対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
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早期乳癌 cT1-T2 触知リンパ節なし (cN0) 乳房部分切除術・SLNBが予定されている SLNBを行い1-2個に転移あり |
手術時 | 第3相 | 全生存率 | オーストラリア カナダ アイルランド アメリカ合衆国 |
なし |
*ClinicalTrials.govより(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/record/NCT00003855)
試験名 :ACOSOG Z0011
レジメン:腋窩リンパ節郭清追加 vs センチネルリンパ節生検のみ(非劣性試験)
登録期間:1999年5月〜2004年12月
背景
本試験はその仮説を検証するためにACOSOG (the American College of Surgeons Oncology Group) によって行われた多施設共同第3相ランダム化比較試験である。結果報告は2007年より複数回に分けて行われ、2011年 (観察期間中央値6.3年の時点)にALND省略におけるOS非劣性が報告されたが3)、イベント数不足やER陽性乳癌の晩期再発を懸念する指摘があったため、経過観察期間を延長し改めて検証された結果が報告された。
シェーマ
試験結果:
主要評価項目: 全生存率(OS; Overall Survival)
観察期間中央値9.3年(IQR 6.93-10.34年)で110症例(SLNBのみ群51症例/ ALND追加群 59症例)イベント(死亡)が観察され、10年OS率はSLNBのみ群 86.3%に対しALND追加群 83.6%だった。未調整HR 0.85(片側検定 95% CI; 0-1.16)であり、非劣性マージンとして規定されたHR 1.3を下回ったことから、SLNBのみ群はALND追加群に比して、劣らないことが示された。また、補助療法(化学療法・内分泌療法・放射線療法)で調整後のHRも同様の結果であった。
OS | SLNBのみ群 | ALND追加群 | P値 |
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10年OS率(95% CI) | 86.3%(82.2-89.5) | 83.6%(79.1-87.1) | |
イベント数/ 症例数 | 51/ 436 | 59/ 420 | |
未調整HR(片側 95% CI) | 0.85(0-1.16) | 1 [Reference] | 0.02 |
調整後HR(片側 95% CI) | 0.93(0-1.28) | 1 [Reference] | 0.72 |
副次評価項目:無病生存期間(DFS; Disease Free Survival)
10年DFS率はSLNBのみ群 80.2%に対しALND追加群 78.2%であり、未調整HR 0.85 (95% CI; 0.62-1.17)であった。
DFS | SLNBのみ群 | ALND追加群 | P値 |
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10年DFS率(95% CI) | 80.2%(75.6-84.1) | 78.2%(73.5-82.2) | |
イベント数/ 症例数 | 73/ 435 | 82/ 418 | |
未調整HR(95% CI) | 0.85(0.62-1.17) | 1 [Reference] | 0.32 |
調整後HR(95% CI) | 0.90(0.68-1.18) | 1 [Reference] | 0.51 |
類似の試験としてEORTC 10981-220234 AMAROS試験7)やOTOASOR試験8)がある。これらの試験はいずれもALND追加群 vs 腋窩照射群で検討され、ACOSOG Z0011試験と同様の結果であった。NCCNガイドラインでもACOSOG Z0011試験に該当する患者ではALND省略のフローとなっており、標準治療としてのコンセンサスを得ている。
リンパ浮腫に代表されるALNDの手術合併症を回避する選択肢が示されたことから、ACOSOG Z0011試験はたいへん意義のある臨床試験と考えられる。
監修:社会医療法人博愛会 相良病院 院長 相良 安昭 先生