対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
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進行/再発胆道癌 | 一次治療 | 第3相 | OS | 日本のみ | あり |
試験名 :FUGA‐BT(JCOG1113)
レジメン:ゲムシタビン+S-1 vs ゲムシタビン+シスプラチン
登録期間:2013年5月8日〜2016年3月4日
背景
胆道癌において海外の第3相試験であるABC-02試験1)、さらに本邦における無作為化第2相試験であるBT22試験2)によってゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC療法)はゲムシタビン 単剤を上回る全生存期間が示され、胆道癌の一次治療における標準治療となった。一方で日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)0805試験3)において無作為化第2相試験が行われた。同試験では、ゲムシタビン+S-1併用療法(GS療法)の良好な予後と忍容性のある有害事象プロファイルが示された。GS療法はGC療法で行われるシスプラチン誘発性腎障害の予防目的に投与される2時間以上のハイドレーションが不要であり、有害事象が許容できればGS療法がより汎用性の高い治療になることが考えられた。以上の背景からGC療法に対するGS療法の非劣性を検証する試験が行われた。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
本試験はGC療法群を対照として、全生存期間において、GS療法群の非劣性を検証する非盲検試験として設計された。生存期間中央値は、GC療法群が11.2ヶ月、GS療法群が13.0ヶ月と見積もられた。有意水準は片側5%、検出力80%、ハザード比(HR)の非劣性マージンは1.155と設定され、検出力は 80%、登録期間は4年、観察期間は1年として350例を目標症例数と設定された。試験結果:
- 2013年5月8日から2016年3月4日の間に33施設から354例が登録され、登録終了後1.4年で最終解析が行われた。
- 有効性は全患者を対象としたITT解析を行い、安全性は除外された6例を除く348例にて解析が行われた。
- 患者背景はGC療法群、GS療法群でそれぞれ、年齢中央値(67歳, 67歳)、PS 0(74%、69%)、胆囊癌(39%、39%)、切除歴あり(21%、22%)、遠隔転移(61%、60%)にて両群で差を認めなかった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | HR0.945 (90%信頼区間 0.777-1.149) p=0.046 |
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GC療法群 n=175 | 13.4ヶ月 | 12.4-15.5ヶ月 | |
GS療法群 n=179 | 15.1ヶ月 | 12.2-16.4ヶ月 |
2. 無増悪生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR0.864 (95%信頼区間 0.697-1.070) p=not estimated |
|
GC療法群 n=175 | 5.8ヶ月 | 5.5-7.0ヶ月 | |
GS療法群 n=179 | 6.8ヶ月 | 5.4-8.0ヶ月 |
3. 奏効割合
奏効割合 | |
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GC療法群 n=175 | 29.8% |
GS療法群 n=179 | 32.4% |
4. 有害事象
GC療法群 N=171 | GS療法群 N=177 | |||
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全Grade | Grade 3以上 | 全Grade | Grade 3以上 | |
白血球減少 | 78.9% | 31.6% | 77.4% | 24.9% |
貧血 | 98.2% | 24.0% | 98.3% | 6.2% |
血小板減少 | 82.5% | 16.4% | 77.4% | 7.3% |
好中球減少 | 86.5% | 60.8% | 86.4% | 59.9% |
発熱性好中球減少 | 2.3% | 2.3% | 1.7% | 1.7% |
胆道感 | 19.3% | 19.3% | 20.9% | 20.9% |
食欲低下 | 40.9% | 5.8% | 39.5% | 5.6% |
結語
進行または再発胆道癌において、GC療法群に対するGS療法群の非劣性が示された。GS療法は ハイドレーションを必要としない、標準治療の新たな選択肢と考えられる。
関連論文
1) Valle J, et al. Cisplatin plus gemcitabine versus gemcitabine for biliary tract cancer, N Engl J Med. 362(14): 1273-1281, 2010. [Pubmed]
2) Okusaka T, et al. Gemcitabine alone or in combination with cisplatin in patients with biliary tract cancer: a comparative multicentre study in Japan, Br J Cancer. 103(4): 469-474, 2010. [Pubmed]
3) Morizane C, et al. Randomized phase II study of gemcitabine plus S-1 versus S-1 in advanced biliary tract cancer: a Japan Clinical Oncology Group trial (JCOG 0805), Cancer Sci. 104(9):1211-1216, 2013. [Pubmed]
執筆:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 がん専門修練医 大鶴 徹 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科 肝胆膵 部長 上野 誠 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科 肝胆膵 部長 上野 誠 先生