乳癌 OlympiA (EBC)

Olaparib as Adjuvant Treatment in Patients with Germline BRCA Mutated High Risk HER2 Negative Primary Breast Cancer

Tutt ANJ, Garber JE, Kaufman B, et al. N Engl J Med. 2021 Jun 24;384(25):2394-2405. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
BRCA 病的バリアント保持
HER2陰性再発高リスク乳癌患者
  第3相 浸潤性無再発生存 国際 あり

試験名 :OlympiA

レジメン:オラパリブvsプラセボ

登録期間:2014年6月~2019年5月

背景

 全乳癌発症者のうち約5%の生殖細胞系列BRCA 遺伝子異常(病的バリアント)が確認されると報告されている。BRCA 遺伝子関連乳癌の特徴として濃厚な家族歴、若年発症、両側乳癌や卵巣癌の発症リスク増加がある。BRCA1/2 遺伝子はがん抑制遺伝子のひとつで、DNA二本鎖切断の相同組み換え修復に関与する。
 PARP(ポリ(ADP—リボース)ポリメラーゼ)はDNA一本鎖切断の修復に関与し、BRCA1/2 遺伝子病的バリアントを保持する乳癌発症者でPARPが阻害されるとDNAの損傷が修復されず細胞死を起こす。書臨床試験の結果から、PARP阻害薬はBRCA 遺伝子関連進行乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌で有効性が示された。
 本試験は生殖細胞系列BRCA 遺伝子病的バリアント保持乳癌の術後再発予防としてオラパリブの有効性を評価する目的で行われたランダム化比較第3相試験である。

シェーマ

シェーマ

主な適格条件

遠隔転移のないHER2陰性再発高リスク乳癌

  • トリプルネガティブ乳癌:腋窩リンパ節転移陽性もしくは原発巣が2㎝以上
    術前化学療法後non-pCR
  • ホルモン陽性HER2陰性乳癌:リンパ節転移4個以上
    術前化学療法後non-pCRかつCPS(clinical and pathological stage)+EG(estrogen-receptor status and histologic grade)スコア≧3

生殖細胞系列のBRCA1/2 遺伝子の病的バリアントが確認されている
乳房および領域リンパ節の手術が適切に行われている
アンスラサイクリン系もしくはタキサン系、あるいは両者を組み合わせた6サイクル以上の化学療法(術前もしくは術後)が行われている
ECOG Performance status 0-1

主要評価項目:

  • 浸潤性無再発生存:Invasive Disease Free Survival (IDFS)

副次評価項目:

  • 遠隔無再発生存 Distant Disease Free Survival (DDFS)
  • 全生存期間(Overall survival)
  • 対側乳癌、卵巣癌、卵管癌、腹膜癌発症への影響
  • オラパリブ血中濃度
  • QOL評価(FACIT-Fatigue、EORTC QLQ-C30)
  • 安全性および忍容性(Safety&Tolerability)

試験結果:

主要評価項目: 浸潤性無再発生存:Invasive Disease Free Survival (IDFS)

データカットオフ(2020年3月27日)時点で284イベント(想定された330イベントの86%)が観察され、オラパリブ群において106例(11.5%)、プラセボ群において178例(19.4%)のIDFSイベントが認められた。
3年間の浸潤性無再発生存率はオラパリブ群85.9%、プラセボ群77.1%とオラパリブの投与によりIDFSの統計学的有意な3年IDFSの改善が認められた(p<0.001 ;HR, 0.58; 99.5% CI, 0.41–0.82)。

副次評価項目:

遠隔無再発生存 Distant Disease Free Survival (DDFS)

3年間の遠隔無再発生存率はオラパリブ群87.5%、プラセボ群80.4%と遠隔無再発生存期間の延長が示された(P<0.001;HR, 0.57; 99.5% CI, 0.39-0.83)。

全生存率

オラパリブ群で59例、プラセボ群で86例の死亡が認められた。生存率としてはオラパリブ群92%、プラセボ群88.3%となり有意差は認めなかった(P=0.02;HR0.68; 99% CI, 0.44 -1.05)。
全生存期間(Overall survival)への影響を確認するにはさらなる観察期間が必要と考えられた。

安全性および忍容性(Safety&Tolerability)

1815例(オラパリブ群911例、プラセボ群904例)で安全性評価を行った。
何らかの有害事象がオラパリブ群の91.7%、プラセボ群の83.3%にみられた。
1%以上のGrade3以上の主な有害事象はオラパリブ群で貧血(8.7%)、好中球減少(4.8%)、白血球減少(3.0%)倦怠感(1.8%)、リンパ球減少(1.2%)、プラセボ群では認めなかった。
オラパリブ群の53例(5.8%)とプラセボ群8例(0.9%)で輸血が行われた。
重篤な有害事象はオラパリブ群79例(8.7%)、プラセボ群76例(8.7%)にみられ、オラパリブ群で心停止、プラセボ群で急性骨髄性白血病、卵巣癌による死亡が確認された。

オラパリブ群の228例(25%)で投与量減量されたのに対してプラセボ群では47例(5.2%)だった。
投与中止はオラパリブ群90例(9.9%)に対してプラセボ群38例(4.2%)であり、その内訳は嘔気(2.0%)、貧血(1.8%)、倦怠感(1.3%)、好中球減少(1.0%)の順だった。

結語
 BRCA1/2 遺伝子病的バリアントを保持するHER2陰性高リスク乳癌症例に対して、適切な手術・放射線・術前術後化学療法を含む薬物療法のうえでオラパリブ投与を行うことで明らかな浸潤性無再発生存期間と遠隔無再発生存期間の延長を認めた。投与期間が1年でよいのかなど、術後補助化学療法の至適投与期間の検討、長期予後(血液疾患の発症率等)についてはさらなる観察も必要であるが、HER2陰性再発高リスク乳癌においてBRCA1/2 遺伝子病的バリアントの保持を確認することは、術式の選択のみならず術後薬物療法を検討するうえで有用な情報となる可能性が新たに示された。
執筆:社会医療法人博愛会 相良病院 乳腺・甲状腺外科 医長 川野 純子 先生
監修:社会医療法人博愛会 相良病院 院長 相良 安昭 先生

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