大腸癌 WJOG4407G

Randomized phase III study of bevacizumab plus FOLFIRI and bevacizumab plus mFOLFOX6 as first-line treatment for patients with metastatic colorectal cancer (WJOG4407G).

Yamazaki K, Nagase M, Tamagawa H, et al. Ann Oncol. 2016; 27: 1539-46. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
大腸癌 一次治療 第3相 無増悪生存期間 国内 あり

試験名 :WJOG4407G

レジメン:FOLFIRI+BEV vs mFOLFOX6+BEV

登録期間:2008年9月〜2012年1月

背景

FOLFIRI(急速静注/持続静注5-FU/LV+イリノテカン)→ FOLFOX(急速静注/持続静注5-FU/LV+オキサリプラチン)の逐次治療とFOLFOX → FOLFIRIの逐次治療は、同程度の全生存期間であることが第3相試験(V308)で示されたことから、切除不能進行再発大腸癌に対する一次治療として両レジメンは同程度の抗腫瘍効果があると認識されている。
IFL(イリノテカン+急速静注5-FU/LV)に対するベバシズマブ(BEV)の併用は全生存期間における上乗せ効果が第3相試験(AVF2107g)で示された。またFOLFIRI+BEVは無増悪生存期間が10~12ヶ月と良好な成績が複数の第2相試験で報告され、さらにmodified IFL+BEVと比較して全生存期間を改善する可能性が第2相試験より示唆されていたが、一次治療としてFOLFIRIにおけるBEV併用の上乗せ効果は第3相試験で検証されていなかった。一方、オキサリプラチンベースの化学療法に関しては、FOLFOX/CAPOX(カペシタビン+オキサリプラチン)に対するBEV併用の無増悪生存期間における上乗せ効果が第3相試験(NO16966)で示された。
これらの結果より、FOLFOX/CAPOX+BEVとFOLFIRI+BEVを直接比較した第3相試験は実施されていないものの、いずれも一次治療における標準治療とみなされていた。
しかし両療法の毒性は、FOLFIRIの消化器毒性や脱毛症、FOLFOXのオキサリプラチン関連感覚性末梢神経障害といったようにプロファイルが異なる。また感覚性末梢神経障害は増悪前のオキサリプラチン中止に繋がり、中止後も長期間持続することから、これらの毒性プロファイルの違いがQoLに影響する可能性がある。

以上より、切除不能進行再発大腸癌に対する一次治療としてFOLFIRI+BEVのmFOLFOX6+BEVに対する無増悪生存期間における非劣性を検証するために第3相試験(WJOG4407G)を実施した。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:無増悪生存期間

mFOLFOX6+BEVを対照としてFOLFIRI+BEVの非劣性を検証。既報よりmFOLFOX6+BEV、FOLFIRI+BEVの無増悪生存期間中央値を各々10ヶ月、11ヶ月と推定し、非劣性マージンはHR 1.25、片側α=0.025、検出力=85%と設定。非劣性が検証された場合はmFOLFOX6+BEVに対するFOLFIRI+BEVの優越性も検証。必要イベント数は計323イベント、必要症例数は計400例。

試験結果:

