対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
非小細胞肺癌 | 一次治療 | 第3相 | 無増悪生存期間 | 国際 | なし |
試験名 :ALEX
レジメン:alectinib vs crizotinib
登録期間:2014年8月〜2016年1月
背景
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:無増悪生存期間(PFS)
本試験はクリゾチニブ群を対照として、アレクチニブ群の無増悪生存期間(PFS)のハザード比が0.65となることを検証する優越性試験として設計された。約25ヶ月間に286人の患者を1:1の無作為化割り付けで非線形リクルートの形で登録する予定とし、検出力80%、両側α=0.05の設定で、170例のPFSイベントが必要と見込まれた。試験結果:
- 2014年8月〜2016年1月の期間に98施設より303例が登録され、アレクチニブ群には152例、クリゾチニブ群には151例が割り付けられた。
- 患者背景の特徴は、中枢神経系転移の有無(アレクチニブ群42%、クリゾチニブ群38%)を含め、両群間で偏りは認められなかった。
- 有効性解析のデータカットオフは2017年2月9日。フォローアップ期間中央値はアレクチニブ群が18.6ヶ月、クリゾチニブ群が17.6ヶ月であった。
- フォローアップ期間に腫瘍の進行または死亡のイベントが発生したのは、アレクチニブ群では152例中62例(41%)、クリゾチニブ群では151例中102例(68%)であった。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間(CI) | HR 0.47 (95%CI:0.34−0.65) P<0.001 |
|
アレクチニブ | 未到達 | 17.7−NA | |
クリゾチニブ | 11.1ヶ月 | 9.1−13.1 |
治験責任医師が評価した12カ月時点での無増悪生存割合はアレクチニブ群 68.4%[95%CI:61.0−75.0%]vs クリゾチニブ群48.7% [95%CI:40.4−56.9]で、アレクチニブ群の方がクリゾチニブ群よりも有意に高かった。
2. CNS病変の進行、ならびに12ヶ月時点での累積発症率
CNS病変進行イベント数 | 累積発症率中央値 (95%CI) | |
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アレクチニブ | 18(12%) | 9.4% (5.4−14.7%) |
クリゾチニブ | 68(45%) | 41.4% (33.2−49.4%) |
CNS病変の進行までの期間は、クリゾチニブ群よりもアレクチニブ群の方が有意に長い(ハザード比 0.16;95%CI、0.10−0.28;P<0.001)結果であった。
CNS病変の進行イベント数と累積発生率も、アレクチニブ群の方がクリゾチニブ群よりも低かった。
3. 奏効割合
奏効割合 | 95%CI | p=0.09 | |
アレクチニブ | 82.9% | 76.0−88.5% | |
クリゾチニブ | 75.5% | 67.8−82.1% |
アレクチニブの奏効期間の中央値は未到達(95%CI:未到達)、クリゾチニブは11.1ヶ月(95%CI:7.9−13.0)でHR 0.36(95%CI:0.24−0.53)であり、クリゾチニブ群よりもアレクチニブ群の方が有意に長かった。
4. CNS奏効割合
CNS奏効割合 | 95%CI | |
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アレクチニブ | 81% | 58−95% |
クリゾチニブ | 50% | 28−72% |
アレクチニブのCNS奏効期間の中央値は17.3ヶ月(95%CI:14.8−未到達)、クリゾチニブは5.5ヶ月(95%CI:2.1−17.3)であった。
5. 12ヶ月生存割合
中央値 | 95%CI | HR 0.76 (95%CI:0.48−1.30) P=0.24 |
|
アレクチニブ | 84.3% | 78.4−90.2 | |
クリゾチニブ | 82.5% | 76.1−88.9 |
データカットオフ時点で、全体75例(アレクチニブ群35例[23%]、クリゾチニブ群40例[26%])の死亡であり、全生存期間の中央値はいずれの群でも推定できなかった。
6. 有害事象(CTCAE ver4.0)
有害事象(AE) | クリゾチニブ(N=151) | アレクチニブ(N=152) | ||
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全Grade | Grade 3-5 | 全Grade | Grade 3-5 | |
全有害事象 | 146(97%) | 76(50%) | 147(97%) | 63(41%) |
重篤な有害事象(SAE) | 44(29%) | 43(28%) | ||
死亡につながったAE | 7(5%) | 5 (3%) | ||
治療中止につながったAE | 19(13%) | No data | 17(11%) | No data |
減量につながったAE | 31(21%) | No data | 24(16%) | No data |
治療中断につながったAE | 38(25%) | No data | 29(19%) | No data |
有害事象の詳細 | ||||
嘔気 | 72(48%) | 5(3%) | 21(14%) | 1(1%) |
下痢 | 68(45%) | 3(2%) | 18(12%) | 0 |
嘔吐 | 58(38%) | 5(3%) | 11(7%) | 0 |
ALT値の上昇 | 45(30%) | 22(15%) | 23(14%) | 7(5%) |
AST値の上昇 | 37(25%) | 16(11%) | 21(15%) | 8(5%) |
血中ビリルビン値の上昇 | 2(1%) | 0 | 23(15%) | 3(2%) |
体重増加 | 0 | 0 | 15(10%) | 1(1%) |
ΓGTP値の上昇 | 10(7%) | 2(1%) | 1(1%) | 1(1%) |
末梢浮腫 | 42(28%) | 1(1%) | 26(17%) | 0 |
めまい | 21(14%) | 0 | 12(8%) | 0 |
味覚異常 | 29(19%) | 0 | 4(3%) | 0 |
視覚異常 | 18(12%) | 0 | 2(1%) | 0 |
目のかすみ | 11(7%) | 0 | 3(2%) | 0 |
光視症 | 9(6%) | 0 | 0 | 0 |
筋痛 | 3(2%) | 0 | 24(16%) | 0 |
筋骨格痛 | 3(2%) | 0 | 11(7%) | 0 |
貧血 | 7(5%) | 1(1%) | 30(20%) | 7(5%) |
脱毛 | 11(7%) | 0 | 1(1%) | 0 |
光線過敏 | 0 | 0 | 8(5%) | 1(1%) |
皮疹 | 14(9%) | 0 | 17(11%) | 1(1%) |
心電図でのQT延長 | No data | 8(5%) | No data | 0 |
肺動脈血栓塞栓症 | No data | 5(3%) | No data | 2(1%) |
肺臓炎 | No data | 3(2%) | No data | 0 |
急性腎障害 | No data | 0 | No data | 4(3%) |
グレード3~5の全有害事象は、アレクチニブ群では頻度が低かった。
7. PFSのサブグループ解析
年齢、性別、人種、ECOG-PS、脳転移の有無によらずアレクチニブが有効であった。
現喫煙者ではHR1.16(95%CI:0.35−3.90)、PS2の患者群ではHR0.74(0.25−2.15)という結果であったが、いずれも対象集団の人数が少ない(それぞれ17人、20人)ため、慎重な解釈を要する。
監修:神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長 池田 慧 先生