対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
大腸癌 | 一次治療 | 第2相 | 6ヶ月無増悪生存割合 | 海外 (スペイン) |
なし |
試験名 :なし
レジメン:パニツムマブ
登録期間:2010年7月〜2012年7月
背景
切除不能大腸癌の化学療法において、高齢で“frail(脆弱)”な患者ではフッ化ピリミジン系単独療法が併用療法と比較して劣らないことが報告されており、一律的に併用療法を行うことは推奨されない。また抗EGFR抗体薬は毒性も少ないため、これらの患者に対して適していると考えられる。
本試験はKRAS野生型の“frail(脆弱)”な高齢者を対象として、一次治療におけるパニツムマブ単独療法の有効性・安全性を評価するために実施された。
本試験はKRAS野生型の“frail(脆弱)”な高齢者を対象として、一次治療におけるパニツムマブ単独療法の有効性・安全性を評価するために実施された。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:6ヶ月無増悪生存割合
本試験は、6ヶ月無増悪生存割合の期待値の推定を30%、95%信頼区間が14.7-49.4%として設計され、30例が必要とされた。試験結果:
- 2010年7月から2012年7月までに33例が登録され、観察期間中央値は7.1ヶ月(0.4-28.3ヶ月)であった。
- 年齢中央値は81歳で、85歳以上が5例(15.1%)含まれていた。
- PS 0は9.1%、PS 1が33.3%、PS 2が57.6%であった。
- 21例(63.6%)でRAS、PTEN、PIK3CA、BRAFなどの遺伝子検査を追加で行い、遺伝子変異別にサブグループ解析を行った。
1. 6ヶ月無増悪生存割合 (主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | |
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パニツムマブ単独(n=33) | 36.4% | 20.0 – 52.8% |
2. 無増悪生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | |
---|---|---|
パニツムマブ単独(n=33) | 4.3ヶ月 | 2.8 – 6.4ヶ月 |
3. 全生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | |
---|---|---|
パニツムマブ単独(n=33) | 7.1ヶ月 | 5.0 – 12.3ヶ月 |
4. 奏効割合
奏効割合 | |
---|---|
パニツムマブ単独(n=33) | 9.1% (PR 3例) |
・奏効までの期間は中央値3.1ヶ月(95%信頼区間: 2.6-8.8) であった。
5. 病勢制御割合
病勢制御割合 | |
---|---|
パニツムマブ単独(n=33) | 63.6%(PR 3例、SD 18例) |
6. 有害事象(NCI-CTCAE ver.3.0)
パニツムマブ単独(n=33) | ||
---|---|---|
全Grade | Grade 3 | |
皮疹(ざ瘡/ざ瘡様皮疹) | 24 (72.7%) | 5 (15.2%) |
疲労 | 16 (48.5%) | 1 (3.0%) |
低マグネシウム血症 | 16 (48.5%) | 1 (3.0%) |
皮膚乾燥 | 10 (30.3%) | 0 |
Grade 4、5の有害事象は認められなかった。
7. サブグループ解析: RAS野生型症例
6ヶ月無増悪生存割合 | 奏効割合 | 全生存期間 | |
---|---|---|---|
パニツムマブ単独RAS野生型(n=15) | 53.3% | 13.3% | 12.3ヶ月 |
結語
パニツムマブ単独療法は、併用療法の適応とならないRAS野生型切除不能大腸癌に対して有効であり、治療オプションの1つとなり得る。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 井上 博登 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生