肺癌 OAK

Atezolizumab versus docetaxel in patients with previously treated non-small-cell lung cancer (OAK): a phase 3, open-label, multicentre randomised controlled trial

Rittmeyer A, et al. Lancet 2017; 389: 255–65. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
非小細胞肺癌 二次治療
三次治療
第3相 全生存期間 国際 あり

試験名 :OAK

レジメン:アテゾリズマブ vs ドセタキセル

登録期間:2014年3月11日〜 2015年4月29日

背景

非小細胞肺癌において、PD-1阻害薬であるニボルマブやペムブロリズマブはドセタキセル(DOC) と比較して全生存期間を延長することが示されてきた。アテゾリズマブ(Atezo)は抗PD-L1抗ヒト化モノクローナル抗体であり、PD-L1だけでなくB7-1 (CD80) も阻害することから、PD-1阻害薬とは異なる効果が得られる可能性があった。第2相試験であるPOPLAR試験でAtezoがDOCに比して全生存期間を延長したことを受けて、今回第3相試験であるOAK試験が行われた。

シェーマ

層別化因子:PD-L1発現 (IC0 vs IC1 vs IC2 vs IC3), 前治療レジメン数 (1 vs 2), 組織型 (非扁平上皮 vs 扁平上皮)

統計学的事項

主要評価項目:

本試験の主要評価項目はintention-to-treat (ITT) 集団及びPD-L1 TC1/2/3またはIC1/2/3の集団 (腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1 発現≧1%) における全生存期間(OS)とした。
ITT集団における、DOCに対するAtezoのOSのハザード比 (HR) を0.73 (OS中央値: DOC群10ヶ月, Atezo群 13.7ヶ月), 両側α 3%, 検出力 95.3%とし、TC1/2/3またはIC1/2/3集団におけるHR を0.63, 両側α 2%, 検出力 98.6%としたところ、850例の登録が必要となると考えられた (全体のαを両側5%に調整)。
当初、予定症例数は850例 (一次解析対象集団)であったが、PD-L1強発現 (TC3またはIC3) 集団における比較を行うために、プロトコール改訂により1300例に変更された。
注:TC: 腫瘍細胞 (tumor cell) におけるPD-L1発現スコア、IC: 腫瘍浸潤免疫細胞 (tumor-infiltrating immune cell) におけるPD-L1発現スコア (PD-L1免疫染色はSP142クローンを用いて行われた)
TC0: PD-L1発現<1%; TC1: PD-L1発現1-5%; TC2: PD-L1発現5-50%; TC3: PD-L1発現≧50%
IC0: PD-L1発現<1%; IC1: PD-L1発現1-5%; IC2: PD-L1発現5-10%; IC3: PD-L1発現≧10%

試験結果:

