乳癌 SELECT BC

Randomized study of Taxane vs TS-1 in metastatic or recurrent breast cancer patients

Takashima, T., et al. Lancet Oncol, 17(1)90(2016) [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
HER2陰性転移再発乳がん 一次治療 第3相試験 全生存期間 日本 あり

試験名 :SELECT BC

レジメン:S-1 vs タキサン

登録期間:2006年10月~2010年7月

背景

 転移・再発乳癌に対して推奨される一次化学療法はタキサン系薬剤またはアンスラサイクリン系薬剤である。しばしば重篤な有害事象をきたすことがあるが生存延長の「益」が毒性を勘案しても有用と考えられ、一次療法として「益」が勝ると判断されている。S-1は日本で開発された経口抗がん剤であり、これまでは三次治療以降で用いられていた。第2相試験で未治療/既治療転移・再発乳癌に対するS-1の奏効割合が40%台とタキサン治療例と遜色ない結果が示された。本試験は転移・再発乳癌の一次治療としてタキサンとS-1の生存の非劣勢とQOLの優越性を検証することを目的とした第3相ランダム化比較試験である。

シェーマ

シェーマ

主な適格条件

  • 20-75歳
  • 切除不能HER2陰性かつホルモン治療耐性乳がん
  • ECOG PS 0-1
  • 転移・再発乳がんに対する化学療法未治療

主要評価項目:全生存期間

副次評価項目:治療成功期間、無増悪生存期間、安全性、HRQOL、医療経済効果

試験結果:

主要評価項目:

 2006年10月-2010年7月までに618例が登録され、S-1群、タキサン群にそれぞれ309例ずつ割り付けられ、有効性解析は592例(S-1群306例、タキサン群286例)で解析された。観察期間中央値34.6ヶ月(IQR: 17.9-44.4)において、主要評価項目であるOS中央値は、S-1群35.0ヵ月、タキサン群37.2ヵ月で、S-1群のタキサン群に対する非劣性(非劣性マージンHR:1.333)が検証された(HR:1.05、95%CI:0.86-1.27, Pnon-inferiority=0.015)。

副次評価項目:

 治療成功期間中央値は、S-1群8.0ヵ月、タキサン群8.9ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.93-1.30)。
 無増悪生存期間中央値は、S-1群9.6ヵ月、タキサン群11.0ヵ月であった(HR:1.18、95%CI:0.99-1.40)。
 有害事象に関しては、疲労、脱毛、浮腫、感覚性神経障害、関節痛、筋肉痛、アレルギー反応、発熱、の有害事象はタキサン群で有意に多く、下痢、口内炎、悪心はS-1群に有意に多かった。発熱性好中球減少、嘔吐、食欲不振は両群間に差を認めなかった。2例(1%)の治療関連死がタキサン群で認められた。S-1群では治療関連死は認めなかった。
 EORTC QLQ C-30で測定した全般的健康状態/QOLは、S-1群がタキサン群と比べて有意に良好であった(p=0.04)。また、身体機能(p<0.01)、役割機能(p<0.01)、心理機能(p<0.01)、認知機能(p=0.02)、社会機能(p<0.01)、疼痛(p=0.04)、経済的困難(p<0.01)においてもS-1群がタキサン群よりも良好な結果であった。EQ-5Dスコアにおいても、S-1群がタキサン群よりも良好な結果であったp=0.03)。

結語
 経口5FU抗がん剤の臨床試験は、海外でCapeciatabineと他の抗ガン剤を比較したPIII試験が実施されているが、今まで、経口5FU抗がん剤とタキサン比較検討した臨床試験は存在しなかった。本研究では、転移・再発乳癌に対する一次化学療法としてS-1を使用した群がタキサン系抗がん剤を使用した群に全生存期間で劣らないことが示された。一方、PFSでは非劣性は証明されなかった。QOLでTS-1の優越性が示されており、脱毛がないことからボディイメージを維持した治療が期待できる。以上の結果よりS-1は、HER2陰性かつホルモン耐性の転移・再発乳がん一次化学療法の選択肢となりうることが示された。患者の価値観と毒性プロファイルを鑑み、QOLの維持を意識した治療選択が求められる。
執筆:博愛会相良病院 腫瘍内科 部長 太良 哲彦 先生
監修:博愛会相良病院 院長 相良 安昭 先生

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