対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
大腸癌 | 二次治療 | 第2相 | 全生存期間 | 国内 | あり |
試験名 :WJOG 6210G
レジメン:FOLFIRI+ベバシズマブ vs FOLFIRI+パニツムマブ
登録期間:2011年4月〜2014年2月
背景
抗VEGF抗体薬と抗EGFR抗体薬は、ともにFOLFOX/FOLFIRIとの併用で切除不能大腸癌の一次・二次治療に用いられるが、適切な治療シークエンスは定まっていない。本試験(WJOG 6210G)は、KRAS exon2野生型症例の二次治療において、FOLFIRI+ベバシズマブとFOLFIRI+パニツムマブを比較するために計画された。また治療選択におけるバイオマーカーの同定が望まれているが、腫瘍組織標本からの繰り返しの採取は困難である。本試験では繰り返し採取可能な血中循環腫瘍DNA(ctDNA)や血清バイオマーカー別のサブグループ解析も同時に行った。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
本試験は当初、FOLFIRI+ベバシズマブのFOLFIRI+パニツムマブに対する有用性を検討する目的に設計されたが、本試験開始後に発表されたいくつかの無作為化試験の結果を受け、両群の全生存期間(OS)が同程度であることを検討するよう変更を行った。両群のOSが同程度(ハザード比:1.0)であることを期待して、70%以上の確率でハザード比の点推定地が0.80-1.25に含まれるためには、86イベント・120例が必要とされた。
試験結果:
- 2011年4月から2014年2月までに121例が登録されたが、各群2例ずつ不適格であったため、それら4例を除いた117例を解析対象集団とした(FOLFIRI+パニツムマブ群 59例、FOLFIRI+ベバシズマブ群 58例)。
- 2015年8月のデータカットオフ時点で、観察期間中央値はパニツムマブ群で15.4ヶ月、ベバシズマブ群で13.4ヶ月であった。
- 患者背景に偏りはなかった。
- 後治療を受けたのはパニツムマブ群で45例(76.3%)、ベバシズマブ群で46例(79.3%)であった。
抗EGFR抗体薬を使用したのはパニツムマブ群で39.0%、ベバシズマブ群で72.4%であった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95% CI | HR 1.16 (95%C.I. 0.76-1.77) |
|
FOLFIRI+パニツムマブ (n=59) | 16.2ヶ月 | 12.5-22.4 | |
FOLFIRI+ベバシズマブ(n=58) | 13.4ヶ月 | 11.1-18.6 |
2. 無増悪生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR 1.14 (95%C.I. 0.78-1.66) |
|
FOLFIRI+パニツムマブ (n=59) | 6.0ヶ月 | 5.0-7.5 | |
FOLFIRI+ベバシズマブ(n=58) | 5.9ヶ月 | 3.9-7.8 |
3. 奏効割合
奏効割合 | p<0.001 | |
FOLFIRI+パニツムマブ (n=59) | 46.2% | |
FOLFIRI+ベバシズマブ(n=58) | 5.7% |
4. Grade 3以上の有害事象 (CTCAE ver.4.0)
FOLFIRI+パニツムマブ (n=61) | FOLFIRI+ベバシズマブ(n=60) | |
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白血球減少症 | 11 (18.0%) | 17 (28.3%) |
好中球減少症 | 30 (49.2%) | 28 (46.7%) |
貧血 | 3 (4.9%) | 7 (11.7%) |
血小板減少症 | 1 (1.6%) | 3 (5.0%) |
発熱性好中球減少症 | 2 (3.3%) | 3 (5.0%) |
口内炎 | 13 (21.3%) | 4 (6.7%) |
ざ瘡様皮疹 | 10 (16.4%) | 0 |
低マグネシウム血症 | 7 (11.5%) | 0 |
5. サブグループ解析: ctDNAにおけるRAS/BRAF status別 全生存期間
RAS or BRAF変異型 (n=19) | RAS/BRAF野生型 (n=90) | |||||||
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n | 中央値 | 95%信頼区間 | ハザード比 | n | 中央値 | 95%信頼区間 | ハザード比 | |
FOLFIRI+パニツムマブ | 8 | 5.4ヶ月 | 3.6-7.1 | 0.42 (95%C.I. 0.15-1.12) |
46 | 18.9ヶ月 | 15.6-26.8 | 1.21 (95%C.I. 0.74-1.99) |
FOLFIRI+ベバシズマブ | 11 | 8.2ヶ月 | 6.0-13.7 | 44 | 16.1ヶ月 | 12.7-21.1 |
6. サブグループ解析: 血清VEGF-A別 全生存期間
VEGF-A低値 (n=54) | VEGF-A高値 (n=55) | |||||||
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n | 中央値 | 95%信頼区間 | ハザード比 | n | 中央値 | 95%信頼区間 | ハザード比 | |
FOLFIRI+パニツムマブ | 30 | 22.4ヶ月 | 16.2-29.3 | 1.92 (95%C.I. 0.98-3.76) |
24 | 10.7ヶ月 | 9.2-16.9 | 0.67 (95%C.I. 0.37-1.21) |
FOLFIRI+ベバシズマブ | 24 | 13.4ヶ月 | 11.1-20.1 | 31 | 13.7ヶ月 | 9.8-21.9 |
- 他の血清バイオマーカー(HGF、HER2、エピレグリンなど)で治療効果予測因子となりえるものはなかった。
結語
KRAS exon2野生型の切除不能大腸癌二次治療において、FOLFIRI+ベバシズマブとFOLFIRI+パニツムマブの治療効果は同程度であった。
またctDNAにおけるRAS/BRAF変異はパニツムマブのネガティブな効果予測因子であった。
VFGF-Aはベバシズマブと抗EGFR抗体を使い分けるバイオマーカーになり得るかもしれない。
またctDNAにおけるRAS/BRAF変異はパニツムマブのネガティブな効果予測因子であった。
VFGF-Aはベバシズマブと抗EGFR抗体を使い分けるバイオマーカーになり得るかもしれない。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 井上 博登 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生