  • 2008年9月〜2012年1月の間に43施設より402例が登録された(FOLFIRI+BEV群 202例、mFOLFOX6+BEV群 200例)。
  • FOLFIRI+BEV群 5例、mFOLFOX6+BEV群 2例は無作為化後に選択基準を満たさないことが判明し、主解析からは除外された。
  • 患者背景は両群に大きな隔たりはなかった。
  • 無増悪生存期間の主解析のデータカットオフは2013年7月6日で、観察期間中央値はFOLFIRI+BEV群 29.3ヶ月、mFOLFOX6+BEV群 32.6ヶ月で、312イベントが観察された。
  • 全生存期間の最終解析は観察期間中央値がFOLFIRI+BEV群 51.9ヶ月、mFOLFOX6+BEV群 50.8ヶ月の時点で実施され、死亡は各々142例(72.1%)、146例(73.3%)に認められた。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
中央値 95%信頼区間 HR 0.905 (95%C.I. 0.723-1.133)
P = 0.003(非劣性)     
P = 0.427(優越性)     
FOLFIRI+BEV 12.1ヶ月 11.0-13.8
mFOLFOX6+BEV 10.7ヶ月 9.9-12.1
2. 全生存期間
中央値 95%信頼区間 HR 0.990 (95%C.I. 0.785-1.249)
P = 0.730(優越性)     
FOLFIRI+BEV 31.4ヶ月 27.6-36.4
mFOLFOX6+BEV 30.1ヶ月 26.8-35.5
3. 最良総合奏効割合(best overall response rate)
割合 P = 0.757
FOLFIRI+BEV 64%
mFOLFOX6+BEV 62%
4. 転移巣切除
切除例数 P = 0.736
FOLFIRI+BEV 20 (10%)
mFOLFOX6+BEV 18 (9%)
5. 治療中止理由
FOLFIRI+BEV
(n= 182)
mFOLFOX6+BEV
(n=192)
増悪 52% 45%
有害事象 27% 33%
切除可能となり手術を企図 12% 10%
患者または主治医判断 9% 11%
6. 治療サイクル数
中央値 範囲
FOLFIRI+BEV 15.0 1-63
mFOLFOX6+BEV 12.5 1-70
7. 治療成功期間(治療中または治療終了後、増悪なく生存)
中央値
FOLFIRI+BEV 8.5ヶ月
mFOLFOX6+BEV 7.3ヶ月
8. 薬剤中止までの期間
中央値
イリノテカン 8.5ヶ月
オキサリプラチン 5.1ヶ月
BEV(FOLFIRI+BEV群) 7.4ヶ月
BEV(mFOLFOX6+BEV群) 6.4ヶ月
9. 二次治療移行
FOLFIRI+BEV
(n=157)
mFOLFOX6+BEV
(n=168)
二次治療の薬剤 オキサリプラチン 63%
BEV 51%
抗EGFR抗体薬 29%
イリノテカン 62%
BEV 55%
抗EGFR抗体薬 30%
10. 有害事象(CTCAE ver.3.0)
FOLFIRI+BEV
(n=195)
mFOLFOX6+BEV
(n=198)
P
(Grade 3以上)
Grade 1 2 3 4 1 2 3 4
白血球減少 49 (25%) 86 (44%) 20 (10%) 2 (1%) 70 (35%) 68 (34%) 9 (5%) 0 (0%) 0.014
好中球減少 22 (11%) 61 (31%) 59 (30%) 30 (15%) 34 (17%) 54 (27%) 56 (28%) 14 (7%) 0.031
血小板減少 6 (3%) 0 (0%) 1 (1%) 0 (0%) 17 (9%) 16 (8%) 1 (1%) 0 (0%) 1.00
貧血 31 (16%) 34 (17%) 7(4%) 1 (1%) 38 (19%) 23 (12%) 5 (3%) 0 (0%) 0.411
食思不振 65 (33%) 62 (32%) 16 (8%) 0 (0%) 89 (45%) 44 (22%) 10 (5%) 1 (1%) 0.320
倦怠感 74 (38%) 61 (31%) 11 (6%) 0 (0%) 76 (38%) 58 (29%) 5 (3%) 1 (1%) 0.223
悪心 73 (37%) 57 (29%) 13 (7%) 0 (0%) 89 (45%) 31 (16%) 9 (5%) 0 (0%) 0.387
嘔吐 44 (23%) 29 (15%) 9 (5%) 0 (0%) 38 (19%) 10 (5%) 9 (5%) 0 (0%) 1.00
粘膜炎 64 (33%) 40 (21%) 5 (3%) 0 (0%) 86 (43%) 21 (11%) 5 (3%) 0 (0%) 1.00
下痢 63 (32%) 26 (13%) 17 (9%) 0 (0%) 42 (21%) 22 (11%) 10 (5%) 0 (0%) 0.166
手足症候群 38 (20%) 7 (4%) 1 (1%) 0 (0%) 37 (19%) 18 (9%) 5 (3%) 0 (0%) 0.215
アレルギー 2 (1%) 2 (1%) 0 (0%) 0 (0%) 14 (7%) 22 (11%) 0 (0%) 0 (0%) -
感覚ニューロパチー 39 (20%) 3 (2%) 0 (0%) 0 (0%) 67 (34%) 59 (30%) 43 (22%) 0 (0%) <0.001
発熱 29 (15%) 4 (2%) 2 (1%) 0 (0%) 37 (19%) 5 (3%) 1 (1%) 0 (0%) 0.620
発熱性好中球減少 - - 10 (5%) 0 (0%) - - 3 (2%) 0 (0%) 0.051
肺炎 2 (1%) 1 (1%) 0 (0%) 0 (0%) 2 (1%) 1 (1%) 1 (1%) 0 (0%) 1.00
腹痛 20 (10%) 12 (6%) 7 (4%) 1 (1%) 15 (8%) 15 (8%) 3 (2%) 0 (0%) 0.136
麻痺性イレウス 0 (0%) 0 (0%) 2 (1%) 0 (0%) 0 (0%) 0 (0%) 2 (1%) 1 (1%) -
脱毛症 108 (55%) 19 (10%) - - 66 (33%) 2 (1%) - - -
高血圧 48 (25%) 30 (15%) 6 (3%) 0 (0%) 41 (21%) 28 (14%) 11 (6%) 0 (0%) 0.321
蛋白尿 47 (24%) 30 (15%) 0 (0%) 0 (0%) 48 (24%) 37 (19%) 0 (0%) 0 (0%) -
消化管出血 23 (12%) 1 (1%) 0 (0%) 0 (0%) 12 (6%) 0 (0%) 1 (1%) 0 (0%) 1.00
鼻出血 53 (27%) 1 (1%) 0 (0%) 0 (0%) 57 (29%) 1 (1%) 0 (0%) 0 (0%) -
静脈血栓症 - 5 (3%) 12 (6%) 0 (0%) - 6 (3%) 3 (2%) 0 (0%) 0.017
動脈血栓症 - 1 (1%) 3 (2%) 0 (0%) - 0 (0%) 1 (1%) 0 (0%) 0.365
消化管穿孔 0 (0%) 0 (0%) 5 (3%) 1* (1%) 0 (0%) 1 (1%) 2 (1%) 1 (1%) 0.331

* 消化管穿孔1例はGrade 5(死亡)

11. QoL

QoLはFACT/GOG-Ntx、FACT-C (TOI-PFC)を用いて評価された。評価ポイントは試験登録時、3、6、9、12、18ヶ月時点。
いずれの評価法でもFOLFIRI+BEV群がmFOLFOX6群よりも良好な傾向を認めた。

評価方法 P
FACT/GOG-Ntx < 0.001
FACT-C (TOI-PFC) = 0.296
結語
切除不能進行再発大腸癌に対する初回治療として、FOLFIRI+BEVはmFOLFOX6+BEVに対して無増悪生存期間における非劣性を示し、QoLも良好な傾向にあった。一次治療におけるFOLFIRI+BEVは標準治療の1つであることが確認された。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 レジデント 瀧浪 将貴 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 治験管理室 部長、消化器内科 医長 山﨑 健太郎 先生

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