大腸癌 KEYNOTE-164

Phase II Open-Label Study of Pembrolizumab in Treatment-Refractory, Microsatellite Instability-High/Mismatch Repair-Deficient Metastatic Colorectal Cancer: KEYNOTE-164

Le DT, Kim TW, Van Cutsem E, et al. J Clin Oncol. 2020 Jan 1;38(1):11-19 [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
MSI-H/dMMR大腸癌 二次治療以降 第2相 奏効割合 国際 あり

試験名 :KEYNOTE-164

レジメン:ペムブロリズマブ

登録期間:2015年9月14日〜2017年9月12日

背景

DNAミスマッチ修復機能の欠損(deficiencies in DNA mismatch repair: dMMR)に起因する高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の遺伝的特徴を有するステージIV大腸癌の頻度は約5%である。ミスマッチ修復機能が正常な(proficient mismatch repair: pMMR)大腸癌やマイクロサテライト不安定性のない(Microsatellite stable: MSS)大腸癌に比較して、MSI-H/dMMR大腸癌は従来の化学療法に抵抗性であり、治療成績は不良である。
78例のMSI-H/dMMR固形癌を対象にした初期の臨床試験において、ペムブロリズマブ(Pembro)の有効性が報告されている(奏効割合は大腸癌で52%、非大腸癌で54%)1)。また、CheckMate142試験ではMSI-H/dMMR大腸癌に対するニボルマブ単独およびニボルマブ/イピリムマブ併用療法の有効性が示された(奏効割合は31%と55%、12カ月全生存割合は73%と85%)2)。本試験では2レジメン以上(コホートA)または1レジメン以上(コホートB)の前治療歴を有するMSI-H/dMMR大腸癌を対象として、Pembroの抗腫瘍効果を検討した。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:奏効割合 (中央判定:RECIST v1.1)

コホートAとBは独立して評価された。
コホートAでは、客観的奏効割合(中央判定:RECIST v1.1)において、60例のサンプルサイズでPembroによる真の奏効割合を35%と想定し、Pembroの奏効割合を15%とする帰無仮説を検出力93%、片側α=0.025で棄却するように算出し、観察される奏効割合の下限が26.7%以上で統計学的に有意とした。
コホートBでは、60例のサンプルサイズで少なくとも19例の奏効例が観察されることを想定し、95%信頼区間の下限を20%と設定した。

試験結果:

  • 2015年9月14日から2017年9月12日にかけて7か国、128施設からコホートA(2レジメン以上の前治療歴あり)に61症例、コホートB(1レジメン以上の前治療歴あり)に63症例が登録された。
  • 観察期間中央値はコホートAで31.3ヶ月(範囲:0.2-35.6か月)、コホートBで24.2ヶ月(範囲:0.1-27.1か月)だった。
  • 各コホートの患者背景はStageIV MSI-H/dMMR患者の特徴と一致していた。
  • 遠隔臓器転移を有する症例は、コホートAで61例(全例)、コホートBで59例(94%)。
  • 3レジメン以上の前治療歴を有する症例は、コホートAで27例(44%)、コホートBで19例(30%)。
  • 2018年9月4日のデータカットオフ時点で、コホートAは全例で治療中止となっており、コホートBでは10例(16%)が治療継続中であった。
1. 客観的奏効割合(主要評価項目)
  コホートA (n=61) コホートB (n=63)
  No. (%) [95%信頼区間] No. (%) [95%信頼区間]
奏効割合 20 (33) [21-46] 21 (33) [22-46]
 CR 2 (3) [0-11] 5 (8) [3-18]
 PR 18 (30) [19-43] 16 (25) [15-38]
 SD 11 (18) [9-30] 15 (24) [14-36]
 PD 28 (46) [33-59] 25 (40) [28-53]
 NE 2 (3) [0-11] 2 (3) [0-11]
病勢制御割合 31 (51) [38-64] 36 (57) [44-70]
奏効までの期間中央値;ヶ月(範囲) 4.3 (1.8-24.9) 3.9 (1.8-12.5)
奏効期間中央値;ヶ月(範囲) 未到達 (6.2-31.3+) 未到達 (4.4-23.6+)

(+, 最終解析にてPDが観察されなかった症例)