  • 2014年3月~2015年4月の期間に194施設から1225例が登録された。このうち一次解析対象集団は850例で、Atezo群に425例、DOC群に425例が割り付けられた。一次解析対象集団のフォローアップ期間中央値は全群で21か月であった。
  • 患者背景は各群で差を認めなかった。
  • DOC群では、試験治療終了後に17%で後治療として免疫チェックポイント阻害剤が投与された。
1. 全生存期間(主要評価項目)
ITT
  中央値 95%信頼区間 HR 0.73     
(95%CI 0.62-0.87)
p=0.0003    
Atezo (n=425) 13.8ヶ月 11.8-15.7
DOC (n=425) 9.6ヶ月 8.6-11.2
TC1/2/3またはIC1/2/3 (PD-L1発現≧1%)
  中央値 95%信頼区間 HR 0.74     
(95%CI 0.58-0.93)
p=0.0102    
Atezo (n=425) 15.7ヶ月 12.6-18.0
DOC (n=425) 10.3ヶ月 8.8-12.0
TC0かつIC0 (PD-L1発現<1%)
  中央値 95%信頼区間 HR 0.75     
(95%CI 0.59-0.96)
p=0.0215    
Atezo (n=425) 12.6ヶ月 9.6-15.2
DOC (n=425) 8.9ヶ月 7.7-11.5
  • 主要評価項目であるOS中央値は、ITT集団, TC1/2/3またはIC1/2/3集団のいずれにおいてもAtezo群で統計学的に有意に延長した。
  • PD-L1発現がない (TC0かつIC0) 集団においてもAtezo群でOSを延長した。
2. 無増悪生存期間
ITT
  中央値 95%信頼区間 HR 0.95      
(95%CI 0.82-1.10)
P=0.4928    
Atezo (n=425) 2.8ヶ月 2.6-3.0
DOC (n=425) 4.0ヶ月 3.3-4.2
TC1/2/3またはIC1/2/3 (PD-L1発現≧1%)
  中央値 95%信頼区間 HR 0.91     
(95%CI 0.74-1.12)
P=0.3806    
Atezo (n=425) 2.8ヶ月 2.6-4.0
DOC (n=425) 4.1ヶ月 2.9-4.3
TC0かつIC0 (PD-L1発現<1%)
  中央値 95%信頼区間 HR 1.00     
(95%CI 0.80-1.25)
P=0.9924    
Atezo (n=425) 2.6ヶ月 1.7-2.9
DOC (n=425) 4.0ヶ月 3.1-4.2
  • PFSは両群で有意差を認めなかった (ITT集団、TC1/2/3またはIC1/2/3集団)。
  • TC3またはIC3集団に限り無増悪生存期間の延長を認めた(HR0.63; 95%CI 0.43-0.91; p=0.0123)。
3. 奏効割合
ITT
  奏効割合
Atezo (n=425) 14%
DOC (n=425) 13%
TC1/2/3またはIC1/2/3 (PD-L1発現≧1%)
  奏効割合
Atezo (n=425) 18%
DOC (n=425) 16%
  • 奏効割合は両群で同程度であった (ITT集団、TC1/2/3またはIC1/2/3集団)。
4. 有害事象 (安全性解析対象集団)
  ATEZO (N=609) DOC (N=578)
  Any grade Grade 3-4 Any grade Grade 3-4
全治療関連有害事象 390(64%) 90(15%) 496(86%) 247(43%)
倦怠感 163(26.8%) 17 (2.8%) 205 (35.5%) 23 (4.0%)
食思不振 143 (23.5%) 2 (0.3%) 136 (23.5%) 9 (1.6%)
咳嗽 141 (23.2%) 2 (0.3%) 105 (18.2%) 1 (0.2%)
悪心 108 (17.7%) 4 (0.7%) 131 (22.7%) 2 (0.3%)
下痢 94 (15.4%) 4 (0.7%) 141 (24.4%) 11 (1.9%)
疲労 116 (19.0%) 8 (1.3%) 114 (19.7%) 13 (2.2%)
息切れ 118 (19.4%) 15 (2.5%) 112 (19.4%) 14 (2.4%)
貧血 70 (11.5%) 14 (2.3%) 136 (23.5%) 33 (5.7%)
脱毛 3 (0.5%) 0 202 (34.9%) 1 (0.2%)
便秘 107 (17.6%) 2 (0.3%) 82 (14.2%) 1 (0.2%)
発熱 108 (17.7%) 1 (0.2%) 76 (13.1%) 1 (0.2%)
浮腫 54 (8.9%) 1 (0.2%) 82 (14.2%) 3 (0.5%)
嘔吐 74 (12.2%) 2 (0.3%) 62 (10.7%) 4 (0.7%)
関節痛 73 (12.0%) 3 (0.5%) 58 (10.0%) 1 (0.2%)
筋痛 39 (6.4%) 1 (0.2%) 91 (15.7%) 4 (0.7%)
背部痛 67 (11.0%) 7 (1.1%) 42 (7.3%) 4 (0.7%)
好中球減少症 10 (1.6%) 3 (0.5%) 90 (15.6%) 75 (13.0%)
末梢神経障害 24 (3.9%) 0 65 (11.2%) 7 (1.2%)
筋骨格系の疼痛 64 (10.5%) 4 (0.7%) 25 (4.3%) 1 (0.2%)
口内炎 19 (3.1%) 1 (0.2%) 63 (10.9%) 11 (1.9%)
味覚障害 18 (3.0%) 0 58 (10.0%) 0
発熱性好中球減少症 1 (0.2%) 1 (0.2%) 62 (10.7%) 62 (10.7%)
  • 免疫関連有害事象としては肺臓炎を6例(1%)、肝炎を2例(<1%)、大腸炎を2例(<1%)に認めた。
  • 有害事象による中止はAtezo群で8%, DOC群で19%であった。Atezo群では治療関連死亡はなかった。
5. PFSのサブグループ解析
  • OSのサブグループ解析では、PD-L1発現レベル、年齢 (65歳以上, 65歳未満)、組織型(非扁平上皮癌, 扁平上皮癌)、脳転移の有無に関わらずAtezo群でOSが良好であった。
  • ただし、EGFR変異症例ではDOC群でOSが良好な傾向を示した(HR1.24 [95%CI 0.71-2.18))。
結語
既治療進行非小細胞肺癌において、AtezoはPD-L1の発現量に関わらずDOCより全生存期間を統計学的に有意に延長した。毒性は許容されるものであった。
執筆:慶應義塾大学病院 呼吸器内科 助教 堀内 康平 先生
監修:順天堂大学大学院 医学研究科 呼吸器内科学 助教 朝尾 哲彦 先生

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