大腸癌 TRICOLORE

S-1 and irinotecan plus bevacizumab versus mFOLFOX6 or CapeOX plus bevacizumab as first-line treatment in patients with metastatic colorectal cancer (TRICOLORE): a randomized, open-label, phase III, noninferiority trial

Yamada Y, Denda T, Gamoh M et al. Ann Oncol. 2018;29(3):624-631. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
大腸癌 一次治療 第3相 無増悪生存期間 国内 あり

試験名 :TRICOLORE

レジメン:S-1+IRI+Bev vs mFOLFOX6/CapeOX+Bev

登録期間:2012年6月〜2014年9月

背景

FOLFOX、CapeOXもしくはFOLFIRIとBevacizumab(Bev)との併用療法は切除不能大腸癌に対する一次治療として広く用いられている。オキサリプラチン(OX)レジメンは脱毛や消化器毒性がイリノテカン(IRI)レジメンより軽微であるが、OXによる末梢神経障害は長期にわたり持続するため、QOL悪化の原因となる。一次治療において、OXでは経口フッ化ピリミジンを用いたレジメンは確立されているが、IRIでは経口フッ化ピリミジンを用いたレジメンの有効性は確立していない。
切除不能大腸癌初回治療において、S-1+IRI+Bevの3週レジメン、4週レジメンそれぞれで第2相試験で有望な結果を示した。これらの結果をもとにmFOLFOX6/CapeOX+Bevに対するS-1+IRI+Bevの第3相試験(TRICOLORE試験)が行われた。 [UMIN-CTR (http://www.umin.ac.jp/ctr/) (000007834)]

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:無増悪生存期間

本試験は主要評価項目を無増悪生存期間(PFS)とした非劣性試験である。PFSの中央値をS-1+IRI+Bev群 12ヶ月、 mFOLFOX6/CapeOX+Bev群 11ヶ月(HR=0.917)、非劣性マージンを1.25、検出力85%、片側α=0.025と設定すると、450例の登録・374イベントが必要とされた。

試験結果:

  • 2012年6月〜2014年9月の間に487例が国内53施設から登録され、除外された3例を除く484例(S-1+IRI+Bev群241例、 mFOLFOX6/CapeOX+Bev群243例)が解析対象となった。
  • 両群の患者背景には偏りはなかった。
  • データカットオフ日は2016年4月30日。フォローアップ期間中央値は32.4ヶ月(range 1.5-46.6ヶ月)であった。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
  中央値 95%CI HR 0.84     
(95%C.I. 0.70-1.02)
p<0.0001:非劣性 
p=0.0815:優越性 
S-1+IRI+Bev(n=241) 14.0ヶ月 12.4-15.5
mFOLFOX6/CapeOX+Bev(n=243) 10.8ヶ月 9.6-11.6
2. 増悪までの期間
  中央値 95%CI HR 0.71     
(95%C.I. 0.59-0.85)
p=0.0002    
S-1+IRI+Bev(n=241) 9.6ヶ月 8.2-11.0
mFOLFOX6/CapeOX+Bev(n=243) 7.7ヶ月 7.1-8.2
3. 奏効割合
  奏効割合 p=0.34
S-1+IRI+Bev 66.4%
mFOLFOX6/CapeOX+Bev 70.6%
4. 全生存期間
  中央値 95%信頼区間 HR 0.86 (95%C.I. 0.66-1.13)
p=0.2841        
S-1+IRI+Bev 34.9ヶ月 31.9-42.4
mFOLFOX6/CapeOX+Bev 33.6ヶ月 29.8-40.1
5. QOL評価

治療開始前にQOL質問票の回答を得ていた436例(90.6%)で治療前後のQOLスコアの比較を行った。
FACT-C TOI score では、S-1+IRI+Bev群とmFOLFOX6/CapeOX+Bev群との間で有意差は認められなかったが、FACCT/GOG-Ntx scoreではS-1+IRI+Bev群の方が有意に良好であった(p<0.01)。

6. 有害事象(CTCAE ver.4.0)
  S-1+IRI+Bev(n=239) mFOLFOX6/CapeOX+Bev(n=242) P値
(Grade 3以上の比較)
  全Grade Grade 3以上 全Grade Grade 3以上  
白血球数減少 157 (65.7%) 21 (8.8%) 154 (63.6%) 6 (2.5%) <0.01
好中球数減少 150 (62.8%) 58 (24.3%) 139 (57.4%) 33 (13.6%) <0.01
血小板数減少 74 (31.0%) 2 (0.8%) 151 (62.4%) 4 (1.7%) 0.69
貧血 121 (50.6%) 12 (5.0%) 92 (38.0%) 5 (2.1%) 0.09
発熱性好中球減少 8 (3.3%) 8 (3.3%) 0 (0.0%) 0 (0.0%) <0.01
口内炎/粘膜炎 128 (53.6%) 7 (2.9%) 104 (43.0%) 4 (1.7%) 0.38
食欲不振 143 (59.8%) 16 (6.7%) 149 (61.6%) 16 (6.6%) 1.00
悪心 136 (56.9%) 8 (3.3%) 119 (49.2%) 9 (3.7%) 1.00
嘔吐 59 (24.7%) 5 (2.1%) 37 (15.3%) 4 (1.7%) 0.75
下痢 149 (62.3%) 32 (13.4%) 109 (45.0%) 16 (6.6%) 0.02
手足症候群 59 (24.7%) 2 (0.8) 125 (51.7%) 15 (6.2%) <0.01
末梢神経障感覚
ニューロパチー
47 (19.7%) 0 (0.0%) 223 (92.1%) 53 (21.9%) <0.01

Post hoc analysisでは、S-1+IRI+Bev群におけるGr≧3の下痢の頻度がCCr ≧70ml/minの患者で11.5%であったのに対しCCr<70ml/minでは19.6%に認められた。

結語
切除不能大腸癌に対する一次治療において、S-1+IRI+BevはmFOLFOX6/CapeOX+Bevに対するPFSにおける非劣性を証明した。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 古田 光寛 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生

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