胆道癌 BT22

Gemcitabine alone or in combination with cisplatin in patients with biliary tract cancer: a comparative multicenter study in Japan.

Okusaka T, Nakachi K, Fukutomi A, et al. Br J Cancer. 2010 ;103:469-74 [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
胆道癌 一次治療 第2相 1年生存割合 国内 あり

試験名 :BT22

レジメン:ゲムシタビン(GEM)+シスプラチン(CDDP) vs GEM

登録期間:2006年9月〜2008年10月

背景

イギリスでは、GEM+CDDPとGEMを比較するランダム化第2相試験(ABC-01試験)の結果に基づき、ランダム化第3相試験(ABC-02試験)が実施されている。ABC-01試験でのGEM+CDDPの良好な有効性が示されたため、本邦でもGEM+CDDPとGEMを比較するランダム化第2相試験(BT22試験)の実施に至った。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:1年生存割合

本試験は、主要評価項目を1年生存割合とした。1年生存割合をGEM群 25%、GEM+CDDP群 35%と想定し、GEM+CDDPを80%以上の確率で正しく選択できるようにSimonの選択デザインを用いてサンプルサイズを計算すると、片群30例となる。安全性と有効性の評価の精度を最適にするため、片群42例の登録が必要と設定された。

試験結果:

  • 2006年9月から2008年10月の間に、国内9施設より84例が登録され、1:1の割合で42例ずつGEM+CDDP群とGEM群に割り付けられた。GEM+CDDP群の治療を受けなかった1例を除外し、有効性・安全性対象解析はGEM+CDDP群 41例、GEM群 42例を対象とした。
  • 患者背景に大きな隔たりは認められなかったが、乳頭部癌の割合はGEM+CDDP群で高かった。
  • 治療期間中央値は、 GEM+CDDP群 6.0サイクル、GEM群 4.0サイクルであった。
1. 全生存期間・1年生存割合(主要評価項目)
  OS中央値 95%信頼区間 1年生存割合 95%信頼区間 HR 0.69     
(95%C.I. 0.42-1.13)
p=0.139     
GEM+CDDP(n=41) 11.2ヶ月 9.1-12.5 39.0% 23.7-54.4
GEM(n=42) 7.7ヶ月 6.1-11.0 31.0% 17.0-44.9
2. 無増悪生存期間
  PFS中央値 95%信頼区間 6ヶ月無増悪生存割合 95%信頼区間 HR 0.66     
(95%C.I. 0.41-1.05)
p=0.077     
GEM+CDDP(n=41) 5.8ヶ月 4.1-8.2 47.4% 31.4-63.4
GEM(n=42) 3.7ヶ月 2.1-5.3 27.7% 14.0-41.5
3. 奏効割合
  奏効割合 p=0.380
GEM+CDDP(n=41) 19.5%
GEM(n=42) 11.9%
4. 病勢制御割合
  病勢制御割合 p=0.119
GEM+CDDP(n=41) 68.3%
GEM(n=42) 50.0%
5. 有害事象(CTCAE ver.3.0)
  GEM+CDDP(n=41) GEM(n=42)
  全Grade Grade 3以上 全Grade Grade 3以上
白血球減少 87.8% 29.3% 69.0% 19.0%
好中球減少 82.9% 56.1% 69.0% 38.1%
貧血 85.4% 36.6% 85.7% 16.6%
血小板減少 80.5% 39.0% 76.2% 7.2%
食欲不振 80.5% 0% 61.9% 4.8%
嘔気 68.3% 0% 42.9% 0%
疲労 58.5% 0% 50.0% 2.4%
6. 層別化因子ごとの全生存期間
  GEM+CDDP(n=41) GEM(n=42) P-value
  中央値 95%信頼区間 中央値 95%信頼区間  
原発部位          
 胆嚢癌 9.1ヶ月 6.9-11.6 6.7ヶ月 4.2-11.0 0.675
 胆嚢癌以外 13.0ヶ月 9.2- 8.0ヶ月 6.1-16.0 0.110
原発巣切除          
 あり 9.4ヶ月 8.7-11.6 7.4ヶ月 5.9-8.5 0.253
 なし 16.1ヶ月 12.3- 12.7ヶ月 6.5- 0.389
結語
本試験の結果、GEM+CDDPは有効性と忍容性が良好であることが示され、日本人に対しても標準治療となることが示唆された。
執筆:杏林大学 腫瘍内科学 助教 岡野 尚弘 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科 肝胆膵 部長 上野 誠 先生

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