対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
大腸癌 | 三次治療以降 | 第3相 | 無増悪生存期間 | 国際 | なし |
試験名 :20020408
レジメン:パニツムマブvs BSC
登録期間:2004年1月〜2005年6月
背景
抗EGFR抗体薬であるセツキシマブとパニツムマブは切除不能大腸癌において単剤で奏効割合、病勢制御割合がおおよそ10%、30%であることが示されている。これらの臨床試験ではEGFRの発現が選択基準となっていたが、EGFRの発現強度は効果予測因子とはならなかった。KRAS遺伝子は大腸癌患者の30%~50%で変異がみとめられ、KRAS変異型大腸癌は予後不良で抗EGFR抗体薬の奏効が期待できないことがいくつかの試験結果より示されている。そこで今回、化学療法不応の大腸癌におけるパニツムマブ単剤とBSCを比較した第3相試験(20020408試験)の登録患者を対象とし、KRASの効果予測因子としての意義を検討した。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:無増悪生存期間
BSCと比較し、パニツムマブの無増悪生存期間に対する効果がKRAS変異の有無で異なるかを検証した。試験結果:
- 20020408試験に登録されていた463例のうち、427例(92%)でKRAS遺伝子変異の解析が可能であった。そのうちの184例(43%)がKRAS変異型であった(パニツムマブ群 84例[40%]、BSC群 100例[46%])。
- BSC群のうち、クロスオーバーでパニツムマブが投与されたのはKRAS野生型 90例(76%)。KRAS変異型 77例(77%)であった。
- 患者背景は、治療群間、KRAS変異別ともに大きな隔たりはなかった。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
n | 中央値 | |||
KRAS野生型 | パニツムマブ | 124 | 12.3週 | |
BSC | 119 | 7.3週 | ||
KRAS変異型 | パニツムマブ | 84 | 7.4週 | |
BSC | 100 | 7.3週 |
2. 奏効割合
n | 奏効割合 | ||
KRAS野生型 | パニツムマブ | 124 | 17%(PR 21例) |
BSC | 119 | 0% | |
KRAS変異型 | パニツムマブ | 84 | 0% |
BSC | 100 | 0% |
3. 病勢制御割合
n | 病勢制御割合 | ||
KRAS野生型 | パニツムマブ | 124 | 51% (PR+SD 63例) |
BSC | 119 | 12% (PR+SD 14例) | |
KRAS変異型 | パニツムマブ | 84 | 12% (PR+SD 10例) |
BSC | 100 | 8% (PR+SD 8例) |
4. 全生存期間
- KRAS野生型におけるBSCに対するパニツムマブのHR0.99(95%C.I. 0.75-1.29)
- KRAS変異型におけるBSCに対するパニツムマブのHR1.02(95%C.I. 0.75-1.39)
5. 有害事象
- Grade3以上のパニツムマブ治療関連有害事象:KRAS野生型 25%, KRAS変異型 12%
- Grade3以上の皮膚関連有害事象:KRAS野生型 25%, KRAS変異型 13%
- 低マグネシウム血症:KRAS野生型 3%, KRAS変異型 0%
結語
切除不能大腸癌患者において、KRAS野生型患者に対するパニツムマブ単独療法の有効性が示された。 KRAS statusはパニツムマブ単独療法の患者選択の際に考慮されるべきと考えられる
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 伏木 邦博 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生