大腸癌 BEACON CRC

Encorafenib, Binimetinib, and Cetuximab in BRAF V600E–Mutated Colorectal Cancer.

Kopetz S, Grothey A, Yaeger R, et al. New Engl J Med 2019;381(17):1632–43. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
BRAF V600E変異型切除不能大腸癌 二次または三次治療 第3相 全生存期間 国際 あり

試験名 :BEACON試験

レジメン:
3剤併用療法群:エンコラフェニブ(ENC)+ビニメチニブ(BINI)+セツキシマブ(CET)併用療法、
2剤併用療法群:ENC+CET併用療法、コントロール群:化学療法(イリノテカン(IRI)単剤もしくはFOLFIRI)+CET併用療法

登録期間:2017年5月〜2019年1月

背景

  • BRAF V600E変異は、切除不能大腸癌の10%を占め、予後不良であるともに、従来の化学療法の効果は乏しいことが報告されている。
  • BRAF V600E変異は複数の癌種においてドライバー変異であることが知られており、悪性黒色腫や非小細胞肺癌において、BRAF阻害薬の有効性が報告されている。一方、BRAF V600E変異型大腸癌に対するBRAF阻害薬単剤の有効性は限定的である。
  • BRAF V600E変異型大腸癌の前臨床モデルでの検討では、BRAF阻害により、EGFRを介した速やかなフィードバック機構の誘導による再活性化が起こることが示されており、BRAF阻害薬単剤の有効性が乏しいことの原因と考えられている。これらの知見に基づき、臨床試験において、BRAF阻害薬に抗EGFR抗体薬を併用することで抗腫瘍効果が高まることが報告された。
  • また前臨床研究でMEK阻害薬を追加することの有効性が示唆され、BRAF阻害薬と抗EGFR抗体薬、MEK阻害薬併用療法の第1/2相臨床試験においても、その有効性が確認された。
  • これらの知見に基づき、BRAF V600E変異型切除不能大腸癌に対して、標準治療に対するENC±BINI+CET併用療法の全生存期間における優越性を検証する第3相試験が行われた。

シェーマ

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統計学的事項

主要評価項目:全生存期間、奏効割合

  • 当初の主要評価項目は、全生存期間(コントロール群に対する3剤併用療法群)であったが、プロトコル改正が行われ、奏効割合(コントロール群に対する3剤併用療法群)が追加された。また、全生存期間の中間解析が実施されることとなった(本報告は中間解析の結果である)。
  • 複数ある主要評価項目のαエラーは、フォールバック手順を用いて制御した。奏効割合の解析には片側αは0.005とし、残りの0.020は全生存期間に割り当てられた。
  • 本試験は、3剤併用療法と2剤併用療法を比較することが可能な検出力を有していなかった。

サンプルサイズの設定根拠:

  • サンプルサイズは、副次評価項目である全生存期間(コントロール群に対する2剤併用療法群)に基づいて決定された。この比較では、全生存期間におけるハザード比が0.70であることを検証するために、試験の検出力を90%と設定したところ、338イベントが必要と算出された(片側α 0.025、層別ログランク検定)。
  • 奏効割合(コントロール群に対する3剤併用療法群)の主解析に必要とされる症例数は、奏効割合がコントロール群で10%、3剤併用療法群で30%であるという仮定に基づき、1群あたり110例であれば、片側有意水準0.005で88%の検出力で検証できると算出された(Cochran-Mantel-Haenszel検定)。

試験結果:

  • 2017年5月〜2019年1月までに1677例がスクリーニングされ、665例がランダム化、それぞれ3剤併用療法群に224例、2剤併用療法群に220例、コントロール群に221例に割り付けされた。
  • ベースラインの患者背景に3群間で偏りを認めなかった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  中央値 95%信頼区間 ハザード比(95%信頼区間), P値
3剤併用療法 9.0ヶ月 8.0-11.4ヶ月 0.52 (0.39-0.70), p<0.001*
2剤併用療法 8.4ヶ月 7.5-11.0ヶ月 0.60 (0.45-0.79), p<0.001
コントロール群 5.4ヶ月 4.8-6.6ヶ月 Ref.

*本試験の主要評価項目の1つ

2. 奏効割合
  奏効割合 95%信頼区間 P値
3剤併用療法 26% 18-35% p<0.001*
2剤併用療法 20% 13-29% p<0.001
コントロール群 2% <1-7% Ref.

