対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
大腸癌 | 二次治療 | 第2相 | 4ヶ月無増悪生存割合 | 海外(フランス) | なし |
試験名 :PRODIGE18
レジメン:化学療法+ベバシズマブ vs 化学療法+セツキシマブ
登録期間:2020年12月14日〜2015年5月5日
背景
KRAS野生型切除不能大腸癌に対するベバシズマブ(BEV)併用療法不応後の二次治療として、BEV継続使用およびセツキシマブ(CET)併用化学療法はともに標準治療である。今回両治療の有効性を評価するため、無作為化第2相試験が計画された。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:4ヶ月無増悪生存割合
本試験は非比較第2相試験として計画された。Simonの二段階デザインを用い、それぞれの群において4ヶ月無増悪生存割合の閾値を30%、期待値を50%、片側α=0.05、検出力80%とし、10%の脱落を見込み、試験全体として必要症例数は132例と算出された。前半パートで両群ともに20例中7例以上で4ヶ月無増悪生存が得られた場合、後半パートに進む事とされた。試験結果:
- 133例が登録されたが、1例は病勢進行により治療されず132例が解析対象となった。
- 患者背景は両群で偏りはなく、一次治療は62.1%がFOLFIRIを37.9%がFOLFOXをベースに使用されていた。
- 101例が登録された後、プロトコールが改訂され、KRAS exon2以外にも、KRAS exon3,4、NRAS exon2,3,4も野生型であることが適格基準に加えられた。
- 95例でKRAS、NRAS、BRAF のバイオマーカー解析が行われた。
- 観察期間の中央値は37.4ヶ月であった。
1. 4ヶ月無増悪生存割合 (主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | |
化学療法+BEV群 | 80.3% | 68.0-88.3 |
化学療法+CET群 | 66.7% | 53.6-76.8 |
2. 無増悪生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR (95%信頼区間) 0.71 (0.50-1.02) p=0.06 |
|
化学療法+BEV群 | 7.1ヶ月 | 5.7-8.2 | |
化学療法+CET群 | 5.6ヶ月 | 4.2-6.5 |
3. 全生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR (95%信頼区間) 0.69 (0.46-1.04) p=0.08 |
|
化学療法+BEV群 | 15.8ヶ月 | 9.5-22.3 | |
化学療法+CET群 | 10.4ヶ月 | 7.0-16.2 |
4. 奏効割合
奏効割合 | 95%信頼区間 | |
化学療法+BEV群 | 24.6% | 14.1-35.1 |
化学療法+CET群 | 31.8% | 20.3-43.2 |
5. 有害事象
化学療法+BEV群 (n=65) | 化学療法+CET群 (n=67) | |||
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Any Grade | Grade 3/4 | Any Grade | Grade 3/4 | |
貧血 | 66.1% | 4.6% | 68.6% | 13.4% |
好中球数減少 | 61.5% | 18.5% | 52.2% | 14.9% |
血小板数減少 | 61.5% | 0 | 44.8% | 3.0% |
発熱性好中球減少症 | 4.6% | 4.6% | 0 | 0 |
皮膚障害 | 38.5% | 0 | 85.1% | 19.4% |
悪心 | 58.5% | 4.6% | 37.3% | 1.5% |
嘔吐 | 23.1% | 1.5% | 20.9% | 3.0% |
食欲不振 | 32.3% | 4.6% | 32.8% | 1.5% |
疲労 | 83.1% | 10.8% | 74.6% | 10.4% |
口内炎 | 29.2% | 1.5% | 35.8% | 7.5% |
爪周囲炎 | - | - | 19.4% | 4.5% |
下痢 | 64.6% | 7.7% | 37.3% | 8.9% |
末梢神経障害 | 40.0% | 3.1% | 40.3% | 4.5% |
鼻出血 | 18.5% | 0 | 7.5% | 0 |
血栓イベント | 1.5% | 1.5% | 1.5% | 1.5% |
- Grade3,4の有害事象は化学療法+BEV群で80.0%、化学療法+CET群で85.7%に認めた。
- 有害事象により化学療法+BEV群の4.6%、化学療法+CET群の9.0%で治療が中止となった。
- 有害事象により6.2%の症例でBEVの投与が中止され、25.4%の症例でCETの投与が中止となった。
6. サブ解析
無増悪生存期間 | 中央値 | 95%信頼区間 |
---|---|---|
KRAS、NRAS 野生型 化学療法+BEV群 | 7.8ヶ月 | 5.8-8.5 |
KRAS、NRAS 野生型 化学療法+CET群 | 5.6ヶ月 | 3.5-7.1 |
KRAS、NRAS、BRAF 野生型 化学療法+BEV群 | 8.2ヶ月 | 6.6-8.6 |
KRAS、NRAS、BRAF 野生型 化学療法+CET群 | 5.7ヶ月 | 4.1-7.1 |
全生存期間 | 中央値 | 95%信頼区間 |
---|---|---|
KRAS、NRAS 野生型 化学療法+BEV群 | 21.0ヶ月 | 10.0-28.2 |
KRAS、NRAS 野生型 化学療法+CET群 | 10.7ヶ月 | 6.8-22.4 |
KRAS、NRAS、BRAF 野生型 化学療法+BEV群 | 21.1ヶ月 | 12.3-35.1 |
KRAS、NRAS、BRAF 野生型 化学療法+CET群 | 12.6ヶ月 | 6.8-22.5 |
結語
BEV併用化学療法に不応となったKRAS 野生型の進行大腸癌に対する二次治療において、BEV併用化学療法はCET併用化学療法と比較して予後良好な傾向であったが、統計学的有意差は認めなかった。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 副医長 伏木 邦博 先生
監修:愛知県がんセンター病院 薬物療法部 医長 坂東 英明 先生
監修:愛知県がんセンター病院 薬物療法部 医長 坂東 英明 先生