーパワー
(分枝鎖アミノ酸:2500㎎, コエントランQ10:30㎎, L-カルニチン:50㎎)
1回/日 ランダム化比較試験
対照:定期的なケア
57 BFI総合的倦怠感スコア 一部の患者で効果あり Iwase 2015
ガラナ 100mg/日 ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
75 FACT-F
FACT-ES
BFI
効果あり
(P<0.01)
de Oliveira Campos 2011
テストステロン 150-200㎎/回
筋肉注射
二重盲検法
ランダム化比較試験
プラセボ対照試験
29 FACIT-F 効果あり
(P=0.03)
Del Fabbro 2013
BFI = Brief Fatigue Inventory
FACIT-F = Functional Assessment of Chronic Illness–Fatigue subscale
FACT-ES = Functional Assessment of Chronic Illness Therapy–Endocrine Symptoms
FSI = Fatigue Symptom Inventory
FSS = Fatigue Severity Scale
MFSI-SF = Multidimensional Fatigue Symptom Inventory–Short Form
POMS-F = Profile of Moods States Fatigue subscale

② 運動療法

がん患者における運動療法は、倦怠感の軽減だけでなく、体力の増強やQOLの向上など様々な利点があることが報告されている。一方で、血小板減少や発熱、活動性の感染症、栄養不良などの状態にある患者には適さないことに考慮すべきである。
著者らは、NCCNの管理方法に運動療法を加えたアルゴリズム(図2)を作成した。倦怠感の重症度に応じて要因を特定し可逆的な要因を治療するなどの対応を行った上で、適切な運動を行うことを推奨している。

図2:アルゴリズム

図2:アルゴリズム

結語

倦怠感は一般的な症状であり、結腸・直腸がん患者の予後や健康状態を悪化させる可能性が示唆されている。がん関連倦怠感には複雑な要因があり、治療強度を下げる前に倦怠感に寄与する可能性のある要因に対処することが重要である。最近のエビデンスでは、運動がQOLを向上させ、その結果、抗がん剤治療の継続に寄与する可能性を示している。この総説で提案したアルゴリズムは、臨床医が結腸・直腸がん患者における倦怠感を診療する手がかりになる可能性がある。

※本邦では今回紹介した薬剤は倦怠感に対し未承認・適応外となるため、使用する際には各施設で適切な手順を追ってください。

執筆:草加市立病院 薬剤部 下山 加奈恵 先生
監修:国立がん研究センター東病院 データサイエンス部 野村 久祥 先生

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