*本試験の主要評価項目の1つ

3. 無増悪生存期間
  中央値 95%信頼区間 ハザード比(95%信頼区間), P値
3剤併用療法 4.3ヶ月 4.1-5.2ヶ月 0.38 (0.29-0.49), p<0.001*
2剤併用療法 4.2ヶ月 3.7-5.4ヶ月 0.40 (0.31-0.52), p<0.001
コントロール群 1.5ヶ月 1.5-1.7ヶ月 Ref.
4. 有害事象
  3剤併用療法群 N=222 (%) 2剤併用療法群 N=216 (%) コントロール群 N=193 (%)
  Any Grade Grade≥3 Any Grade Grade≥3 Any Grade Grade≥3
下痢 137 (62) 22 (10) 72 (33) 4 (2) 93 (48) 19 (10)
ざ瘡様皮疹 108 (49) 5 (2) 63 (29) 1 (<1) 76 (39) 5 (3)
悪心 100 (45) 10 (5) 74 (34) 1 (<1) 80 (41) 2 (1)
嘔吐 85 (38) 9 (4) 46 (21) 3 (1) 56 (29) 5 (3)
倦怠感 73 (33) 5 (2) 65 (30) 9 (4) 53 (27) 8 (4)
腹痛 65 (29) 13 (6) 49 (23) 5 (2) 48 (25) 9 (5)
食欲低下 63 (28) 4 (2) 58 (27) 3 (1) 52 (27) 6 (3)
無力症 55 (25) 7 (3) 46 (21) 7 (3) 49 (25) 9 (5)
便秘 55 (25) 0 33 (15) 0 35 (18) 2 (1)
皮膚乾燥 46 (21) 2 (1) 24 (11) 0 13 (7) 1 (1)
発熱 45 (20) 4 (2) 35 (16) 2 (1) 27 (14) 1 (1)
発疹 42 (19) 1 (<1) 25 (12) 0 27 (14) 3 (2)
口内炎 31 (14) 1 (<1) 12 (6) 0 44 (23) 4 (2)
手掌足底発赤知覚不全症候群 28 (13) 0 9 (4) 1 (<1) 14 (7) 0
掻痒 28 (13) 0 20 (9) 0 9 (5) 0
背部痛 25 (11) 2 (1) 22 (10) 2 (1) 23 (12) 2 (1)
霧視 25 (11) 0 8 (4) 0 1 (1) 0
末梢性浮腫 24 (11) 1 (<1) 18 (8) 0 13 (7) 1 (1)
体重減少 24 (11) 1 (<1) 21 (10) 1 (<1) 11 (6) 0
関節痛 23 (10) 0 41 (19) 2 (1) 1 (1) 0
咳嗽 23 (10) 0 16 (7) 1 (<1) 10 (5) 0
ALT上昇 51 (23) 4 (2) 36 (17) 0 50 (26) 5 (3)
AST上昇 50 (23) 4 (2) 31 (14) 3 (1) 38 (20) 3 (2)
ビリルビン上昇 12 (5) 5 (2) 16 (7) 5 (2) 16 (8) 6 (3)
CK上昇 52 (23) 6 (3) 6 (3) 0 13 (7) 0
クレアチニン上昇 166 (75) 10 (5) 10 (5) 5 (2) 65 (34) 2 (1)
貧血 125 (56) 24 (11) 70 (32) 9 (4) 85 (44) 8 (4)
  • Grade3以上の有害事象を、3剤併用療法では58%、2剤併用療法では50%、コントロール群では61%に認めた。
  • 有害事象による中止を、3剤併用療法では7%、2剤併用療法では8%、コントロール群では11%に認めた。
  • 致死的な有害事象を、3剤併用療法では4%、2剤併用療法では3%、コントロール群では4%に認めた。
5. サブグループ解析
  • コントロール群に対する3剤併用療法群の全生存期間についてサブ解析が行われた。
  • どのサブグループでもコントロール群に対する3剤併用療法群の有効性は一貫していた。
  ハザード比(95%信頼区間)
ECOG PS
- 0
- 1

0.63 (0.41–0.96)
0.48 (0.33–0.70)
前治療のイリノテカンの使用
- なし
- あり

0.53 (0.35–0.79)
0.55 (0.37–0.80)
地域
- 北米
- 西欧
- その他

0.91 (0.45–1.86)
0.39 (0.27–0.56)
0.74 (0.41–1.33)
切除不能大腸癌に対する前治療歴
- 1レジメン
- ≥2レジメン

0.54 (0.38–0.77)
0.53 (0.34–0.82)
年齢
- <65歳
- ≥65歳

0.58 (0.41–0.82)
0.48 (0.30–0.76)
性別
- 男性
- 女性

0.53 (0.36–0.79)
0.54 (0.36–0.80)
転移臓器個数
- ≤2
- ≥3

0.54 (0.37–0.80)
0.50 (0.34–0.75)
マイクロサテライト不安定性
- 異常、高頻度
- 正常
- 不明

0.67 (0.26–1.76)
0.44 (0.31–0.62)
0.78 (0.44–1.41)
ベースラインのCEA値
- 正常上限値以上
- 正常上限値以下

0.54 (0.40–0.72)
0.42 (0.18–0.99)
ベースラインのCRP値
- 正常上限値以上
- 正常上限値以下

0.61 (0.42–0.88)
0.46 (0.29–0.71)
原発占居部位
- 左側
- 右側
- 両側
- 不明

0.43 (0.26–0.72)
0.63 (0.44–0.90)
0.74 (0.22–2.42)
0.35 (0.09–1.38)
結語
BRAF V600E変異を有する切除不能大腸癌患者において、ENC+BINI+CET併用療法は標準治療と比較して、全生存期間が有意に延長し、奏効割合が有意に高くなった。
関連論文
1) Cutsem, E. V. et al. Binimetinib, Encorafenib, and Cetuximab Triplet Therapy for Patients With BRAFV600E–Mutant Metastatic Colorectal Cancer: Safety Lead-In Results From the Phase III BEACON Colorectal Cancer Study. J Clin Oncol 37, JCO.18.02459-11 (2019).
2) Tabernero, J. et al. Encorafenib Plus Cetuximab as a New Standard of Care for Previously Treated BRAF V600E–Mutant Metastatic Colorectal Cancer: Updated Survival Results and Subgroup Analyses from the BEACON Study. J Clin Oncol 39, 273–284 (2021).
執筆:国立がん研究センター東病院 消化管内科 中島 裕理 先生
監修:愛知県がんセンター病院 薬物療法部 医長 舛石 俊樹 先生

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