対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
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大腸癌 | 三次治療以降 | 第3相 | 全生存期間 | 国際 | あり |
試験名 :CORRECT
レジメン:レゴラフェニブ vs プラセボ
登録期間:2010年4月〜2011年3月
背景
すべての標準的治療を行っても病勢進行した切除不能大腸癌患者の多くは良好なPSを維持しており、さらなる治療を受けられる状態である。大腸癌の進行には様々なシグナル経路が関係している。経口マルチキナーゼ阻害薬のレゴラフェニブは腫瘍の血管新生および微小環境を阻害し、前臨床研究においても大腸癌を含む癌モデルで抗腫瘍作用を示し、切除不能大腸癌既治療例を対象に第1相試験が行われ、認容可能な毒性と74%の病勢制御割合を認めた。今回、レゴラフェニブの有用性と安全性を検証する第3相試験(CORRECT試験)を行った。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
プラセボ群を対照としてレゴラフェニブ群が全生存期間を33.3%延長する(ハザード比0.75)ことを検証するため、片側α=0.025、検出力90%と設定したところ、582イベント、690例の登録が必要とされた。試験結果:
- 2010年4月から2011年3月の間に、16ヵ国114施設から760例が登録され、505例がレゴラフェニブ群に、255例がプラセボ群に割り付けられた(ITT)。
有効性解析対象:レゴラフェニブ群 505例、プラセボ群 255例
安全性解析対象:レゴラフェニブ群 500例、プラセボ群 253例 - データカットオフは2011年7月21日であった。
- 患者背景に大きな隔たりは無かったが、KRAS変異型症例の割合はレゴラフェニブ群で少なかった(54% vs 62%)。
- 全例が抗VEGF抗体薬による治療歴を有した。
- レゴラフェニブ群の76%で用量調整が必要となった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
中央値 | 四分位範囲 | HR 0.77 (95%C.I. 0.64-0.94) p=0.0052 |
|
レゴラフェニブ(n=505) | 6.4ヶ月 | 3.6-11.8 | |
プラセボ(n=255) | 5.0ヶ月 | 2.8-10.4 |
2. 無増悪生存期間
中央値 | 四分位範囲 | HR 0.49 (95%C.I. 0.42-0.58) p<0.0001 |
|
レゴラフェニブ(n=505) | 1.9ヶ月 | 1.6-3.9 | |
プラセボ(n=255) | 1.7ヶ月 | 1.4-1.9 |
3. 奏効割合
奏効割合 | p=0.19 | |
レゴラフェニブ(n=505) | 1.0%(PR 5例) | |
プラセボ(n=255) | 0.4%(PR 1例) |
4. 病勢制御割合
病勢制御割合 | P<0.0001 | |
レゴラフェニブ | 41% | |
プラセボ | 15% |
5. 有害事象(CTCAE ver.3.0)
レゴラフェニブ (n=500) | プラセボ (n=253) | |||||
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全Grade | Grade 3 | Grade 4 | 全Grade | Grade 3 | Grade 4 | |
疲労 | 237 (47%) | 46 (9%) | 2 (<1%) | 71 (28%) | 12 (5%) | 1 (<1%) |
手足症候群 | 233 (47%) | 83 (17%) | 0 | 19 (8%) | 1 (<1%) | 0 |
下痢 | 169 (34%) | 35 (7%) | 1 (<1%) | 21 (8%) | 2 (1%) | 0 |
食欲不振 | 152 (30%) | 16 (3%) | 0 | 39 (15%) | 7 (3%) | 0 |
高血圧 | 139 (28%) | 36 (7%) | 0 | 15 (6%) | 2 (1%) | 0 |
発疹/落屑 | 130 (26%) | 29 (6%) | 0 | 10 (4%) | 0 | 0 |
結語
すべての標準治療に不応となった切除不能大腸癌患者においてレゴラフェニブはプラセボと比較して全生存期間の延長を示した。毒性も管理可能であり、本薬剤は遠隔転移を有する大腸癌の後方治療の標準治療になり得るものと思われる。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 伏木 邦博 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生