対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
肝細胞癌 | 一次治療 | 第3相 | 全生存期間 | 国内 | あり |
試験名 : SILIUS
レジメン:ソラフェニブ vs ソラフェニブ+肝動注化学療法
登録期間:2010年11月4日〜2014年6月10日
背景
切除不能な進行肝細胞癌に対しては、唯一ソラフェニブが全生存期間の延長を示した薬剤として承認されている。一方、日本、韓国、台湾ではシスプラチンと5-FUを肝動脈に挿入したカテーテルから投与する肝動注化学療法が広く行われている。
先行する第1/2相試験において、これらの併用投与は良好な腫瘍制御が得られ、安全性プロファイルも管理可能であったことから、今回の国内非盲検比較第3相試験(SILIUS)の実施に至った。[ClinicalTrials.gov Identifier:NCT01214343]
先行する第1/2相試験において、これらの併用投与は良好な腫瘍制御が得られ、安全性プロファイルも管理可能であったことから、今回の国内非盲検比較第3相試験(SILIUS)の実施に至った。[ClinicalTrials.gov Identifier:NCT01214343]
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
本試験はソラフェニブ群を対照としてソラフェニブ+肝動注化学療法群の全生存期間のハザード比が0.59となることを検証する優越性試験として設計され、検出力80%、片側α=0.05として、190例の登録・112イベントが必要と設定された。試験結果:
- 2010年11月から2014年6月の間に、206例が登録された。
- 患者背景にほとんど隔たりはなかったが、AFP、DCPは肝動注群で高値であった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | HR 1.009 (95%C.I. 0.743-1.371) p=0.955 |
|
ソラフェニブ(n=103) | 11.5ヶ月 | 8.2-14.8 | |
ソラフェニブ+肝動注(n=102) | 11.8ヶ月 | 9.1-14.5 |
2. 増悪までの期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.645 (95%C.I. 0.477-0.872) p=0.004 |
|
ソラフェニブ(n=103) | 3.5ヶ月 | 2.5-4.6 | |
ソラフェニブ+肝動注(n=102) | 5.3ヶ月 | 3.9-6.7 |
3. 無増悪生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.753 (95%C.I. 0.566-1.003) p=0.051 |
|
ソラフェニブ(n=103) | 4.8ヶ月 | 3.4-6.2 | |
ソラフェニブ+肝動注(n=102) | 3.5ヶ月 | 2.6-4.4 |
4. 奏効割合
奏効割合 | p=0.003 | |
ソラフェニブ(n=103) | 36% | |
ソラフェニブ+肝動注(n=102) | 18% |
5. 有害事象
ソラフェニブ (n=102) | ソラフェニブ+肝動注 (n=88) | |||
---|---|---|---|---|
Grade 1-2 | Grade 3-4 | Grade 1-2 | Grade 3-4 | |
AST増加 | 68 (67%) | 31 (30%) | 60 (68%) | 26 (30%) |
ALT増加 | 75 (74%) | 15 (15%) | 53 (60%) | 13 (15%) |
血小板数減少 | 71 (70%) | 12 (12%) | 51 (58%) | 30 (34%) |
貧血 | 73 (72%) | 6 (6%) | 63 (72%) | 15 (17%) |
高血圧 | 52 (51%) | 26 (25%) | 46 (52%) | 22 (25%) |
リパーゼ増加 | 32 (31%) | 35 | 29 (33%) | 26 (30%) |
ビリルビン増加 | 55 (54%) | 12 (12%) | 50 (57%) | 7 (8%) |
手足皮膚反応 | 46 (45%) | 15 (15%) | 37 (42%) | 8 (9%) |
アミラーゼ増加 | 48 (47%) | 11 (11%) | 35 (40%) | 10 (11%) |
倦怠感 | 54 (53%) | 0 | 44 (50%) | 0 |
食欲減退 | 48 (47%) | 6 (6%) | 40 (45%) | 12 (14%) |
下痢 | 40 (39%) | 10 (10%) | 26 (30%) | 4 (5%) |
白血球数減少 | 45 (44%) | 5 (5%) | 50 (57%) | 11 (13%) |
INR増加 | 50 (49%) | 0 | 41 (47%) | 0 |
好中球数減少 | 42 (41%) | 1 (1%) | 46 (52%) | 15 (17%) |
疲労 | 33 (32%) | 8 (8%) | 21 (24%) | 9 (10%) |
体重減少 | 32 (32%) | 1 (1%) | 35 (40%) | 0 |
嗄声 | 32 (31%) | 1 (1%) | 14 (16%) | 0 |
脱毛 | 26 (26%) | 0 | 8 (9%) | 0 |
発熱 | 22 (22%) | 3 (3%) | 21 (24%) | 0 |
嘔気 | 15 (15%) | 2 (2%) | 29 (33%) | 5 (6%) |
嘔吐 | 6 (6%) | 1 (1%) | 15 (17%) | 3 (3%) |
カテーテルシステムトラブル | NA | NA | 0 | 11 (13%) |
結語
進行肝細胞癌に対して、ソラフェニブに5-FU及びシスプラチン併用投与の肝動注化学療法を追加することによる、全生存期間の延長効果は示されなかった。
執筆:金沢大学 消化器内科 特任准教授 寺島 健志 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科(肝胆膵) 部長 上野 誠 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科(肝胆膵) 部長 上野 誠 先生