大腸癌 CONCUR

Regorafenib plus best supportive care versus placebo plus best supportive care in Asian patients with previously treated metastatic colorectal cancer (CONCUR): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial

Li J, et al. Lancet Oncol. 2015 Jun;16(6):619-29. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
大腸癌 一次治療以降 第3相 全生存期間 中国、香港、韓国、台湾、ベトナム なし

試験名 :CONCUR

レジメン:レゴラフェニブ vs プラセボ

登録期間:2012年4月29日〜2013年2月6日

背景

レゴラフェニブ(REG)は血管新生に関わるVEGFR1-3やTIE-2、間質系細胞の遊走・増殖に関わるPDGFR-βやFGFR、腫瘍増殖にかかわるRAFなどの受容体チロシンキナーゼを標的とする経口マルチキナーゼ阻害剤である。本邦でも実施された国際共同ランダム化第3相試験のCORRECT試験において、標準治療不応の切除不能大腸癌に対してREGはプラセボと比較して全生存期間の延長を示した1)。CORRECT試験の登録患者760例のうちアジア人は15%で、その90%を日本人が占めていた。そこで、アジア人患者を対象にREGの有効性を検証するランダム化第3相試験を実施した。なお、本試験のデザインはCORRECT試験と同様であるが、本試験開始当初は分子標的治療薬が普及していない国もあったため、対象には分子標的治療薬未治療例も含まれた。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

プラセボ群の全生存期間を4.5ヶ月、REG群の全生存期間が6ヶ月に改善する(33.3%の改善、ハザード比0.75)ことを片側α=0.02、検出力80%で検証するために、154のイベントが必要とされ、目標症例数を200例と設定した。

試験結果:

  • 2012年4月29日から2013年2月6日の間に、204例が登録され、136例がREG群に、68例がプラセボ群に割り付けられた。
  • データカットオフ(2013年11月29日)時点で(REG群95例(70%)、プラセボ群60例(88%)、計155例に死亡イベントが発生した。
  • 観察期間中央値は7.4か月であった。
  • KRAS 変異例はREG群46例(34%)、プラセボ群18例(26%)、BRAF変異例はREG群0例(0%)、プラセボ群1例(1%)であった。
  • 全症例のうち82例(40%)は分子標的治療薬の投与を受けておらず、128例(63%)は3レジメン以上の治療歴があった。
1. 全生存存期間(主要評価項目)
  中央値 四分位範囲 HR=0.55    
(95%CI:0.40-0.77)
p=0.00016   
REG群 8.8か月 7.3-9.8
プラセボ群 6.3か月 4.8-7.6
  • 分子標的治療薬の有無によらず、全生存期間はREG群で延長を認めたが、その効果は分子標的治療薬未投与例でより顕著であった(投与歴あり; HR=0.78、投与歴なし; HR=0.31)。
2. 無増悪生存期間
  中央値 四分位範囲 HR=0.31    
(95%CI:0.22-0.44)
P<0.0001   
REG群 3.2か月 2.0-3.7
プラセボ群 1.7か月 1.6-1.8
  • 分子標的治療薬の有無によらず、無増悪生存期間はREG群で延長を認めたが、その効果は分子標的薬未投与例でより顕著であった(投与歴あり; HR=0.44、投与歴なし; HR=0.15)。
3. 奏効割合
  奏効割合 p=0.045
REG群 4% (PR 6例)
プラセボ群 0%
4. 病勢制御割合
  病勢制御割合 P<0.0001
REG群 51%
プラセボ群 7%
5. 有害事象(Grade3-4)
  REG群(n=136) プラセボ群(n=68)
  Grade1-2 Grade3 Grade4 Grade1-2 Grade3 Grade4
全有害事象* 58(43%) 67(49%) 5(4%) 21(31%) 9(13%) 1(1%)
手足症候群 78(57%) 22(16%) NA** 3(4%) 0 NA
血中ビリルビン増加 41(30%) 6(4%) 3(2%) 4(6%) 1(1%) 0
ALT増加 23(17%) 9(7%) 0 5(7%) 0 0
AST増加 24(18%) 7(5%) 1(1%) 6(9%) 0 0
高血圧 16(12%) 15(11%) 0 1(1%) 2(3%) 0
嗄声 27(20%) 1(1%) NA 0 0 NA
下痢 23(17%) 1(1%) 0 1(1%) 1(1%) 0
疲労 19(14%) 4(3%) NA 4(6%) 1(1%) NA
血小板数減少 9(7%) 3(2%) 1(1%) 1(1%) 0 0
低リン酸塩血症 4(3%) 9(7%) 0 0 0 0
タンパク尿 11(8%) 2(1%) NA 0 1(1%) NA
斑点状丘疹 6(4%) 6(4%) NA 1(1%) 0 NA
白血球数減少 8(6%) 3(2%) 0 0 0 0
食欲不振 9(7%) 1(1%) 0 3(4%) 0 0
リパーゼ増加 3(2%) 6(4%) 0 3(4%) 1(1%) 0
好中球数減少 4(3%) 3(2%) 0 0 0 0
筋肉痛 6(4%) 1(1%) NA 0 0 NA
腹痛 5(4%) 1(1%) NA 3(4%) 0 NA
貧血 3(2%) 1(1%) 1(1%) 0 0 0
ALP増加 3(2%) 0 0 0 1(1%) 0
低アルブミン血症 2(1%) 1(1%) 0 0 0 0
低カリウム血症 2(1%) 1(1%) 0 0 0 0
内臓動脈虚血 0 1(1%) 0 0 0 0
γGTP増加 1(1%) 1(1%) 0 0 0 0
咽頭炎 1(1%) 1(1%) 0 0 0 0
心房細動 1(1%) 0 0 0 0 1(1%)
食道静脈瘤破裂 0 1(1%) 0 0 0 0
血清アミラーゼ増加 1(1%) 0 0 0 1(1%) 0
創部感染 0 1(1%) 0 0 0 0
側腹部痛 0 1(1%) NA 0 0 NA
膣瘻 0 1(1%) 0 0 0 0
伝導障害 0 0 0 0 1(1%) 0
心不全 0 0 0 0 0 1(1%)
急性腎障害 0 0 0 0 0 1(1%)
  • REG群で2例の治療関連死(最終投与30日以内死亡:心停止1例、死因不明1例)を認めた。

*最悪イベントの頻度 **NA=not applicable

結語
アジア人の切除不能大腸癌患者においてREG群はプラセボ群と比較して、全生存期間、無増悪生存期間、奏効割合、病勢制御割合が有意に優れていた。有害事象は既報と同程度であった。
関連論文
1) Grothey A, Cutsem EV, Sobrero A, et al. Regorafenib monotherapy for previously treated metastatic colorectal cancer (CORRECT): an international, multicentre, randomised, placebo-controlled, phase 3 trial. The Lancet 2013;381:303-12 [Pubmed]
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 副医長 白数 洋充 先生
監修:愛知県がんセンター病院 薬物療法部 医長 舛石 俊樹 先生

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