直腸癌 COREAN trial

Open versus laparoscopic surgery for mid-rectal or low-rectal cancer after neoadjuvant chemoradiotherapy (COREAN trial): survival outcomes of an open-label, non-inferiority, randomised controlled trial

Seung-Yong Jeong, Ji Won Park, et al. Lancet Oncol. 2014 Jun;15(7):767-74. doi: 10.1016/S1470-2045(14)70205-0. Epub 2014 May 15. [PubMed]

試験名 :COREAN trial

内容  :術前化学放射線治療後の直腸癌に対する開腹手術 vs 腹腔鏡手術

登録期間:2006年4月~2009年8月

背景

複数のRCTにより、結腸癌に対する腹腔鏡手術が開腹手術と同等の局所再発率、全生存率であることが報告されている。さらに、結腸癌に対する腹腔鏡手術は短期成績において開腹手術より優れていることが報告されている。一方、直腸癌に対する腹腔鏡手術と開腹手術のRCTは存在するものの、いずれも小規模もしくは単施設での検討であり、長期成績を主要評価項目としていない。CLASSIC試験のサブグループ解析では、直腸癌に対する開腹手術と腹腔鏡手術は同等のOS、DFSであった。
局所進行直腸癌においては、局所再発を減少させることから術前にCRTが実施されるが、術前CRT後の腹腔鏡手術の安全性を確認したRCTは存在しない。本研究の目的は、術前CRT後の直腸癌に対する開腹手術と腹腔鏡手術の長期成績を比較することである。

シェーマ

対象

18歳から80歳の中-下部直腸癌cT3N0-2M0の患者で術前CRTを受けた患者。

方法

  • 術前放射線療法:全骨盤45Gy/25fr+局所ブースト5.4Gy/3fr
  • 術前化学療法:レジメンは以下の3種類
    1. Fluoropyrimidines alone (5-fluorouracil and leucovorin or capecitabine or tegafur-uracil [UFT-E]) and leucovorin
    2. Doublet (capecitabine and irinotecan)
    3. Triplet (capecitabine, irinotecan, and cetuximab)
  • 手術:術前化学療法終了後6-8週間で施行。全例で根治切除、IMA根部処理、TMEが行われた。術者は開腹手術、腹腔鏡手術のいずれも行っていた。
  • 術後補助化学療法:病理結果に関わらず全症例で推奨した。術後4週から4か月間実施。レジメンは以下の3種類のいずれかであった。
    1. 5-fluorouracil and leucovorin
    2. Capecitabine
    3. FOLFOX
  • 術後フォローアップ:初めの2年間は3か月ごと、その後3年間は6か月~1年ごと。

評価項目

主要評価項目:3年無再発生存率

副次評価項目:全生存率、局所再発率、QOL

デザイン:3年無病生存(DFS)の点推定値を比較する非劣性試験とし、その非劣性マージンを15%とした。検出力85%、片側type 1 error 2.5%として、10%のフォロー中断を見込み、340例の登録が必要とされた。
QOLの評価:the European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality-of-Life Questionnaire (EORTC QLQ)-C30およびQLQ-CR38を用いて、術前と術後3、12、24、36か月に評価した(ileostomyを有する患者はileostomy閉鎖前・後も評価)。

結果

観察期間中央値は開腹手術群46 (37-56)か月、腹腔鏡手術群48 (38-57)か月(p=0.47)。

1. 患者背景

割り付け調整因子は性別、化学療法レジメンであった。

  開腹手術群 n=170 腹腔鏡手術群 n=170
年齢 (years) 59.1 (9.9) 57.8 (11.1)
性別
 男性
 女性

110 (65%)
60 (35%)

110 (65%)
60 (35%)
Body-mass index
 ≦25
 >25
24.08 (3.20)
106 (62%)
64 (38%)
24.08 (3.21)
107 (63%)
63 (37%)
ASA grade
 I
 II
 III
 
65 (38%)
98 (58%)
7 (4%)
 
69 (41%)
96 (56%)
5 (3%)
術前CEA値 (ng/ml)
 ≦5
 >5
 
154 (91%)
16 (9%)
 
157 (92%)
13 (8%)
臨床分類
 cN0
 cN+
 
52 (31%)
118 (69%)
 
59 (35%)
111 (65%)
肛門縁からの距離 (cm)
 0-3
 3-6
 6-9
 
46 (27%)
59 (35%)
65 (38%)
 
35 (21%)
66 (39%)
69 (41%)
術前化学療法
 Fluoropyrimidines alone
 Doublet *
 Triplet **
 
156 (92%)
1 (1%)
13 (8%)
 
156 (92%)
3 (2%)
11 (6%)
術後化学療法
 Fluoropyrimidines alone
 Oxaliplatin-based
 None
 
149 (88%)
13 (8%)
8 (5%)
 
149 (88%)
11 (6%)
10 (6%)

