大腸癌 EAGLE

FOLFIRI plus bevacizumab as second-line therapy in patients with metastatic colorectal cancer after first-line bevacizumab plus oxaliplatin-based therapy: the randomized phase III EAGLE study

Iwamoto S, Takahashi T, Tamagawa H, et al. Annals of Oncology 26: 1427–1433, 2015. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
大腸癌 二次治療 第3相 PFS 国内 あり

試験名 :EAGLE

レジメン:FOLFIRI+ベバシズマブ(5mg/kg) vs FOLFIRI+ベバシズマブ(10mg/kg)

登録期間:2009年9月〜2012年1月

背景

切除不能大腸癌に対してはFOLFOX療法(5-FU/LV+オキサリプラチン)やFOLFIRI療法(5-FU/LV+イリノテカン)に血管新生阻害剤であるベバシズマブ(BEV)や抗EGFR抗体を加えた化学療法が標準治療として確立している。二次治療を対象としたE3200試験1)ではBEVは10mg/kgで投与されており、同用量で生存期間を延長した。その一方で一次治療の臨床試験2,3)におけるBEVの用量は5mg/kgとなっており、最適なBEVの用量は明らかでない。さらにBEVの抗腫瘍効果は用量との関連が示唆されている。今回、一次治療でオキサリプラチンベース+BEV併用療法に不応不耐となった症例に対する、二次治療のFOLFIRIにおけるBEV併用の10mg/kgと5mg/kgとの有効性と安全性を比較検証するための第3相試験(EAGLE試験)を実施した。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:無増悪生存期間

無増悪生存期間中央値がBEV 5mg/kgの5.0ヶ月からBEV 10mg/kgで7.0ヶ月に延長(リスクが30%減少)することを、両側α=0.05、検出力90%で検証するために(登録期間2年、フォローアップ期間1年)、330イベント、358例の登録が必要となり、逸脱を考慮し370例の症例登録を予定した。

試験結果:

  • 2009年9月~2012年12月の期間で国内100施設より387例が登録され、このうち369例がFAS解析の対象となり、365例が安全性解析の対象となった。
  • データカットオフは2013年9月28日、観察期間中央値は394日(344―432日)であった。
  • 患者背景には大きな隔たりは認めなかった。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
  中央値 95%信頼区間 HR 0.95    
(95%CI 0.75-1.21)
p=0.676    
BEV 5mg/kg群 6.1 ヶ月 5.3-7.0
BEV 10mg/kg群 6.4 ヶ月 5.6-7.4
2. 治療成功期間
  中央値 95%信頼区間 HR 1.01    
(95%CI 0.81-1.25)
p=0.967    
BEV 5mg/kg群 5.2 ヶ月 4.5-5.8
BEV 10mg/kg群 5.2 ヶ月 4.5-5.7
3. 全生存期間
  中央値 95%信頼区間 HR 1.08    
(95%CI 0.75-1.57)
p=0.667    
BEV 5mg/kg群 16.3 ヶ月 14.1-21.2
BEV 10mg/kg群 17.0 ヶ月 14.6-19.1
  • 無増悪生存期間、治療成功期間、全生存期間のいずれも両群間で有意な差は認められなかった。
4. 有害事象
  BEV 5mg/kg群 (n=180) BEV 10mg/kg群 (n=185)
  All grades Grade ≥3 All grades Grade ≥3
  N % N % N % N %
白血球減少 121 67 27 15 114 62 32 17
好中球減少 120 67 87 48 118 64 77 42
貧血 119 66 4 2 118 64 7 4
血小板数減少 62 34 1 0.6 66 36 2 1
疲労 105 58 15 8 117 63 21 11
食思不振 112 62 11 6 119 64 10 5
悪心 91 51 9 5 97 52 8 4
嘔吐 35 19 5 3 48 26 7 4
下痢 71 39 6 3 80 43 3 2
口内炎 89 49 5 3 88 48 7 4
脱毛 71 39 0 0 81 44 0 0
高血圧 26 14 2 1 36 20 3 2
尿蛋白 71 39 2 1 69 37 1 0.5
消化管出血 9 5 1 0.6 6 3 0 0
鼻出血 29 16 0 0 41 22 1 0.5
動脈血栓症 1 0.6 1 0.6 2 1 2 1
静脈血栓症 2 1 2 1 3 2 2 1
消化管穿孔 1 0.6 1 0.6 1 0.5 1 0.5
  • 高血圧や尿蛋白、消化管出血なども含め、有害事象に差は認められなかった。
結語
二次治療でのFOLFIRIとの併用においてBEVを5mg/kgから10mg/kgへ増量しても無増悪生存期間は延長されなかった。二次治療でBEVを継続投与する際には5mg/kgが適切な用量と考えられる。
関連論文
1) Giantonio BJ, Catalano PJ, Meropol NJ et al. Bevacizumab in combination with oxaliplatin, fluorouracil, and leucovorin (FOLFOX4) for previously treated metastatic colorectal cancer: results from the Eastern Cooperative Oncology Group Study E3200. J Clin Oncol 2007; 25: 1539–1544. [Pubmed]
2) Hurwitz H, Fehrenbacher L, Novotny W et al. Bevacizumab plus irinotecan, fluorouracil, and leucovorin for metastatic colorectal cancer. N Engl J Med 2004; 350: 2335–2342. [Pubmed]
3) Saltz LB, Clarke S, Díaz-Rubio E et al. Bevacizumab in combination with oxaliplatin-based chemotherapy as first-line therapy in metastatic colorectal cancer: a randomized phase III study. J Clin Oncol 2008; 26: 2013–2019. [Pubmed]
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 古田 光寛 先生
監修:愛知県がんセンター病院 薬物療法部 医長 坂東 英明 先生

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