対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
肝細胞癌 | 一次治療 | 第3相 | 全生存期間 症状増悪までの期間 |
国際 | なし |
試験名 :SHARP
レジメン:Sorafenib vs プラセボ
登録期間:2005年3月〜2006年4月
背景
進行肝細胞癌の予後はきわめて不良であり、進行肝細胞癌患者の生存期間を改善した全身療法は報告されていなかった。ソラフェニブは腫瘍血管新生を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤であり、Child-Pugh分類AまたはBの症例を対象とした第2相試験においてソラフェニブ単独投与での有効性が示唆された。そこで今回、大規模無作為化第3相プラセボ対照二重盲検試験(SHAPR試験)を実施し、進行肝細胞癌患者におけるソラフェニブ単独投与の有効性と安全性を評価した。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間、症状増悪までの期間
本試験の主要評価項目は全生存期間および症状増悪までの期間とした。全生存期間については期待値40%、片側α=0.02(症状増悪までの期間については片側α=0.005)、検出力90%として設計したところ、560例の登録が必要とされた。試験結果:
- 2005年3月から2006年4月の間に、602例が登録され、299例がソラフェニブ群に、303例がプラセボ群に割り付けられた。
- 患者背景に大きな隔たりはなかった。
- 当初より計画されていた2回目の中間解析を実施したところ(データカットオフ:2006年10月17日)、ソラフェニブ群における有意な生存ベネフィットが認められたため、独立データ安全性モニタリング委員会は2007年2月時点で臨床試験を終了するよう勧告した。
1. 全生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.69 (95%C.I. 0.55-0.87) P <0.001 |
|
ソラフェニブ(n=299) | 10.7ヶ月 | 9.4-13.3 | |
プラセボ(n=303) | 7.9ヶ月 | 6.8-9.1 |
2. 1年生存割合
1年生存割合 | P=0.009 | |
ソラフェニブ(n=299) | 44% | |
プラセボ(n=303) | 33% |
3. 症状増悪までの期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | HR 1.08 (95%C.I. 0.88-1.31) P=0.77 |
|
ソラフェニブ(n=299) | 4.1ヶ月 | 3.5-4.8 | |
プラセボ(n=303) | 4.9ヶ月 | 4.2-6.3 |
4. 無増悪期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.58 (95%C.I. 0.45-0.74) P<0.001 |
|
ソラフェニブ(n=299) | 5.5ヶ月 | 4.1-6.9 | |
プラセボ(n=303) | 2.8ヶ月 | 2.7-3.9 |
5. 病勢制御割合
病勢制御割合 | P=0.002 | |
ソラフェニブ(n=299) | 43%(PR 2例、SD 71例) | |
プラセボ(n=303) | 32%(PR 1例、SD 67例) |
6. 有害事象(NCI-CTCAE ver.3.0)
ソラフェニブ(n=297) | プラセボ(n=302) | |||||
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全Grade | Grade 3 | Grade 4 | 全Grade | Grade 3 | Grade 4 | |
下痢 | 39% | 8% | 0% | 11% | 2% | 0 |
疲労 | 22% | 3% | 1% | 16% | 3% | <1% |
手足皮膚反応 | 21% | 8% | 0% | 3% | <1% | 0 |
皮疹/落屑 | 16% | 1% | 0% | 11% | 0% | 0% |
脱毛 | 14% | 0% | 0% | 2% | 0% | 0% |
食欲不振 | 14% | <1% | 0% | 3% | 1% | 0% |
悪心 | 11% | <1% | 0% | 8% | 1% | 0% |
結語
ソラフェニブは、進行肝細胞癌を対象とした第3相試験において、プラセボと比較し、初めて全生存期間を有意に延長することを示した。
執筆:千葉大学病院 臨床試験部 特任助教 小笠原 定久 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科(肝胆膵) 部長 上野 誠 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科(肝胆膵) 部長 上野 誠 先生