肺癌 IMpower133

First-Line Atezolizumab Plus Chemotherapy in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer

Horn L, Mansfield AS, Szczęsna A, et al:N Engl J Med 2018;379(23): 2220-9. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
進展型小細胞肺癌 一次治療 第3相 全生存期間 国際 あり

試験名 :IMpower133

レジメン:カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ vs カルボプラチン+エトポシド

登録期間:2016年6月6日〜2017年5月31日

背景

進展型小細胞肺癌の一次治療は、長らくプラチナ併用療法が標準であり、依然として予後は不良である。アテゾリズマブ(Atezo)は、ヒト化モノクローナル抗PD-L1抗体であり、PD-L1とPD-1およびB7-1との結合を阻害し抗腫瘍免疫を回復・再活性化させる事で抗腫瘍効果を発揮する。Atezo単剤は、再発小細胞肺癌患者を対象とした第1相試験において、認容性・安全性に加え、長期の有効性を示した。さらに、免疫チェックポイント阻害薬と細胞傷害性抗がん剤を併用することで抗腫瘍免疫が増強され、相乗効果が期待される。本試験は、進展型小細胞肺癌患者を対象にカルボプラチン(CBDCA)とエトポシド(ETP)の一次治療にAtezoを追加した場合の安全性(第1相)と有効性(第3相)を、プラセボ併用群と比較して評価した第1/3相試験である。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:無増悪生存期間と全生存期間

主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)である。全体での両側αエラーを0.05に制御するため、PFSには両側α=0.005、OSには両側α=0.045がそれぞれの一次解析に割り当てられた。どちらか一方の検定が統計的に有意であった場合、最初に割り当てられたαでは有意でなかった検定へそのαを再利用できる設定とされた。症例数設計は生存期間差の推定によって行われた。プラセボ併用群と比較してAtezo併用群による死亡のハザード比が0.68であることを検証するために、両側α=0.045で検出力を91%と設定すると、OSイベント数は306例が必要と見込まれた。OSの中間解析は、238人の死亡が発生した時点で行い、その際にPFSの一次解析も行う計画とした。

試験結果:

  • 2016年6月6日〜2017年5月31日の期間に21カ国106施設より403例が登録され、Atezo併用群には201例、プラセボ併用群には202例が無作為に割り付けられた。
  • 患者背景の特徴は、両群間で偏りは認められなかった。
  • 有効性解析のデータカットオフは2018年4月24日。観察期間の中央値は13.9ヵ月であった。
  • 両群ともに22例が予防的全脳照射を受けた。
  • Atezo併用群で104例、プラセボ併用群で116例が1レジメン以上の後治療を受けた。プラセボ併用群では15例が後治療として免疫チェックポイント阻害剤を投与された。
  • 第1相試験は、Atezo併用療法の有害事象のプロファイルを確立するための期間であり、少なくとも12人の患者が各群に割り付けられ、2サイクル以上の治療を受けた。Atezo併用療法で新たな有害事象は出現せず、既知の安全性プロファイルと一致していた。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  中央値 95%信頼区間(CI) HR 0.70     
(95%CI:0.54−0.91)
p=0.007     
Atezo併用 12.3ヶ月 10.8−15.9ヶ月
プラセボ併用 10.3ヶ月 9.3−11.3ヶ月

データカットオフ時点で、Atezo併用群201例中104例(51.7%)、プラセボ併用群202例中134例(66.3%)が死亡した。

2. 無増悪生存期間
  中央値 95%CI HR 0.77      
(95%CI:0.62−0.96)
p=0.02      
Atezo併用 5.2ヶ月 4.4−5.6ヶ月
プラセボ併用 4.3ヶ月 4.2−4.5ヶ月

データカットオフ時点で、Atezo併用群201例中171例(85.1%)、プラセボ併用群202例中189例(93.6%)に病勢進行または死亡のイベントが発生した。

