肺癌 J-ALEX

Alectinib versus crizotinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer(J-ALEX): an open-label, randomized phase 3 trial

Hida T, Nokihara H, Kondo M, et al. Lancet. 2017; 390(10089): 29-39. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
ALK遺伝子転座陽性
切除不能非小細胞肺癌
一次治療 第3相 無増悪生存期間 日本 あり

試験名 :J-ALEX

レジメン:アレクチニブ vs クリゾチニブ

登録期間:2013年11月18日〜2015年8月4日

背景

第一世代ALK阻害剤であるクリゾチニブ(CRZ)は、未治療または既治療の進行ALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌患者に対して、化学療法と比較し有意に無増悪生存期間を延長したことから、2011年に米国、2012年に日本及び欧州で承認された。しかしながら、半数の症例は約11ヶ月の治療期間の後にCRZへの耐性を獲得する。その耐性機序として、ALK遺伝子の二次変異、ALK遺伝子増幅、下流シグナルの活性化、そして中枢神経系への移行が不十分であることが挙げられる。アレクチニブ(ALC)は中枢神経系への移行が良好な選択的ALK阻害剤で、CRZ耐性となるいくつかの二次変異に対しても有効な薬剤である。日本の単相非盲検第1/2相試験(AF-001JP)において、ALCは奏効割合93.5% (95% CI 82.1-98.6)と高い腫瘍縮小効果を認め、長期の無増悪生存期間が報告(予測中央値29ヶ月以上)されたことから、世界に先駆けて2014年に日本で承認された。AF-001JP試験での効果及び忍容性の結果を受けて、日本人進行ALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌患者に対してALCとCRZの効果及び安全性を直接比較する第3相試験(J-ALEX)が行われた。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:独立中央判定委員会による無増悪生存期間

階層的な仮説検定が行われ、はじめに非劣勢仮説の帰無仮説を棄却した後に優越性仮説が検証された。ALCの無増悪生存期間中央値を14.0ヶ月、CRZの無増悪生存期間中央値を9.0ヶ月、ハザード比を0.643と仮定し、両側α=5%、非劣性の検出力は97.8%、優越性の検出力は80%で必要イベント数が164症例となるため、目標症例数は計200症例とした。生存期間の解析は、無増悪生存期間の優劣性の帰無仮説が棄却された時のみ検証された。ALCの生存期間中央値が30.0ヶ月、CRZの生存期間中央値が20.0ヶ月、ハザード比0.667と仮定し、70%の検出力で150のイベントを必要とした。主な副次評価項目は、治験担当医師判定による無増悪生存期間、生存期間、奏効割合、奏効期間、奏効までの期間、既存脳転移増大または新規脳転移出現までの期間、有害事象とした。

試験結果:

  • 2013年11月18日〜2015年8月4日の期間に207例が登録された(ALC群103例、CRZ群104例)。
  • 独立中央判定委員会で評価可能病変を有すると判定された症例は、ALC群103例中83例(81%)、CRZ群104例中90例(87%)だった。
  • 患者背景はほぼ均等であったが、脳転移に関してはCRZ群(104例中29例[28%])の方がALC群(103例中14例[14%])より多かった。
  • ECOG PS 2の症例が各群で2例ずつ含まれていた。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
全症例 中央値 95% CI HR 0.34     
(95% CI: 0.17-0.71)
p<0.0001    
ALC群 Not estimable(NE) 20.3-NE
CRZ群 10.2ヶ月 8.2-12.0
一次治療セッティング 中央値 95% CI HR 0.31     
(95% CI: 0.17-0.57)
ALC群 NE 17.5-NE
CRZ群 10.2ヶ月 8.3-13.9
二次治療セッティング 中央値 95% CI HR 0.40     
(95% CI: 0.19-0.87)
ALC群 20.3ヶ月 20.3-NE
CRZ群 8.2ヶ月 6.4-15.7
術後再発 中央値 95% CI HR 0.55     
(95%CI: 0.20-1.48)
ALC群 NE 10.2-NE
CRZ群 11.8ヶ月 8.3-NE