  • コホートAでは、奏効が確認された85%の症例は解析時点で奏効状態が維持されており、95%の症例は奏効期間が12ヶ月以上だった。
  • コホートBでは、奏効が観察された76%の症例は解析時点でも奏効状態が維持されており、95%の症例は奏効期間が12ヶ月以上だった。
  • コホートAの34例(56%)とコホートBの39例(62%)は標的病変の腫瘍径がベースラインよりも縮小した。
2. 無増悪生存期間
  中央値 95%信頼区間 12ヶ月生存割合 24ヶ月生存割合
コホートA 2.3ヶ月 2.1-8.1 34% 31%
コホートB 4.1ヶ月 2.1-18.9 41% 37%
3. 全生存期間
  中央値 95%信頼区間 12ヶ月生存割合 24ヶ月生存割合
コホートA 31.4ヶ月 21.4-未到達 72% 55%
コホートB 未到達 19.2-未到達 76% 63%
4. 前治療レジメン数毎の奏効割合
前治療レジメン数 コホートA (n=61) No./total (%) コホートB (n=63) No./total (%)
 1注) 2/6 (33) 7/24 (29)
 2 11/28 (39) 9/20 (45)
 ≥3 7/27 (26) 5/19 (26)

注)術後補助化学療法歴を有する進行癌症例は前治療レジメン数1と定義した。

  • 先行する前治療レジメン数に関わらずベースラインからの標的病変の縮小効果が確認された。
5. 遺伝子変異毎の奏効割合
BRAF/RAS遺伝子のstatus コホートA (n=61) No./total No. (%) コホートB (n=63) No. /total No. (%)
BRAF野生型 9/28 (32) 13/29 (45)
BRAF変異 5/9 (55) 1/5 (20)
BRA未確定 6/24 (25) 7/29 (24)
RAS野生型 8/19 (42) 7/16 (44)
RAS変異型 7/19 (37) 9/25 (36)
RAS未確定 5/23 (22) 5/22 (23)
  • BRAF変異またはRAS変異を有する症例をコホートAで46%、コホートBで49%に認めた。
6. 有害事象
  コホートA (n=61) No. (%) コホートB (n=63) No. (%)
治療関連有害事象    
 全Grade 38 (62) 44 (70)
 Grade 3-4 10 (16) 8 (13)
 治療中止に至った症例注1) 2 (3) 2 (3)
 治療関連死 0 (0) 0 (0)
10%以上の頻度の有害事象 全Grade Grade 3-4 全Grade Grade 3-4
 関節痛 10 (16) 1 (2) 7 (11) 0 (0)
 悪心 10 (16) 0 (0) 5 (8) 0 (0)
 下痢 8 (13) 0 (0) 7 (11) 0 (0)
 無力症 8 (13) 1 (2) 2 (3) 0 (0)
 掻痒感 8 (13) 0 (0) 5 (8) 0 (0)
 倦怠感 6 (10) 2 (3) 11 (17) 0 (0)
 甲状腺機能低下 3 (5) 0 (0) 11 (17) 0 (0)
 甲状腺機能亢進 2 (3) 0 (0) 7 (11) 0 (0)
免疫関連有害事象とinfusion reaction    
 全Grade 13 (21) 23 (37)
 Grade 3-4 4 (7) 2 (3)
 治療中止に至った症例注2) 1 (2) 2 (3)
 治療関連死 0 (0) 0 (0)
全事象 全Grade Grade 3-4 全Grade Grade 3-4
 甲状腺機能低下 6 (10) 0 (0) 13 (21) 0 (0)
 甲状腺機能亢進 3 (5) 0 (0) 7 (11) 0 (0)
 膵炎 3 (5) 2 (3) 0 (0) 0 (0)
 大腸炎 1 (2) 0 (0) 1 (2) 1 (2)
 肝炎 1 (2) 1 (2) 0 (0) 0 (0)
 筋炎 1 (2) 0 (0) 1 (2) 0 (0)
 肺炎 3 (5) 1 (2) 3 (5) 1 (2)
 重篤な皮膚毒性 1 (2) 1 (2) 0 (0) 0 (0)
 Infusion reaction 1 (2) 0 (0) 1 (2) 0 (0)

注1)コホートAでALT高値の1例と肺炎の1例、コホートBで肺炎の2例
注2)コホートAで肺炎の1例、コホートBで肺炎の2例

結語
前治療歴を有するMSI-H/dMMR切除不能大腸癌に対するPembro単剤療法は、持続的な臨床効果を示した。Pembro単剤療法は同症例に対する重要な治療選択肢となる。
関連論文
1) Le DT, et al, Mismatch repair deficiency predicts response of solid tumors to PD-1 blockade, Science 2017;357:409-413. [Pubmed]
2) Overman MJ, et al, Nivolumab in patients with metastatic DNA mismatch repair-deficient or microsatellite instability-high colorectal cancer (CheckMate 142): An open-label, multicentre, phase 2 study, Lancet Oncol 2017;18:1182-1191. [Pubmed]
執筆:九州がんセンター 消化管外科 中島 雄一郎 先生
監修:関西医科大学付属病院 がんセンター 学長特命准教授 佐竹 悠良 先生

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