肺癌 PROFILE 1014

First-Line Crizotinib versus Chemotherapy in ALK-Positive Lung Cancer

Solomon BJ, Mok T, Kim DW, et al. N Engl J Med. 2014;371(23):2167-2177. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
ALK遺伝子転座陽性
非小細胞肺癌
一次治療 第3相 無増悪生存期間 世界 あり

試験名 :PROFILE 1014

レジメン:クリゾチニブ vs シスプラチン or カルボプラチン + ペメトレキセド

登録期間:2011年1月〜2013年7月

背景

EML4-ALK融合遺伝子は曽田、間野らによって2007年に初めて報告された。非小細胞肺癌(NSCLC)において、ALK遺伝子転座陽性例は約3-5%を占める。クリゾチニブ(CRZ)は、ALK遺伝子転座陽性NSCLCに対して最初に承認されたALKチロシンキナーゼ阻害薬 (ALK-TKI) である。本試験は、未治療ALK遺伝子転座陽性非小細胞肺癌の患者を対象として、CRZと、従来の標準治療であるプラチナ併用化学療法を比較した多施設共同無作為化非盲検の第3相試験である。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:無増悪生存期間

本試験はALK遺伝子転座陽性例において、シスプラチンor カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法(化学療法)を対照群として、CRZ単剤群の優越性を検証した第3相試験である。過去の試験結果から、化学療法群の無増悪生存期間(PFS)中央値を6か月とし、CRZ単剤療法がPFSを50%改善すると仮定し (9カ月)、片側α=0.025、検出力=85%と設定すると、必要なPFSのイベント数は計229、必要症例数は計334例となった。

試験結果:

  • 2011年1月〜2013年7月の約2年半で、日本を含む世界の27の国と地域から343例が登録され、CRZ群に172例、化学療法群に171例が割り付けられた。
  • データカットオフは2013年11月30日で、221例のPFSイベントが確認された。
  • 追跡期間中央値は、CRZ群で17.4ヵ月、化学療法群で16.7ヵ月であった。
  • 両群間で患者背景に明らかな差は認められなかった。
1. 独立判定委員会判定による無増悪生存期間(主要評価項目)
  中央値 95%信頼区間 (CI) HR 0.45     
(95%CI: 0.35-0.60)
p < 0.001    
CRZ群 10.9ヵ月 8.3-13.9
化学療法群 7.0ヶ月 6.8-8.2
2. 全生存期間
  中央値 95%CI HR 0.82     
(95%CI 0.54-1.26)
p = 0.36     
CRZ群 未到達 NA
化学療法群 未到達 NA
3. 奏効割合
  中央値 95%CI p < 0.001
CRZ群 74% 67-81%
化学療法群 45% 37-53%
4. 有害事象
  CRZ群 (N=171) 化学療法群 (N=169)
  Grade 1-2 Grade 3-4 Grade 1-2 Grade 3-4
視覚障害 122 (71%) 1 (1%) 16 (9%) 0
下痢 105 (61%) 4 (2%) 22 (13%) 1 (1%)
浮腫 83 (49%) 1 (1%) 21 (12%) 1 (1%)
悪心 95 (56%) 2 (1%) 99 (59%) 3 (2%)
嘔吐 78 (46%) 3 (2%) 60 (36%) 5 (3%)
味覚障害 45 (26%) 0 9 (5%) 0
アミノトランスフェラーゼ上昇 61 (36%) 24 (14%) 22 (13%) 4 (2%)
疲労 49 (29%) 5 (3%) 65 (38%) 4 (2%)
めまい 31 (18%) 0 17 (10%) 2 (1%)
好中球数減少 36 (21%) 19 (11%) 51 (30%) 26 (15%)
貧血 15 (9%) 0 54 (32%) 15 (9%)
血小板数減少 2 (1%) 0 31 (18%) 11 (7%)

CRZ群で化学療法群と比較して5%以上多く認めた有害事象は視覚障害、下痢、浮腫であった。
化学療法群でCRZ群と比較して5%以上多く認めた有害事象は疲労、貧血、好中球数減少であった。
Grade 3 or 4のアミノトランスフェラーゼ (AST / ALT) 上昇はCRZ群で24例 (14%)、化学療法群で4例 (2%) に認めたが、多くがCRZ群の休薬や減量で改善した。
CRZ群の2例 (1%) で間質性肺疾患を認め、CRZが中止された。
有害事象による治療中止はCRZ群で12%、化学療法群で14%に認めた。

5. サブ解析 (無増悪生存期間) (CRZ群 vs 化学療法群)
    症例数 ハザード比 95%信頼区間
全体   343 0.45 0.35-0.60
年齢 ≥65歳 55 0.37 0.17-0.77
  <65歳 288 0.51 0.38-0.68
性別 女性 212 0.45 0.32–0.63
  男性 131 0.54 0.36-0.82
喫煙歴 あり 125 0.64 0.42-0.97
  なし 218 0.41 0.29-0.58
ECOG PS 2 18 0.19 0.05-0.76
  0-1 314 0.47 0.36-0.62
脳転移 あり 92 0.57 0.35–0.93
  なし 251 0.46 0.34–0.63
結語
未治療ALK遺伝子転座陽性NSCLC患者において、CRZはプラチナ併用化学療法と比較して無増悪生存期間の有意な延長を示した。本試験の結果により、CRZは未治療ALK融合遺伝子変異陽性NSCLCの標準治療の一つとなり得ることが示された。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科 レジデント 宮脇 太一 先生
監修:静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科 医長 和久田 一茂 先生

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