大腸癌 (Tumor Location)

Prognostic and predictive value of primary tumour side in patients with RAS wild-type metastatic colorectal cancer treated with chemotherapy and EGFR directed antibodies in six randomized trials

Arnold D, et al. Ann Oncol. 2017 Aug 1;28(8):1713-1729. [PubMed]

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対象疾患 研究の相 主要評価項目 日本の参加
大腸癌 メタアナリシス Tumor Locationの治療効果/予後予測因子としての意義 なし

試験名 :(Tumor Location)

背景

切除不能大腸癌は, 個々に分子生物学的に異なる背景を持つ不均一な疾患であることが明らかとなってきた。また, 原発腫瘍が右側結腸か, あるいは左側結腸/直腸に位置するか(Tumor Location)により予後に差があることが示唆されてきた。さらに, KRASRAS)野生型の切除不能大腸癌に対する過去の検討では, Tumor Locationが分子標的薬の治療効果予測因子, 及び予後予測因子となり得る可能性が指摘されていた。 RAS野生型切除不能大腸癌におけるTumor Locationが, 予後, 及び治療効果に与える影響について明らかにするため, 過去に行われた6つのランダム化比較試験のメタアナリシスが行われた。

シェーマ

統計学的事項

過去に行われた6つのランダム化比較試験それぞれから, ハザード比(HR),オッズ比(OR)をプーリングし, 左側原発, 及び右側原発の患者の全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)のHRと95%信頼区間(CI), および客観的奏効率(ORR)のORを推定した。 治療効果予測については, 各試験での治療効果とTumor Locationの交互作用を統合することによって評価した。HR, ORのプール解析は, 固定効果モデルを使用し, 層別化Cox比例ハザードモデルとロジスティック回帰モデルにそれぞれ対応する2段階分析に基づいて実施した。試験間の異質性は、コクラン検定(P <0.10)およびI2を使用して検定した。治療効果予測に関する解析では、Cox比例ハザードおよびロジスティック回帰モデルを使用して、左側原発と右側原発のHR及びORの違いを評価した。

試験結果:

1. 予後予測因子としてのTumor Location
  • 右側原発例は左側原発例に比し, 治療内容によらずOS, PFS, ORRのいずれも有意に不良であった。
  • 試験間のheterogeneityはなかった。
OS N(死亡/全症例) HR 95%信頼区間 P
右側原発 左側原発
化学療法+抗EGFR抗体薬群 194/234 591/844 2.03 1.69-2.42 P<0.001
化学療法±BEV群 230/281 629/800 1.38 1.17-1.63 P<0.001

異質性検定
化学療法+抗EGFR抗体薬群:P=0.46, I2=0% 化学療法±ベバシズマブ(BEV)群:P=0.34, I2=12%

PFS N(イベント/全症例) HR 95%信頼区間 P
右側原発 左側原発
化学療法+抗EGFR抗体薬群 NA/234 NA/844 1.59 1.34-1.88 P<0.001
化学療法±BEV群 NA/281 NA/800 1.25 1.06-1.47 P<0.001

異質性検定
化学療法+抗EGFR抗体薬群:P=0.58, I2=0% 化学療法±BEV群:P=0.71, I2=0%

ORR N(奏効例/全症例) OR 95%信頼区間 P
右側原発 左側原発
化学療法+抗EGFR抗体薬群 552/840 98/232 0.38 0.28-0.50 P<0.001
化学療法±BEV群 368/793 97/277 0.56 0.43-0.73 P<0.001

異質性検定
化学療法+抗EGFR抗体薬群:P=0.08, I2=48% 化学療法±BEV群:P=0.71, I2=0%

2. 効果予測因子としてのTumor Location

OS

  • 化学療法±BEV群と比較した,化学療法+抗EGFR抗体薬群のOSは, 右側原発, 左側原発で有意に異なっていた。(HR 1.50 [95%CI:1.19-1.88], P value for interaction<0.001)
  • 左側原発では,化学療法±BEV群に比して化学療法+抗EGFR抗体薬群で有意なOSの延長を認めたが, 右側原発では認めなかった。
OS N(死亡/全症例) HR 95%信頼区間 P
化学療法+抗EGFR抗体薬群
(experimental arm)
化学療法±BEV群
(control arm)
左側原発 591/844 629/800 0.75 0.67-0.84 P<0.001
右側原発 194/234 230/281 1.12 0.87-1.45 P=0.381

PFS

  • 化学療法±BEV群と比較した,化学療法+抗EGFR抗体薬群のPFSは, 右側原発, 左側原発で有意に異なっていた。(HR 1.43 [95%CI:1.14-1.80], P value for interaction=0.002)
  • 左側原発では,化学療法±BEV群に比して化学療法+抗EGFR抗体薬群で有意なPFSの延長を認めたが, 右側原発では認めなかった
PFS N(イベント/全症例) HR 95%信頼区間 P
化学療法+抗EGFR抗体薬群
(experimental arm)
化学療法±BEV群
(control arm)
左側原発 NA/844 NA/800 0.78 0.70-0.87 P<0.001
右側原発 NA/234 NA/281 1.12 0.87-1.44 P=0.365

ORR

  • 化学療法±BEV群と比較した,化学療法+抗EGFR抗体薬群のORRは, 右側原発, 左側原発で異なる傾向にあった。(OR 0.69 [95%CI:0.46-1.04], P value for interaction=0.07)
  • 左側原発では, 右側原発よりも化学療法+抗EGFR抗体薬群でより高いORRを認めた。
ORR N(奏効例/全症例) OR 95%信頼区間 P
化学療法+抗EGFR抗体薬群
(experimental arm)
化学療法±BEV群
(control arm)
左側原発 368/793 552/840 2.12 1.77-2.55 P<0.001
右側原発 97/277 98/232 1.47 0.94-2.29 P=0.089
結語
RAS野生型切除不能大腸癌患者において, 左側結腸原発の症例よりも, 右側結腸原発の症例でOS, PFS, ORRが不良であることが示された。また, 化学療法+抗EGFR抗体薬の治療効果は,左側結腸原発の症例では化学療法±BEVよりも高くなる一方, 右側結腸原発症例では効果に乏しいことが示唆された。過去に実施された試験対象者の一部を抽出した後方視的検討であるため結果の解釈には注意を要するが, 今後のランダム化比較試験においては, 分子生物学的背景とともに, Tumor Locationも層別化因子として考慮する必要がある。
執筆:北海道大学病院 消化器内科 特任助教 原田 一顕 先生
監修:愛知県がんセンター病院 薬物療法部 医長 坂東 英明 先生

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