3. 奏効割合
  奏効割合 95%CI
Atezo併用 60.2% 53.1−67.0%
プラセボ併用 64.4% 57.3−71.0%

Atezo併用群では5例(2.5%)、プラセボ併用群では2例(1.0%)に完全奏効が認められた。
奏効期間の中央値はAtezo併用群で4.2ヶ月(95%CI:1.4−19.5ヶ月)、プラセボ併用群で3.9ヶ月(95%CI:2.0−16.1ヶ月)であり、両群でほぼ同程度であった。

4. 有害事象 (CTCAE ver4.0)
  ATEZO併用 N=198 (%) プラセボ併用 N=196 (%)
  Grade 1 or 2 Grade 3 or 4 Grade 5 Grade 1 or 2 Grade 3 or 4 Grade 5
全有害事象 73(36.9) 112(56.6) 3(1.5) 68(34.7) 110(56.1) 3(1.5)
好中球減少症 26(13.1) 45(22.7) 1(0.5) 20(10.2) 48(24.5) 0
貧血 49(24.7) 28(14.1) 0 41(20.9) 24(12.2) 0
脱毛 69(34.8) 0 0 66(33.7) 0 0
嘔気 62(31.3) 1(0.5) 0 58(29.6) 1(0.5) 0
疲労 39(19.7) 3(1.5) 0 37(18.9) 1(0.5) 0
好中球数低下 7(3.5) 28(14.1) 0 12(6.1) 33(16.8) 0
食思不振 39(19.7) 2(1.0) 0 26(13.3) 0 0
血小板減少症 12(6.1) 20(10.1) 0 14(7.1) 15(7.7) 0
血小板数低下 17(8.6) 7(3.5) 0 21(10.7) 7(3.6) 0
嘔吐 25(12.6) 2(1.0) 0 19(9.7) 3(1.5) 0
便秘 19(9.6) 1(0.5) 0 25(12.8) 0 0
白血球減少症 15(7.6) 10(5.1) 0 10(5.1) 8(4.1) 0
白血球数低下 10(5.1) 6(3.0) 0 16(8.2) 9(4.6) 0
下痢 15(7.6) 4(2.0) 0 18(9.2) 1(0.5) 0
発熱性好中球減少症 0 6(3.0) 0 0 12(6.1) 0
インフュージョンリアクション 6(3.0) 4(2.0) 0 9(4.6) 1(0.5) 0

Grade3−4の有害事象で最も頻度が高かったのは、好中球減少症、貧血であった。
治療関連の死亡は、Atezo併用群で3例(1.5%)(原因は好中球減少症1例、肺炎1例、原因不明1例)、プラセボ併用群で3例(1.5%)(原因は肺炎1例、敗血症性ショック1例、心肺機能不全1例)であった。免疫関連有害事象は、Atezo併用群で39.9%、プラセボ併用群で24.5%に発現した。
Atezo併用群で高頻度に発現した免疫関連有害事象は、発疹(18.7%)と甲状腺機能低下症(12.6%)であった。

5. サブグループ解析
  • Atezo併用によるOSおよびPFSに関する有益性は、サブグループ間で一貫していた。
  • OSのサブグループ解析において、年齢が65歳未満の患者ではHR 0.92(95%CI:0.64−1.32)、ECOG-PS 0の患者ではHR 0.79(95%CI:0.49−1.27)、脳転移のある患者ではHR 1.07(95%CI:0.47−2.43)、肝転移のある患者ではHR 0.81(95%CI:0.55−1.20)という結果であったが、探索的な解析であり慎重な解釈を要する。
  • 全患者のうち374人(92.8%)が腫瘍のTumor mutational burden(TMB)の分析に使用できる血漿を有しており、351人(93.8%)から分析に使用できる質の高いデータが得られた。あらかじめ規定されたTMBのカットオフ値(メガベースあたり10または16の変異数)では、いずれもAtezo投与の有益性を予測できる結果は得られなかった。
結語
進展型小細胞肺癌の一次治療において、化学療法へのAtezoの追加は、化学療法単独よりも全生存期間および無増悪生存期間を有意に延長させた。
執筆:千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科 池田 英樹 先生
監修:神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長 池田 慧 先生

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