* Capecitabine and irinotecan, ** Capecitabine, irinotecan, and cetuximab

2. 手術病理学的検討
  開腹手術群 n=170 腹腔鏡手術群 n=170 P値
手術
 腹会陰式直腸切断術
 低位前方切除術
 
24 (14%)
146 (86%)
 
19 (11%)
151 (89%)
 
0.42
腫瘍分化度
 wel/mod
 por/sig/muc
 Unknown
 
163 (96%)
6 (4%)
1 (1%)
 
164 (96%)
5 (3%)
1 (1%)
 
1.00
Tumor regression grade scale
 1
 2
 3
 4
 
35 (21%)
89 (52%)
24 (14%)
22 (13%)
 
25 (15%)
74 (44%)
31 (16%)
40 (24%)
 
0.03
ypT classification
 ypT0/ypTis/ypT1/ypT2
 ypT3/ypT4
 
71 (42%)
99 (58%)
 
95 (56%)
75 (44%)
 
0.01
ypN classification
 ypN0
 ypN1
 ypN2
 
113 (66%)
43 (25%)
14 (8%)
 
135 (79%)
18 (11%)
17 (10%)
 
0.002
CRM
 陽性 (≦1mm)
 陰性 (>1mm)
 
7 (4%)
163 (96%)
 
5 (3%)
165 (97%)
 
0.77
TME quality
 Complete or nearly complete
 Incomplete
 Unknown
 
150 (88%)
11 (6%)
9 (5%)
 
156 (92%)
8 (5%)
6 (4%)
 
0.55
3.主要・副次評価項目
  3年生存率 (95% CI)
無再発生存
 開腹手術群
 腹腔鏡手術群
 群間差

72.5% (65.0 to 78.6)
79.2% (72.3 to 84.6)
-6.7% (-15.8 to 2.4)
全生存
 開腹手術群
 腹腔鏡手術群
 群間差

90.4% (84.9 to 94.0)
91.7% (86.3 to 95.0)
-1.3% (-7.4 to 4.8)
局所再発
 開腹手術群
 腹腔鏡手術群
 群間差

4.9% (2.5 to 9.6)
2.6% (1.0 to 6.7)
2.3% (-1.8 to 6.4)

  • 3年無再発生存率について、開腹手術群は72.5% (95% CI 65.0-78.6)、腹腔鏡手術群は79.2% (72.3-84.6)であり、両群間の差は-6.7%であった。その信頼区間(95% CI -15.8 to 2.4)の下限は非劣性マージンを下回っており(p<0.0001)非劣性が証明された。
  • 3年全生存率、局所再発率に関して両群間に差は認めなかった。
  • ステージ別の解析においても、無再発生存期間に差は認めなかった。
  • イベント(再発、再発なしの死亡、二次癌など)数は、開腹手術群で49 (29%)、腹腔鏡手術群で41 (24%)であった。
  • 再発は開腹手術群で39例(23%) (局所4、遠隔29、局所+遠隔6)、腹腔鏡手術群で31 例(18%) (局所2、遠隔27、局所+遠隔2)であった(p=0.31)。
  • 再発部位は両群間に差を認めず(p=0.42)、ポート部や創部再発は認めなかった。
  • 死亡は開腹手術群で25例(15%) (うち、原癌死19例)、腹腔鏡手術群で20例(12%)(うち、原癌死14例)であった。治療関連死亡は認めなかった。
  • 無作為化にもかかわらず両群はTumor regression grade scale、ypTおよびN因子に差を認めたが、これらの因子を調整した無再発生存に対する多変量解析では両群間に差は認めなかった。
  単変量解析 多変量解析
  ハザード比 P値 ハザード比 P値
ypT classification
 ypT0/ypTis/ypT1/ypT2
 ypT3/ypT4

1.00
2.88 (1.82-4.55)


<0.0001

1.00
1.33 (0.75-2.37)


0.33
ypN classification
 ypN0
 ypN1
 ypN2

1.00
3.19 (1.95-5.21)
8.18 (4.61-14.51)


<0.0001
<0.0001

1.00
2.46 (1.45-4.19)
5.07 (2.59-9.96)


0.0009
<0.0001
Tumor regression grade scale
 1
 2
 3
 4

1.00
0.47 (0.30-0.76)
0.25 (0.12-0.53)
0.16 (0.07-0.37)


0.002
0.0003
<0.0001

1.00
0.72 (0.43-1.20)
0.48 (0.21-1.10)
0.44 (0.16-1.21)


0.21
0.08
0.11
治療群
 腹腔鏡手術
 開腹手術

1.00
1.23 (0.81-1.86)


0.34

1.00
0.98 (0.63-1.52)


0.94

・術後QOLについて、両群間に差は認めなかった。

結語
術前化学放射線治療後の局所進行直腸癌の術後3年無再発生存率における、腹腔鏡手術の開腹手術に対する非劣性が証明された。
執筆:九州大学大学院 消化器・総合外科診療 鉾之原 健太郎 先生
監修:九州大学大学院 消化器・総合外科診療 准教授 沖 英次 先生

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