対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
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EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌 | 一次治療 | 第3相 | 無増悪生存期間 | 欧州 | なし |
試験名 :EURTAC
レジメン:エルロチニブ vs シスプラチン or カルボプラチン + ドセタキセル or ゲムシタビン
登録期間:2007年2月15日〜2011年1月4日
背景
シェーマ
* シスプラチンが不適応の患者はカルボプラチンを使用
カルボプラチン AUC=6 day1 + ドセタキセル 75mg/m2 day1 もしくは
カルボプラチン AUC=5 day1 + ゲムシタビン 1000mg/m2 day1, 8
統計学的事項
主要評価項目:無増悪生存期間
本試験はEGFR遺伝子変異陽性例において、プラチナ併用化学療法(化学療法)を対照群としてERL単剤療法の優越性を検証した第3相試験である。過去の試験結果から、無増悪生存期間 (PFS) 中央値をERL10ヶ月、化学療法6ヶ月と仮定し、両側α=0.05、検出力=80%と設定すると必要なPFSイベント数は計135、必要症例数は計174例となった。試験結果:
- 2007年2月15日〜2011年1月4日の期間に42施設より173例が登録され、ERL群には86例、化学療法群には87例が割り付けられた。
- 65%のPFSイベントが起きた時点(2010年8月2日)で、予定されていた中間解析の結果、早期有効中止となった。
- 最終的なデータカットオフは2011年1月26日で、追跡期間中央値はERL群が18.9ヵ月、化学療法群が14.4ヵ月であった。
- 両群間で、患者背景に明らかな差は認められなかった。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 (CI) | HR 0.37 (95%CI: 0.25-0.54) p < 0.0001 |
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ERL群 | 9.7ヶ月 | 8.4-12.3ヵ月 | |
化学療法群 | 5.2ヶ月 | 4.5-5.8ヵ月 |
2. 全生存期間
中央値 | 95%CI | HR 1.04 (95%CI: 0.65-1.68) p = 0.87 |
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ERL群 | 19.3ヶ月 | 14.7-26.8ヵ月 | |
化学療法群 | 19.5ヶ月 | 16.1ヵ月-未到達 |
3. 奏効割合
中央値 | OR 7.5 (95%CI: 3.6-16.5) p < 0.0001 |
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ERL群 | 64% | |
化学療法群 | 18% |
4. 有害事象
ERL群 (N=84) | 化学療法群 (N=82) | |||||
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Grade 1-2 | Grade 3 | Grade 4 | Grade 1-2 | Grade 3 | Grade 4 | |
皮疹 | 56 (67%) | 11 (13%) | 0 | 4 (5%) | 0 | 0 |
下痢 | 44 (52%) | 4 (5%) | 0 | 15 (18%) | 0 | 0 |
アミノトランスフェラーゼ上昇 | 3 (4%) | 2 (2%) | 0 | 5 (6%) | 0 | 0 |
肺臓炎 | 0 | 1 (1%) | 0 | 0 | 1 (1%) | 0 |
食欲不振 | 26 (31%) | 0 | 0 | 26 (32%) | 2 (2%) | 0 |
疲労 | 43 (51%) | 5 (6%) | 0 | 43 (52%) | 16 (20%) | 0 |
末梢神経障害 | 7 (8%) | 0 | 1 (1%) | 11 (13%) | 1 (1%) | 0 |
好中球数減少 | 0 | 0 | 0 | 15 (18%) | 12 (15%) | 6 (7%) |
貧血 | 9 (11%) | 0 | 1 (1%) | 37 (45%) | 3 (4%) | 0 |
血小板数減少 | 1 (1%) | 0 | 0 | 1 (1%) | 6 (7%) | 6 (7%) |
発熱性好中球減少症 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 (1%) | 2 (2%) |
ERL群で最も多く認めた有害事象は、皮疹、アミノトランスフェラーゼ (AST/ALT) 上昇であった。
化学療法群で最も多く認めた有害事象は貧血、好中球数減少であった。
有害事象により試験治療が中止となった症例はERL群 11例 (13%)、化学療法群 19例 (23%)であった。
治療関連死亡はERL群で1例、化学療法群で2例であった。
5. サブ解析:無増悪生存期間 (ERL群 vs 化学療法群)
症例数 | ハザード比 | 95%信頼区間 | ||
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全体 | 173 | 0.37 | 0.25-0.54 | |
年齢 | <65歳 | 85 | 0.44 | 0.25-0.75 |
≥65歳 | 88 | 0.28 | 0.16-0.51 | |
性別 | 女性 | 126 | 0.35 | 0.22–0.55 |
男性 | 47 | 0.38 | 0.17-0.84 | |
喫煙歴 | 現喫煙 | 19 | 0.56 | 0.15-2.15 |
元喫煙者 | 34 | 1.05 | 0.40-2.74 | |
なし | 120 | 0.24 | 0.15–0.39 | |
ECOG PS | 0 | 57 | 0.26 | 0.12-0.59 |
1 | 92 | 0.37 | 0.22-0.62 | |
2 | 24 | 0.48 | 0.15-1.48 | |
遺伝子変異 | Del19 | 115 | 0.30 | 0.18–0.50 |
L858R | 58 | 0.55 | 0.29–1.02 |
監修:静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科 医長 和久田 一茂 先生