対象疾患 | 治療ライン | 研究の相 | 主要評価項目 | 実施地域 | 日本の参加 |
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進行非小細胞肺癌 | 一次治療 | 第3相 | 全生存期間 | ブラジルと米国 | なし |
試験名 :なし
レジメン:ペメトレキセド vs ペメトレキセド + カルボプラチン
登録期間:2008年4月〜2011年7月
背景
進行非小細胞肺癌患者において、ECOG Performance status(PS)2の患者が占める割合は多いが、ランダム化試験のデータがなくガイドラインも明確なものに乏しく、実臨床における治療は定まっていない。そこで本ランダム化第3相試験では、PS2の進行非小細胞肺癌患者に対する一次治療として、ペメトレキセド(PEM)単剤療法(P群)とPEM+カルボプラチン(CBDCA)併用療法(PC群)が比較された。
シェーマ
統計学的事項
主要評価項目:全生存期間
PEM+CBDCA併用療法の生存期間中央値を4.3ヶ月、PEM単剤療法の生存期間中央値を2.9ヶ月、ハザード比を0.674と仮定し、両側α=5%、検出力80%で必要数を208症例とした。副次評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、有害事象とした。試験結果:
- 2008年4月〜2011年7月の間に計217例が登録された(P群109例、PC群108例)。
- P群の7例、PC群の5例は不適格で除外された(癌性胸水を有さないⅢB期:4例、コントロール不能な脳神経病変:2例、評価可能病変を有さない:1例、GFR<45 mL/min:2例、肝機能障害:2例、既治療:1例)
- 上記12例を除いた計205例のうち、P群102例、PC群103例で患者背景はほぼ均等であったが、組織型においては扁平上皮癌の割合がP群で多かった(P群10.8%、PC群2.9%)。
1. 全生存期間(主要評価項目)
全症例 | 中央値 | 95% CI | HR 0.62 (95% CI: 0.46-0.83) p=0.001 |
P群 | 5.3ヶ月 | 4.1-6.5 | |
PC群 | 9.3ヶ月 | 7.4-11.2 |
2. 無増悪生存期間
全症例 | 中央値 | 95% CI | HR 0.46 (95% CI: 0.35-0.63) p<0.001 |
P群 | 2.8ヶ月 | 2.5-3.2 | |
PC群 | 5.8ヶ月 | 4.7-6.9 |
・扁平上皮及び組織型不明を除いた解析でも、生存期間及び無増悪生存期間のハザード比は同程度だった。
生存期間 | HR 0.65 | 95% CI 0.47-0.89 | p=0.007 |
無増悪生存期間 | HR 0.46 | 95% CI 0.33-0.63 | p<0.001 |
3. 奏効割合
P群(n=102) | PC群(n=103) | ||
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全奏効割合 | 10.5% | 24% | p=0.032 |
・P群34%、CP群23.3%では奏効割合の評価ができなかったため、それらを除いた値である。
4.投与状況
- 投与サイクル中央値は両群共に4サイクルであったが、4サイクルを完遂できたのは、P群53.9%、PC群70.9%だった(p=0.012)。
- 完遂できなかった主な理由として、早期死亡(P群14.7%、PC群9.7%)、早期疾患進行(P群15.7%、PC群7.8%)、臨床的増悪(P群12.7%、PC群6.8%)、毒性(P群0%、PC群1.9%)、その他(P群4%、PC群2%)だった。
- 治療延期(P群20.6%、PC群44.7%)、投与量の減量(P群2.9%、PC群3.9%)はPC群で多かった。
- 両群共に約35%の症例が二次治療へ移行し、P群はプラチナ併用療法、PC群はドセタキセルの投与の割合が高かった。
5.有害事象(NCI CTCAE ver.3.0)
有害事象 (Grade 3-4) |
P群 (n=102) | PC群 (n=103) | |||
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n | % | n | % | p | |
貧血 | 4 | 3.9 | 12 | 11.7 | 0.07 |
血小板減少 | 0 | 0.0 | 1 | 1.0 | 1.00 |
好中球減少 | 1 | 1.0 | 7 | 6.8 | 0.06 |
発熱性好中球減少症 | 3 | 2.9 | 1 | 1.0 | 0.62 |
嘔気/嘔吐 | 1 | 1.0 | 5 | 4.9 | 0.21 |
下痢 | 2 | 2.0 | 1 | 1.0 | 0.62 |
呼吸困難 | 11 | 10.8 | 6 | 5.8 | 0.19 |
Grade 5の有害事象 | 0 | 0.0 | 4 | 3.9 | 0.12 |
・PC群における4例の治療関連死は、腎不全、敗血症、肺炎、血小板減少症だった。
結語
ECOG PS2の進行非小細胞肺癌患者に対する一次治療において、P群と比較して、PC群は有意に生存期間、無増悪生存期間及び奏効割合を改善させた。貧血や好中球減少といった一部の有害事象頻度が高くなる可能性はあるが、その頻度は少なくコントロール可能だった。PS2の進行非小細胞肺癌患者に対する一次治療として、PEM+CBDCA併用療法は推奨される。
執筆:琉球大学大学院医学部研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座 医員 柴原 大典 先生
監修:市立岸和田市民病院 腫瘍内科 医長 谷崎 潤子 先生
監修:市立岸和田市民病院 腫瘍内科 医長 谷崎 潤子 先生