肺癌 JMDB

Phase Ⅲ study comparing cisplatin plus gemcitabine with cisplatin plus pemetrexed in chemotherapy-naive patients with advanced-stage non-small-cell lung cancer

Scagliotti GV, Parikh P, von Pawel J, et al. J Clin Oncol. 2008; 26(21): 3543-51. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
進行非小細胞肺癌 一次治療 第3相 全生存期間 国際 なし

試験名 :JMDB

レジメン:ペメトレキセド + シスプラチン vs ゲムシタビン + シスプラチン

登録期間:2004年7月〜2005年12月

背景

進行(ステージⅢBまたはⅣ期)非小細胞肺癌患者の標準治療は、プラチナ製剤(シスプラチン(CDDP)またはカルボプラチン)と第三世代細胞傷害性抗癌剤(ゲムシタビン(GEM)、ビノレルビン、タキサン)の併用療法である。ペメトレキセド(PEM)は、新規葉酸代謝拮抗剤で、CDDPとの併用療法で悪性胸膜中皮腫に対する一次治療として、さらに単剤療法で進行非小細胞肺癌の二次治療としても承認された有望な薬剤である。また、未治療非小細胞肺癌に対する第2相試験において、PEMとプラチナ製剤との併用療法がその他のプラチナ併用療法と比較しより良い効果及び安全性が示唆された。本試験(JMDB試験)は、未治療進行非小細胞肺癌患者におけるPEM+CDDP併用療法(PC群)のGEM+CDDP併用療法(GC群)に対する非劣性を検証するための無作為化比較第3相試験である。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

GC群を対照としてPC群の非劣勢を検証した(非劣性マージン1.176、片側α=0.025、検出力=80%)。
最終解析は1190イベントに達した時点で実施した。また、事前に規定されたサブグループ解析として組織型による生存期間の解析が行われた。主な副次評価項目は、無増悪生存期間、奏効割合、奏効期間、有害事象とした。

試験結果:

  • 2004年7月〜2005年12月の間に計1725例が登録された(PC群862例、GC群863例)。
  • 患者背景に偏りは見られなかった。
  • 安全性の解析は、計1669例[PC群830例(96.2%)、GC群839例(97.3%)]に対して行われた。
  • 両群とも投与サイクル中央値は5サイクルだったが、延期・減量・休薬の頻度はPC群で少ない傾向だった。
  • PC群の減量の主な理由は好中球減少で、GC群の減量理由は、好中球減少、血小板減少、発熱性好中球減少症、白血球減少だった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
全症例 中央値 95% CI HR 0.94     
(95% CI: 0.84-1.05)
PC群 10.3ヶ月 9.8-11.2
GC群 10.3ヶ月 9.6-10.9
2. 無増悪生存期間
全症例 中央値 95% CI HR 1.04     
(95% CI: 0.94-1.15)
PC群 4.8ヶ月 4.6-5.3
GC群 5.1ヶ月 4.6-5.5

奏効割合は同程度であったが(PC群30.6% vs GC群28.2%)、奏効期間はGC群の方がPC群より長かった(PC群4.5ヶ月 vs GC群5.1ヶ月、有意差なし)。

3. 組織別生存期間
  PC群 GC群    
  中央値 中央値 HR (95% CI) p
非扁平上皮癌 (n=1,000) 11.8ヶ月 10.4ヶ月 0.81 (0.70-0.94) 0.005
・腺癌(n=847) 12.6ヶ月 10.9ヶ月 0.84 (0.71-0.99) 0.03
・大細胞癌 (n=153) 10.4ヶ月 6.7ヶ月 0.67 (0.48-0.96) 0.03
扁平上皮癌 (n=473) 9.4ヶ月 10.8ヶ月 1.23 (1.00-1.51) 0.05

治療と独立した予後規定因子は、性別、人種、パフォーマンスステータス、病期、組織型だった(p<0.05)。

4. 有害事象(NCI CTCAE ver.2.0)
有害事象(Grade 3-4) PC群 (n=839) GC群 (n=830)  
  n % n % p
好中球減少 127 15.1 222 26.7 <0.001
貧血 47 5.6 82 9.9 0.001
血小板減少 34 4.1 105 12.7 <0.001
白血球減少 40 4.8 63 7.6 0.019
発熱性好中球減少症 11 1.3 31 3.7 0.002
脱毛 100 11.9 178 21.4 <0.001
悪心 60 7.2 32 3.9 0.004
嘔吐 51 6.1 51 6.1 1.000
脱水 30 3.6 17 2.0 0.075
倦怠感 56 6.7 41 4.9 0.143
結語
進行非小細胞肺癌患者の一次治療として、PC群はGC群と同等の有効性を有し、さらにはより良い忍容性及び投与が簡便であることを証明した。特に非扁平上皮癌においては、推奨レジメンとなりうる結果を示した。また、同時に本試験は、組織型別によるレジメン毎の有効性の違いを示した初めての前向き第3相試験である。
関連論文
・ Efficacy and safety of cisplatin/pemetrexed versus cisplatin/gemcitabine as first-line treatment in East Asian patients with advanced non-small cell lung cancer: results of an exploratory subgroup analysis of a phase III trial. J Thorac Oncol. 2010; 5 (5) : 688-95. [pubmed]
執筆:琉球大学大学院医学部研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座 医員 柴原 大典 先生
監修:市立岸和田市民病院 腫瘍内科 医長 谷崎 潤子 先生

臨床試験サマリ一覧へ