対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
---|---|---|---|---|---|
肺癌 | 二次治療 | 第3相 | 全生存期間 | 日本 | あり |
試験名 :JCOG0605
レジメン:CDDP+ETP+CPT-11(PEI) vs NGT
登録期間:2007年9月20日〜2012年11月30日
背景
小細胞肺癌は、化学療法への感受性の高い固形腫瘍のひとつである。二次治療の有効性を予測するためには、一次治療への奏効、および一次治療の最終投与から再発までの期間の2つの主要な因子が重要であり、再発小細胞肺癌は、一般的に初回治療が奏効し初回治療終了から再発までが60~90日以上のsensitive relapseとそれ以外のrefractory relapseに分類されている。
再発小細胞肺癌の二次治療として、トポテカン(NGT)は、BSCと比較し全生存期間を延長することが示され(O'Brien ME, et al. J Clin Oncol. 2006;24(34):5441-7.)、NGT療法は再発小細胞肺癌に対する標準的な二次治療と考えられるようになった。
再発小細胞肺癌に対する化学療法において、イリノテカン(CPT-11)、エトポシド(ETP)の有効性が期待されるようになり、JCOGでは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を支持療法として用いたシスプラチン(CDDP)+ETP+CPT-11からなる化学療法レジメン(PEI)を設計した。第1相試験(JCOG9507)にて推奨用量が設定され(Sekine I, et al. Br J Cancer. 2003;88(6):808-13.)、第2相試験にて感受性再発小細胞肺癌では奏効割合 78%、全生存期間中央値 11.8か月と良好な治療成績が報告された(Goto K, et al. Br J Cancer. 2004;91(4):659-65.)。これらの結果に基づき、感受性再発小細胞肺癌を対象として、標準的治療のNGT療法に対するPEI療法の優越性を検証する第3相試験が計画された。
再発小細胞肺癌の二次治療として、トポテカン(NGT)は、BSCと比較し全生存期間を延長することが示され(O'Brien ME, et al. J Clin Oncol. 2006;24(34):5441-7.)、NGT療法は再発小細胞肺癌に対する標準的な二次治療と考えられるようになった。
再発小細胞肺癌に対する化学療法において、イリノテカン(CPT-11)、エトポシド(ETP)の有効性が期待されるようになり、JCOGでは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を支持療法として用いたシスプラチン(CDDP)+ETP+CPT-11からなる化学療法レジメン(PEI)を設計した。第1相試験(JCOG9507)にて推奨用量が設定され(Sekine I, et al. Br J Cancer. 2003;88(6):808-13.)、第2相試験にて感受性再発小細胞肺癌では奏効割合 78%、全生存期間中央値 11.8か月と良好な治療成績が報告された(Goto K, et al. Br J Cancer. 2004;91(4):659-65.)。これらの結果に基づき、感受性再発小細胞肺癌を対象として、標準的治療のNGT療法に対するPEI療法の優越性を検証する第3相試験が計画された。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
本試験の主要評価項目は全生存期間であった。全生存期間中央値をNGT 8ヵ月、PEI 12ヵ月と仮定し、検出力 80%、片側α=0.05、HR 0.67、登録期間4年、観察期間1年と設定すると、174例の患者(151例のイベント)が必要と算出された。不適格患者を想定し、本試験のサンプルサイズは180例とされた。試験結果:
- 2007年9月20日~2012年11月30日の期間に29施設より180例が登録され、PEI群、NGT群それぞれ90例が割り付けられた。すべての割り付けられた患者が有効性・安全性解析に含められた。
- データカットオフは2014年2月20日で、最終解析は2014年3月18日に行った。
- NGT群の4例、PEI群の1例が不適格であった。
- 追跡期間中央値は22.7ヵ月であった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.67 (90% CI 0.51-0.88) P=0.0079 |
|
NGT | 12.5ヵ月 | 10.8-14.9 | |
PEI | 18.2ヵ月 | 15.7-20.6 |
2. 無増悪生存期間
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.50 (95% CI 0.37-0.68) P<0.0001 |
|
NGT | 3.6ヵ月 | 3.0-4.4 | |
PEI | 5.7ヵ月 | 5.2-6.2 |
3. 奏効割合
奏効割合 | 95%信頼区間 | Risk ratio 0.32 (95% CI 0.22-0.46) P<0.0001 |
|
NGT | 27% | 18%-37% | |
PEI | 84% | 75%-91% |
4. 有害事象
NGT (N=90) | PEI (N=90) | |||||
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Grade 1 or 2 | Grade 3 | Grade 4 | Grade 1 or 2 | Grade 3 | Grade 4 | |
白血球減少 | 48% | 47% | 4% | 17% | 46% | 34% |
好中球数減少 | 14% | 52% | 33% | 11% | 26% | 58% |
貧血 | 61% | 24% | 3% | 13% | 56% | 29% |
血小板数減少 | 50% | 21% | 7% | 37% | 30% | 11% |
低アルブミン血症 | 74% | 0% | - | 91% | 1% | - |
高ビリルビン血症 | 21% | 0% | 0% | 27% | 2% | 0% |
ALT上昇 | 36% | 1% | 0% | 33% | 1% | 1% |
AST上昇 | 26% | 0% | 0% | 19% | 1% | 1% |
クレアチニン上昇 | 36% | 0% | 0% | 41% | 1% | 0% |
低ナトリウム血症 | 36% | 10% | 1% | 56% | 13% | 3% |
高カリウム血症 | 23% | 0% | 0% | 42% | 1% | 0% |
低カリウム血症 | 4% | 0% | 0% | 24% | 4% | 1% |
発熱 | 14% | 1% | 0% | 28% | 0% | 0% |
疲労 | 37% | 1% | 0% | 53% | 1% | 1% |
脱毛 | 28% | - | - | 63% | - | - |
皮疹 | 6% | 0% | 0% | 14% | 0% | 0% |
食欲不振 | 47% | 4% | 0% | 63% | 4% | 0% |
下痢 | 13% | 0% | 0% | 58% | 6% | 2% |
粘膜炎(臨床所見) | 8% | 0% | 0% | 18% | 0% | 0% |
粘膜炎(徴候) | 7% | 0% | 0% | 10% | 0% | 0% |
悪心 | 43% | 2% | 0% | 54% | 0% | 1% |
嘔吐 | 9% | 0% | 0% | 20% | 0% | 0% |
便秘 | 40% | 1% | 0% | 60% | 0% | 0% |
発熱性好中球減少 | - | 7% | 0% | - | 29% | 2% |
呼吸困難 | 4% | 1% | 1% | 6% | 2% | 1% |
肺臓炎 | 0% | 1% | 1% | 1% | 1% | 0% |
肺感染 | 1% | 3% | 1% | 1% | 2% | 0% |
結語
一次治療に感受性のあった再発小細胞肺癌に対して、PEI療法はNGT療法よりも全生存期間を延長し、奏効割合が高かった。このため、PEI療法は、全身状態が良好な感受性再発小細胞肺癌患者に対する標準治療のひとつと考えられる。
執筆:厚木市立病院 呼吸器内科 医長 田村 休応 先生
監修:国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科 医員 大熊 裕介 先生
監修:国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科 医員 大熊 裕介 先生