対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
食道扁平上皮癌 | 規定なし | 第2相 | 未記載 | 国内 | あり |
試験名 : JCOG8807
レジメン:5-FU+シスプラチン
登録期間: 1989年7月〜1990年10月
背景
食道癌の治療にシスプラチンが導入されてから、いくつかのレジメンが利用可能となった。シスプラチン併用の化学療法では15.0-76.2%の奏効割合が報告されており、導入以前に行われていた化学療法と比較し、高い奏効割合であった。本邦では食道扁平上皮癌を対象としたシスプラチン+ビンデシン併用療法が検討されており、その奏効割合は16.1%と報告された。
一方、シスプラチン単剤療法の奏効割合は15-21.6%、5-FU単剤療法の奏効割合は15%と報告されているのに対し、Kiesらが原発巣のみを有する食道がんに対して行った5-FU+シスプラチン併用療法の奏効割合は42.3%と良好であり、これらの結果を基に、進行食道扁平上皮癌に対する5-FU+シスプラチン療法の奏効割合と安全性および術後補助化学療法としての可能性を検討するために本試験が行われた。
一方、シスプラチン単剤療法の奏効割合は15-21.6%、5-FU単剤療法の奏効割合は15%と報告されているのに対し、Kiesらが原発巣のみを有する食道がんに対して行った5-FU+シスプラチン併用療法の奏効割合は42.3%と良好であり、これらの結果を基に、進行食道扁平上皮癌に対する5-FU+シスプラチン療法の奏効割合と安全性および術後補助化学療法としての可能性を検討するために本試験が行われた。
シェーマ
統計学的事項
主要/副次的評価項目・統計学的設定の記載なし。奏効割合はWHO規準、有害事象はWHOスケールで評価された。
試験結果:
- 本試験には40名が登録されたが、1名は組織学的に腺癌の診断であったため解析から除外された。
- 3名は早期死亡(7日:吐血, 9日:悪液質, 10日:吐血)したため、有効性の評価がなされなかった。
- 投与サイクル:1サイクル 2例(早期死亡の3例を除く)、2サイクル 24例、3サイクル 5例、4サイクル 4例、5サイクル 1例
- 患者背景:男性 34例/女性 5例、平均年齢 58.5歳(範囲:43-77歳)、6例は4週以上の前化学療法歴を有していた
1. 奏効割合
N | CR | PR | MR | NC | PD | NE | 奏効割合 | 95%信頼区間 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
39 | 0 | 14 | 2 | 11 | 9 | 3 | 35.9% | 22.7-51.6 |
MR:Minor Response NC:No Change |
- 平均奏効期間:88.9日(範囲:31-360)
- 前化学療法歴のない症例(n=33)における奏効割合は33.3%(N=11)、化学療法歴を有する症例(n=6)における奏効割合は50%(n=3)であった。
2. 全生存期間
奏効例 | 非奏効例 | |
---|---|---|
中央値 | 9.2ヶ月 | 5.3ヶ月 |
3. 有害事象
N=39 | WHO Grade (No. of Case) | ||||
---|---|---|---|---|---|
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
貧血 | 9 | 16 | 9 | 5 | 0 |
白血球減少 | 23 | 7 | 6 | 3 | 0 |
血小板数減少 | 31 | 5 | 1 | 1 | 1 |
血中ビリルビン増加 | 37 | 2 | 0 | 0 | 0 |
AST増加 | 24 | 12 | 3 | 0 | 0 |
クレアチニン増加 | 36 | 3 | 0 | 0 | 0 |
悪心/嘔吐 | 14 | 12 | 12 | 1 | 0 |
下痢 | 35 | 4 | 0 | 0 | 0 |
- 治療関連死亡は認めなかった。
結語
本試験において5-FU+シスプラチン併用療法は局所進行もしくは遠隔転移を有する食道扁平上皮癌に対して十分な有効性と安全性を示し、食道扁平上皮癌の術後補助化学療法としても有効な可能性が示唆された。
執筆:神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科 医長 松本 俊彦 先生
監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生
監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生