対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
大腸癌 | 三次治療以降 | 第3相 | 全生存期間 | 国際 | なし |
試験名 :CO.17
レジメン:セツキシマブ vs BSC
登録期間:2003年12月〜2005年8月
背景
CO.17試験で上皮成長因子受容体(EGFR)に対するモノクローナル抗体であるセツキシマブは既治療の切除不能大腸癌においてBSCと比較して生存を延長しQOLを維持することが示された。しかし、50%を超える症例で初回治療効果判定で増悪を認めていた。KRASはEGFRシグナル経路の重要な構成要素で、その遺伝子が変異を獲得すると抗EGFR抗体薬の効果が期待できないことが明らかになっている。今回、CO.17試験の患者を対象に、KRAS遺伝子変異の有無とセツキシマブの効果との関連について後方視的に検討した。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
KRAS遺伝子変異の有無と生存との関連について後方視的に検討した。試験結果:
- CO.17試験でランダム化された572例の内、68.9%の394例(セツキシマブ群 198例、BSC群 196例)でKRAS遺伝子測定が可能であった。KRAS遺伝子測定には腫瘍組織検体を用いた。
- KRAS変異はセツキシマブ群の40.9%、BSC群の42.3%に認められた。
- KRAS野生型と変異型で患者背景に大きな隔たりはなかった。
1. 全生存期間 (主要評価項目)
n | 中央値 | |||
KRAS野生型 | セツキシマブ | 110 | 9.5ヶ月 | |
BSC | 105 | 4.8ヶ月 | ||
KRAS変異型 | セツキシマブ | 75 | 4.5ヶ月 | |
BSC | 76 | 4.6ヶ月 |
2. 無増悪生存期間
n | 中央値 | |||
KRAS野生型 | セツキシマブ | 110 | 3.7ヶ月 | |
BSC | 105 | 1.9ヶ月 | ||
KRAS変異型 | セツキシマブ | 75 | 1.8ヶ月 | |
BSC | 76 | 1.8ヶ月 |
3. 奏効割合
奏効割合 | |
---|---|
セツキシマブ (KRAS野生型) | 12.8% |
セツキシマブ (KRAS変異型) | 1.2% |
BSC | 0% |
4. QOL
- QOL質問票(EORTC、QOL-C30)を用い、5回(ベースライン時、4週、8週、16週、24週)のタイミングで患者のQOLを評価した。
[全般的健康におけるQOLスコアの変化(平均値)]
- KRAS野生型
8週時:セツキシマブ群 3.2、BSC群 -7.7(差 10.9, 95%CI 4.2-17.6, p=0.002)
16週時:セツキシマブ群 -0.2、BSC群 -18.1(差 17.9, 95%CI 7.6-28.2, p<0.001) - KRAS変異型
8週時:セツキシマブ群 -4.7、BSC群 -9.6(差 4.9, 95%CI -4.2-14.0, p=0.53)
16週時:セツキシマブ群 -9.5、BSC群 -13.9(差 4.4, 95%CI -9.2-17.9, p=0.62)
5. 全生存期間(BSC群、KRAS status別)
中央値 | HR 1.01 (95%C.I. 0.74-1.37) p=0.97 |
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KRAS野生型 | 4.8ヶ月 | |
KRAS変異型 | 4.6ヶ月 |
結語
セツキシマブはKRAS変異型切除不能大腸癌患者に対する有効性がないことが示されたが、一方KRAS野生型症例に対しては有効性を示した。BSCでは、KRAS変異の有無は予後に影響しなかった。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 伏木 邦博 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生