対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
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肺癌 | 一次治療 | 第3相 | 無増悪生存期間 | 国際共同 | なし |
試験名 :PARAMOUNT
レジメン:Maintenance PEM vs Placebo Following CDDP+PEM
登録期間:2008年11月19日〜2010年4月23日
背景
未治療進行非扁平上皮非小細胞肺癌の患者では、一次治療においてシスプラチン(CDDP)+ゲムシタビン(GEM)療法と比較し、CDDP+ペメトレキセド(PEM)療法は全生存期間を延長する傾向(11.8ヵ月 vs 10.4ヵ月、HR 0.81、95%CI 0.70-0.94)にあり(Scagliotti GV, et al. J Clin Oncol. 2008 Jul 20;26(21):3543-51.)、また、PEMを含まないプラチナ併用療法後のPEM維持療法(スイッチメンテナンスswitch maintenance療法もしくは早期2次治療early second-line)の有効性も示されていた(Ciuleanu T, et al. Lancet. 2009;374(9699):1432-40.)。しかし、CDDP+PEM導入療法後のPEM維持療法の有用性は明らかにされていない。導入療法中に有効性と忍容性が認められている薬剤を維持療法として継続することで、有効な治療を継続する利点と単剤治療の安全性を両立させることができる。このため、CDDP+PEM 4サイクルの導入療法中に病勢が進行しなかった進行非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象として、PEM維持療法が無増悪生存期間を改善するかどうかを検証するため、二重盲検多施設共同第3相の無作為化プラセボ対照試験が実施された。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:無増悪生存期間
本試験の主要評価項目は無増悪生存期間であった。無増悪生存期間について、検出力 90%、HR 0.65(両側α=0.05)と仮定し、238例のイベント(52%打ち切り)を得るために、558例の割り付けが必要であるとされた。すべての割り付けられた患者について、有効性・安全性解析を行うこととされた。なお、副次的評価項目である全生存期間について、gate-keeping法で解析することがあらかじめ規定されていた。無増悪生存期間は割り付け日から病勢進行を認めた日または死亡した日までと定義された。全生存期間は割り付け日から死亡した日までと定義された。
試験結果:
- 2008年11月19日~2010年4月23日の期間に83施設より939例が登録され、637例(68%)がCDDP+PEM 4サイクルを完遂した。CR/PRは283例(30%)、CR/PR/SDは700例(75%)であった。
- 539例が維持療法群に割り付けられ、PEM群は359例、placebo群は180例であった。
- データカットオフは2010年6月30日であった。追跡期間中央値は5.0ヵ月であった。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.62 (95%CI 0.49-0.79) P<0.0001 |
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プラセボ | 2.8ヵ月 | 2.6-3.1 | |
PEM維持療法 | 4.1ヵ月 | 3.2-4.6 |
2. 全生存期間(Paz-Ares LG, et al. J Clin Oncol. 2013;31(23):2895-902.)
中央値 | 95%信頼区間 | HR 0.78 (95%CI 0.64-0.96) p=0.0195 |
|
プラセボ | 11.0ヵ月 | 10.0-12.5 | |
PEM維持療法 | 13.9ヵ月 | 12.8-16.0 |
3. 奏効割合
奏効割合 | 95%信頼区間 | p=0.18 | |
プラセボ | 0.6% | 0.02%-3.5% | |
PEM維持療法 | 3% | 1.3%-5.3% |
4. 有害事象
Placebo (n=180) | PEM (n=359) | |||
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All grades | Grade 3-5 | All grades | Grade 3-5 | |
貧血 | 4% | <1% | 14% | 4% |
好中球数減少 | <1% | 0% | 8% | 4% |
白血球減少 | 0% | 0% | 4% | 2% |
血小板数減少 | <1% | 0% | 3% | 1% |
ALT上昇 | <1% | 0% | 3% | <1% |
疲労 | 11% | <1% | 16% | 4% |
悪心 | 2% | 0% | 11% | <1% |
嘔吐 | 2% | 0% | 6% | 0% |
粘膜炎・胃炎 | 2% | 0% | 5% | <1% |
浮腫 | 3% | 0% | 5% | 0% |
食欲不振 | 1% | 0% | 4% | <1% |
疼痛 | 2% | 0% | 4% | <1% |
感染 | 2% | 1% | 3% | 1% |
下痢 | 2% | 0% | 3% | 0% |
末梢性感覚ニューロパチー | 6% | <1% | 3% | <1% |
流涙 | <1% | 0% | 3% | 0% |
便秘 | 3% | 0% | 2% | 0% |
結語
未治療進行非扁平上皮非小細胞肺癌患者において、PEM+CDDP導入療法後に病勢進行を認めない症例に対しては、PEM単剤による維持療法がプラセボ投与と比べ、無増悪生存期間、全生存期間について優越性が示されたため、ペメトレキセド単剤による維持療法が標準治療となった。
執筆:厚木市立病院 呼吸器内科 医長 田村 休応 先生
監修:国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科 医員 大熊 裕介 先生
監修:国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科 医員 大熊 裕介 先生