食道癌 JCOG9708

A phase II trial of chemoradiotherapy for stage I esophageal squamous cell carcinoma: Japan Clinical Oncology Group Study (JCOG9708).

Kato H, Sato A, Fukuda H, et al. Jpn J Clin Oncol;39:638-43, 2009 [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
食道扁平上皮癌 (Stage I) 一次治療 第2相 完全奏効割合(CR割合) 国内 あり

試験名 : JCOG9708

レジメン:5-FU+シスプラチン+放射線照射

登録期間: 1997年12月〜2000年6月

背景

内視鏡技術が発展し、食道癌の早期発見が可能になった。Stage I の食道扁平上皮癌は、深達度によってT1a(粘膜内にとどまる)とT1b(粘膜下層にとどまる)に分類されるが、前者では内視鏡的治療、後者では3領域リンパ節郭清をともなう手術が標準治療である。手術治療をうけたT1b症例の3年生存率は80%を越えるが、手術に伴う重大な合併症やそれによる死亡が問題となっていた。
より進行した食道扁平上皮癌に対して、5-FU+シスプラチン同時併用の化学放射線療法は有望な結果を示し、有害事象の観点からも手術と比較して、食道を失わず、術後合併症を生じないなどの理由から有利であると考えられている。仮に同時併用の化学放射線療法の有効性が食道切除術と変わらないのであれば、化学放射線療法はStage I 食道扁平上皮癌の標準治療となり得るものと考えられる。
そのため、T1bの食道扁平上皮癌における次に続く第III相試験の試験治療候補として、5-FU+シスプラチン同時併用の化学放射線療法の有効性と安全性を評価するために本試験が行われた。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:完全奏効割合(CR割合)

期待完全奏効(CR)割合を85%、閾値CR割合を70%と設定し、α=0.05、検出力90%で若干の脱落例を想定し、必要症例数が75例と設定された。登録期間2年、観察期間2年と計画された。

試験結果:

  • 1997年12月〜2000年6月の間に16施設より72例が登録された。
  • 患者背景:男性 66例/女性 6例、年齢中央値 62歳(範囲:41-75歳)、原発部位 胸部上部食道 10例/胸部中部食道 45例/胸部下部食道 17例
  • 70例(97%)でプロトコール治療を完遂した。1例は患者拒否、1例は進行結腸癌の存在にて治療中止となった。
1. CR割合 (主要評価項目)

CRの定義:
(1) びらん、平坦な白苔、瘢痕を除いた腫瘍性病変が存在しない
(2) 生検で悪性所見なし
(3) 新病変を認めない
(4) (1)-(3)が少なくとも4週間以上持続

n 完全奏効例数 CR割合 95%信頼区間
72 63 87.5% 77.6-94.1
2. 全生存割合 (死亡イベント n=19)
  生存割合 95%信頼区間
2年生存割合 93.1% 87.2-98.9
4年生存割合 80.5% 71.3-89.7
3. 無再発生存期間 (Major) (Major再発イベント n=20)
  • 再発の定義:Major再発(内視鏡治療で切除できない再発)、Minor再発(内視鏡治療で切除可能な再発)
  • Major再発イベント n=20, Minor再発イベント n=16
  • Major再発の6例は放射線照射野内の再発(局所 n=5, リンパ節 n=1)、13例は放射線照射野外の再発(局所 n=1, リンパ節 n=7, 遠隔転移 n=6)、1例は放射線照射野内外の両者の再発。6例(局所 n=5, リンパ節 n=1)は安全に食道切除術が施行された。
  • Minor再発の16例は全例に内視鏡的切除が施行された。
Major 無再発生存割合 95%信頼区間
2年無再発生存割合 75.0% 65.0-85.0
4年無再発生存割合 68.1% 57.3-78.8
Major+Minor 無再発生存割合 95%信頼区間
2年無再発生存割合 59.7% 48.4-71.1
4年無再発生存割合 52.8% 41.2-64.3
4. 有害事象
  Grade (No. of case) Grade 3/4
  1 2 3 4 %
白血球減少 25 38 6 0 8
好中球数減少 19 32 2 0 2
貧血 16 9 0 - 0
血小板数減少 12 4 1 0 1
ビリルビン上昇 - 22 0 0 0
AST上昇 23 1 1 0 1
クレアチニン増加 16 1 0 0 0
悪心/嘔吐 26 15 0 - 0
口腔粘膜炎 19 1 0 0 0
下痢 11 3 0 0 0
食道炎 41 9 0 0 0
神経障害:感覚性 3 0 0 0 0
  • 治療関連死亡と重篤な有害事象(Grade 4)は認めなかった。
5. 晩期毒性
  Grade (No. of case) Grade 3/4
  1 2 3 4 %
食道炎 21 2 0 0 0
不整脈 3 1 0 0 0
呼吸困難 5 6 2 0 2.8
神経障害:感覚性 1 0 0 - 0
神経障害:運動性 0 0 0 0 0
虚血性心疾患 0 1 1 0 1
心外膜炎 12 2 0 0 0
結語
本試験の結果より、Stage I の食道扁平上皮癌に対する5-FU+シスプラチン同時併用の化学放射線療法は高いCR割合、生存割合を示し、有害事象も軽度であることから、外科的切除と比較する新しい標準治療候補となり得ると推察された。この結果を基に、Clinical Stage I の食道扁平上皮癌を対象として、標準治療である外科的切除に対する5-FU+シスプラチン同時併用化学放射線療法の非劣勢を検証する第III相試験(JCOG0502試験)が行われることとなった。
執筆:姫路赤十字病院 第一内科 副部長 松本 俊彦 先生
監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生

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