無増悪生存期間のサブグループ解析では、概ねALC群で良好な結果であった。

2. 全生存期間

イベント数が少なくimmatureで評価できず。

3. 奏効割合
  ALC群 n=83 CRZ群 n=90  
中央判定による評価      
奏効割合 % (95% CI) 92% (85.6-97.5) 79% (70.5-87.3)  
CR [n (%)] 2 (2%) 2 (2%)  
PR [n (%)] 74 (89%) 69 (77%)  
SD [n (%)] 4 (5%) 12 (13%)  
奏効するまでの期間 (月)
中央値 (95% CI)

1.0 (1.0-1.1)

1.0 (1.0-1.0)
 
奏効期間 (月)
中央値 (95% CI)

NE (NE-NE)

11.1 (7.5-13.1)
HR 0.32
(95% CI 0.17-0.60)
4. 脳転移の増悪または新規出現までの期間
  HR 95% CI
脳転移のある症例が増大または死亡するまでの期間 0.16 0.02-1.28
脳転移のない症例が脳転移新規出現または死亡するまでの期間 0.41 0.17-1.01
5. 有害事象(NCI CTCAE ver.4.0)

有害事象による投与中断は、CRZ群104例中77例(74%)、ALC群103例中30例(29%)、治療継続困難は、CRZ群104例中21例(20%)、ALC群103例中9例(9%)といずれもCRZ群でより頻度が高かった。その主な原因として、grade 1-3の間質性肺炎、grade 3-4の肝機能障害、grade 3-4のALT上昇だった。治療関連死は認めなかった。

  ALC群 (n=103) CRZ群 (n=104)
  All grade Grade 3-4 All grade Grade 3-4
悪心 11 (11%) 0 77 (74%) 2 (2%)
下痢 9 (9%) 0 76 (73%) 2 (2%)
便秘 36 (35%) 1 (1%) 46 (44%) 1 (1%)
嘔吐 6 (6%) 0 60 (58%) 2 (2%)
口内炎 12 (12%) 0 10 (10%) 0
食道炎 0 0 11 (11%) 2 (2%)
AST上昇 11 (1%) 1 (1%) 32 (31%) 5 (5%)
ALT上昇 9 (9%) 1 (1%) 33 (32%) 13 (13%)
CK上昇 18 (17%) 5 (5% 11 (11%) 3 (3%)
好中球減少 3 (3%) 2 (2%) 19 (18%) 14 (14%)
CRE上昇 11 (11%) 0 9 (9%) 0
QT延長 3 (3%) 2 (2%) 15 (14%) 7 (7%)
味覚障害 19 (18%) 0 54 (52%) 0
視力障害 1 (1%) 0 57 (55%) 0
発熱 10 (10%) 1 (1%) 21 (20%) 0
倦怠感 10 (10%) 0 19 (18%) 0
浮腫 9 (9%) 0 19 (18%) 1 (1%)
皮膚発赤 13 (13%) 0 17 (16%) 1 (1%)
皮膚乾燥 8 (8%) 0 8 (8%) 0
皮膚掻痒 4 (4%) 0 8 (8%) 0
斑状丘疹 6 (6%) 3 (3%) 6 (6%) 1 (1%)
間質性肺疾患 8 (8%) 5 (5%) 8 (8%) 3 (3%)
食思不振 1 (1%) 1 (1%) 21 (20%) 1 (1%)
結語
ALK阻害剤未治療かつ化学療法が1レジメン以下のALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌患者において、ALC群はCRZ群と比較して有意に無増悪生存期間を延長させ、かつ安全性も良好な結果だった。
本試験は、ALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌患者の初回標準治療において、ALC群とCRZ群を直接比較した初めての無作為化比較第3相試験であり、標準治療を変えうる結果を示した。
関連論文
・ Final progression-free survival results from the J-ALEX study of alectinib versus crizotinib in ALK-positive non-small-cell lung cancer.
Lung Cancer. 2020 Jan;139:195-199. doi: 10.1016/j.lungcan.2019.11.025. Epub 2019 Nov 28. [pubmed]
・ Analysis of central nervous system efficacy in the J-ALEX study of alectinib versus crizotinib in ALK-positive non-small-cell lung cancer.
Lung Cancer. 2018 Jul;121:37-40. doi: 10.1016/j.lungcan.2018.04.015. Epub 2018 Apr 17. [pubmed]
執筆:琉球大学大学院医学部研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座 医員 柴原 大典 先生
監修:市立岸和田市民病院 腫瘍内科 医長 谷崎 潤子 先生

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