対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
胆道癌 | 二次治療以降 | 第2相 | 奏効割合 | 国際共同 | あり |
試験名 :FIGHT-202
レジメン:Pemigatinib
登録期間:2017年1月17日〜2019年3月22日
背景
Fibroblast growth factor receptor(FGFR)2遺伝子異常は胆道癌における発癌に関与することが知られている。PemigatinibはFGFR1、FGFR2及びFGFR3に対する選択的な阻害薬である。FIGHT-202試験は、化学療法歴のある切除不能な胆道癌患者を対象に、pemigatinibの有効性及び安全性を検討することを目的とした非盲検非対照第2相試験であり、最終解析結果が報告された。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:奏効割合(FGFR2遺伝子融合/再構成コホート, RECIST ver.1.1, 中央判定)
FGFR2遺伝子融合/再構成コホートの目標症例数について、試験計画時には60例と設定されていたものの、治験実施計画書の改訂が行われ、100例に変更された(期待奏効割合33%、閾値奏効割合15%、検出力95%、有意水準5%)。試験結果:
- 登録期間において、1206例を対象に、FoundationOne(F1)を用いたプレスクリーニングが実施され、FGF/FGFR遺伝子異常を有する61例が適格とされた。当該61例に加えて、既に治験実施施設においてFGF/FGFR遺伝子異常を有することが判明している85例が適格とされ、計146例が登録された。
- 登録症例は、F1によるプレスクリーニング又は中央判定に基づき、FGFR2遺伝子融合/再構成コホート(107例)、他のFGF/FGFR遺伝子異常を有するコホート(20例)及びFGF/FGFR遺伝子異常を有しないコホート(18例)にそれぞれ組み入れられた。
- 全体集団及びFGFR2遺伝子融合/再構成コホートの観察期間の中央値は、それぞれ17.8ヶ月及び15.4カ月だった。
- 原発部位は、全体集団(146例)において、肝内胆管130例(89%)、肝外胆管12例(8%)、その他4例(3%)、FGFR2遺伝子融合/再構成コホートにおいて、肝内胆管105例(98%)、肝外胆管1例(1%)、その他1例(1%)だった。
1. 奏効割合(主要評価項目, RECIST ver.1.1, 中央判定)
例数(%) | 95%信頼区間 | |
---|---|---|
FGFR2遺伝子融合/再構成コホート (n=107) | 38例(35.5%)* | 26.5-45.4% |
他のFGF/FGFR遺伝子異常を有するコホート(n=20) | 0 | - |
FGF/FGFR遺伝子異常を有しないコホート(n=18) | 0 | - |
❇:主要評価項目。
- 完全奏効は、FGFR2遺伝子融合/再構成コホートで3例(2.8%)に認められた。
2. 全生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | |
---|---|---|
FGFR2遺伝子融合/再構成コホート (n=107) | 21.1カ月 | 14.8カ月-推定不能 |
他のFGF/FGFR遺伝子異常を有するコホート(n=20) | 6.7カ月 | 2.1-10.6カ月 |
FGF/FGFR遺伝子異常を有しないコホート(n=18) | 4.0カ月 | 2.3-6.5カ月 |
3. 無増悪生存期間(RECIST ver.1.1, 中央判定)
中央値 | 95%信頼区間 | |
---|---|---|
FGFR2遺伝子融合/再構成コホート (n=107) | 6.9カ月 | 6.2-9.6カ月 |
他のFGF/FGFR遺伝子異常を有するコホート(n=20) | 2.1カ月 | 1.2-4.9カ月 |
FGF/FGFR遺伝子異常を有しないコホート(n=18) | 1.7カ月 | 1.3-1.8カ月 |
4. 奏効持続期間(RECIST ver.1.1, 中央判定)
中央値 | 95%信頼区間 | |
---|---|---|
FGFR2遺伝子融合/再構成コホート (n=107) | 7.5カ月 | 5.7-14.5カ月 |
他のFGF/FGFR遺伝子異常を有するコホート(n=20) | - | - |
FGF/FGFR遺伝子異常を有しないコホート(n=18) | - | - |
5. 有害事象(NCI CTCAE ver. 4.03, pemigatinibとの因果関係が否定されなかった事象)
有害事象* | 全体集団 (N=146) | |
---|---|---|
全Grade | Grade 3/4 | |
高リン血症 | 81 (55%) | 0 |
脱毛 | 67 (46%) | 0 |
味覚異常 | 55 (38%) | 0 |
下痢 | 49 (34%) | 4 (3%) |
疲労 | 45 (31%) | 2 (1%) |
口内炎 | 39 (27%) | 8 (5%) |
口内乾燥 | 42 (29%) | 0 |
悪心 | 34 (23%) | 2 (1%) |
食欲不振 | 34 (23%) | 1 (1%) |
ドライアイ | 30 (21%) | 1 (1%) |
皮膚乾燥 | 22 (15%) | 1 (1%) |
関節痛 | 16 (11%) | 6 (4%) |
手足症候群 | 16 (11%) | 6 (4%) |
便秘 | 20 (14%) | 0 |
低リン血症 | 8 (5%) | 10 (7%) |
四肢痛 | 15 (10%) | 0 |
低ナトリウム血症 | 4 (3%) | 3 (2%) |
❇︎:全Gradeで10%以上に認められた事象又はGrade 3以上で2%以上に認められた事象。
結語
FGFR2遺伝子融合/再構成を有する化学療法歴のある切除不能な胆道癌に対して、pemigatinibの有望な治療効果が認められた。なお、他のFGF/FGFR遺伝子異常を有するコホート及びFGF/FGFR遺伝子異常を有しないコホートにおいては、奏効は認められず、治療効果は不良だった。
執筆:神奈川県立がんセンター消化器内科肝胆膵 医長 手塚 瞬 先生
監修:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 科長 池田 公史 先生
監修:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 科長 池田 公史 先生