肺癌 JCOG9511

Irinotecan plus cisplatin compared with etoposide plus cisplatin for small cell lung cancer: a randomized clinical trial(JCOG9511試験)

Noda K, Nishiwaki Y, Kawahara M, et al. N Engl J Med. 2002; 346(2):85-91. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
進展型小細胞肺癌 一次治療 第3相 全生存期間 日本(JCOG) あり

試験名 :進展型小細胞肺癌におけるシスプラチン+イリノテカンvs シスプラチン+エトポシドの多施設ランダム化第3相比較試験(JCOG9511試験)

レジメン:CDDP+CPT-11 vs CDDP+ETP

登録期間:1995年11月~1998年11月

背景

トポイソメラーゼⅠ阻害薬であるイリノテカン(CPT-11)は、進展型小細胞肺癌に対するシスプラチン(CDDP)+CPT-11併用療法の第2相試験で完全奏効(CR)割合29%、奏効割合86%、生存期間(OS)中央値13.2ヵ月と有望な結果を示した。
本試験は、進展型小細胞肺癌に対する標準治療のひとつであるCDDP+エトポシド(ETP)併用療法に対するCDDP+CPT-11併用療法のOSの優越性を検証した第3相試験である。

シェーマ

※割付因子:施設、PS

統計学的事項

本試験の主要評価項目はOS、副次評価項目はCR割合、奏効割合、無増悪生存期間(PFS)、有害事象などとした。
CDDP+ETP群を対照として、CDDP+CPT-11 群のOSのハザード比(HR)が0.69となる(OS中央値;CDDP+CPT-11:13ヵ月、CDDP+ETP群:9ヵ月)と仮定した。これを片側タイプⅠエラー 0.05、検出力80%で示すために230名の登録を予定した。2回の中間解析を予定し、1回目は登録数が予定の半分に達した時点、2回目は予定数に達した時点とした。

試験結果:

  • 1995年11月から1998年11月まで154名が登録され、両群に77名ずつが割り付けられた。1回目の中間解析の結果を受け2回目の中間解析が早められ、OSにP<0.001と両群間に大きな差を認めたため、効果安全性評価委員会により試験の早期終了が勧告され、予定の230名に到達する前に登録を終了した。
  • OSの中央値はCDDP+CPT-11群で12.8ヵ月、CDDP+ETP群で9.4ヵ月であり、OSの有意な延長を認めた(P=0.002)。
  • PFS、奏効割合ともにCDDP+CPT-11群で良好な結果であった。
  • 骨髄抑制は両群で頻度の高い有害事象であったが、Grade3以上の好中球数減少と白血球減少、血小板数減少はCDDP+ETP群でより多かった。下痢はCDDP+CPT-11群で多かった。
  • CDDP+CPT-11群の1名の治療中にGrade1の下痢を認めたが投与を継続し、その後好中球数減少と下痢により死亡した。その他の症例では治療のスキップにより下痢による死亡はなかった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  中央値(95%信頼区間) P=0.002
CDDP+CPT-11(n=77) 12.8ヵ月(11.7-15.2ヵ月)
CDDP+ETP (n=77) 9.4ヵ月(8.1-10.8ヵ月)
2. 完全奏効割合、奏効割合
  CR割合(95%信頼区間) 奏効割合(95%信頼区間) 奏効割合
P=0.02
CDDP+CPT-11(n=77) 2.6%(0.3-9.1) 84.4%(74.4-91.7%)
CDDP+ETP (n=77) 9.1%(3.7-17.8) 67.5%(55.9-77.8%)
3. 無増悪生存期間
  中央値(95%信頼区間) P=0.003
CDDP+CPT-11(n=77) 6.9ヵ月(6.1-7.3ヵ月)
CDDP+ETP (n=77) 4.8ヵ月(4.3-5.5ヵ月)
4. 有害事象(JCOG Toxicity Criteria)
  CDDP+CPT-11 (n=75) CDDP+ETP(n=77)
  全グレード グレード≧3 全グレード グレード≧3
血液毒性        
 好中球数減少 98.7% 65.4% 98.7% 92.2%
 白血球減少 98.7% 26.7% 97.4% 51.9%
 貧血 90.7% 26.7% 97.4% 29.9%
 血小板数減少症 24.0% 5.3% 59.7% 18.2%
非血液毒性        
 下痢 69.3% 16.0% 16.9% 0%
 悪心・嘔吐 85.3% 13.3% 83.1% 6.5%
 感染症 40.0% 5.3% 45.5% 3.9%
 動脈血中酸素分圧の低下* 67.5% 5.0% 75.0% 5.8%
 ALT上昇 53.3% 4.0% 48.1% 3.9%
 AST上昇 46.7% 0% 36.4% 2.6%
 発熱 40.0% 1.3% 41.6% 2.6%
 ビリルビン増加 21.3% 0% 26.0% 0%
 クレアチニン増加 25.3% 0% 27.3% 0%
 末梢神経障害 5.3% 0% 14.3% 0%

*:CDDP+CPT-11群で35例、CDDP+ETP群で25例がデータの欠損。

結語
本試験でCDDP+ETPに対するCDDP+CPT-11のOSの有意な延長が示された。CDDP+CPT-11群では血液毒性は軽度で、下痢が多かった。
CDDP+CPT-11は下痢に注意を要するが、OSを有意に延長しPFSや奏効割合においても良好な結果を示しており、日本においては進展型小細胞肺癌における標準的な治療となった。
その後海外で追試された複数の第3相試験でOSの優越性は示されなかったが、これらの試験のメタ解析でCDDP+CPT-11療法がOSを延長する傾向が示されている。
執筆:横浜市立大学附属病院 呼吸器内科学 堂下 皓世 先生
監修:順天堂大学大学院 医学研究科 呼吸器内科学 助教 朝尾 哲彦 先生

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