対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
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大腸癌 | 三次治療以降 | 第3相 | 全生存期間 | 国際 | あり |
試験名 :RECOURSE
レジメン:TAS-102 vs プラセボ
登録期間:2012年6月〜2013年10月
背景
TAS-102はtrifluridineとtipiracil hydrochloride を配合した経口抗悪性腫瘍薬である。前臨床研究にてフルオロウラシルに抵抗性を示す細胞に対してもTAS-102は抗腫瘍効果を有することが示されている。日本で実施されたプラセボ対照二重盲検比較第2相試験でTAS-102は既治療例の遠隔転移を伴う大腸癌で生存期間中央値9.0ヶ月と良好な成績を示した。そこで今回TAS-102の有用性と安全性のさらなる評価の為に国際共同プラセボ対照二重盲検比較第3相試験(RECOURSE試験)を実施した。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)とした。プラセボ群を対照としてTAS-102群のOSハザード比が0.75を下回る事を検証するよう設計され、片側α=0.025、検出力 90%の設定で、571イベント、800例の登録が必要とされた。試験結果:
- 2012年6月から2013年10月の間に800例が登録された。
- 患者背景に大きな隔たりは無かった。
- 前治療として、レゴラフェニブがTAS-102群の17%、プラセボ群の20%に使用されていた。
- 計画された用量を服用できたのは、 TAS-102群で89%、プラセボ群で94%であった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.68 (95%C.I. 0.58-0.81) P<0.001 |
|
TAS-102(n=534) | 7.1ヶ月 | 6.5-7.8 | |
プラセボ(n=266) | 5.3ヶ月 | 4.6-6.0 |
2. 無増悪生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.48 (95%C.I. 0.41-0.57) P<0.001 |
|
TAS-102(n=534) | 2.0ヶ月 | 1.9-2.1 | |
プラセボ(n=266) | 1.7ヶ月 | 1.7-1.8 |
3. 奏効割合
奏効割合 | p=0.29 | |
TAS-102(n=502) | 1.6%(PR 8例) | |
プラセボ(n=258) | 0.4%(CR 1例) |
4. 病勢制御割合
病勢制御割合 | P<0.001 | |
TAS-102(n=502) | 44% | |
プラセボ(n=258) | 16% |
5. ECOG PSが2以上に悪化するまでの期間
イベント | 中央値 | HR 0.66 (95%C.I. 0.56-0.78) P<0.001 |
|
TAS-102(n=534) | 383 (72%) | 5.7ヶ月 | |
プラセボ(n=266) | 216 (81%) | 4.0ヶ月 |
6. 有害事象(NCI-CTCAE ver.4.03)
TAS-102 (n=533) | プラセボ (n=265) | |||
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全Grade | Grade 3以上 | 全Grade | Grade 3以上 | |
好中球減少 | 353 (67%) | 200 (38%) | 2 (<1%) | 0 |
発熱性好中球減少 | 20 (4%) | 20 (4%) | 0 | 0 |
貧血 | 404 (77%) | 96 (18%) | 87 (33%) | 8 (3%) |
血小板数減少 | 223 (42%) | 27 (5%) | 21 (8%) | 1 (<1%) |
悪心 | 258 (48%) | 10 (2%) | 63 (24%) | 3 (1%) |
食欲不振 | 208 (39%) | 19 (4%) | 78 (29%) | 13 (5%) |
下痢 | 170 (32%) | 16 (3%) | 33 (12%) | 1 (<1%) |
結語
標準治療に抵抗性となった切除不能大腸癌患者において、TAS-102はプラセボと比較して有意に全生存期間の延長を示した。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 伏木 邦博 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生