肺癌 WJOG5208L

Nedaplatin plus docetaxel versus cisplatin plus docetaxel for advanced or relapsed squamous cell carcinoma of the lung (WJOG5208L): a randomised, open-label, phase 3 trial

T Shukuya, T Yamanaka, T Seto.et al. Lancet Oncol. 2015; 16(16): 1630-38. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
肺扁平上皮癌 一次治療 第3相 全生存期間 日本 あり

試験名 :WJOG5208L

レジメン:CDGP+DOC vs CDDP+DOC

登録期間:2009年7月6日〜2012年7月26日

背景

シスプラチン(CDDP)+ドセタキセル(DOC)は、過去の第3相試験の結果から、肺扁平上皮癌に対する一次治療における、標準治療の一つと位置付けられている。
ネダプラチン(CDGP)はCDDPによる消化器毒性や腎毒性を軽減するために開発された第二世代プラチナ誘導体である。進行・再発肺扁平上皮癌に対するCDGPとDOCの併用療法は、先行研究の第1-2相試験では、奏効割合62%、無増悪生存期間中央値は7.4ヶ月(95% CI 3.5-11.4ヶ月)、生存期間中央値16.1ヶ月と良好な成績を示している。WJOG5208L試験は、未治療進行・再発肺扁平上皮癌に対するCDGP+DOC併用療法の有効性・安全性をCDDP+DOCと比較するために行われた無作為化第3相試験である。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

当初の設定では、生存期間中央値をCDGP併用療法で14ヶ月、CDDP併用療法で10ヶ月、ハザード比(HR)0.78と仮定し、片側α=0.05、検出力80%を得るために必要なサンプルサイズは250例、必要なイベント数は218であった。2011年1月に、データはマスキングした状態で、HRは変更せず、検出力を90%に上昇させることを決定、サンプルサイズが350例、必要イベント数が303に変更された。
2回の中間解析を予定し、1回目はサンプルサイズの半分が無作為に割り付けられた時点(2011年7月1日)、2回目は患者登録が完了した時点(2013年12月12日)で、O’Brien and Fleming型のα消費関数を用いて多重性の調整を行った上で、主要評価項目について解析をおこなった。

試験結果:

  • 2009年7月6日から2012年7月26日までに355人の患者が日本の53施設から登録され、CDGP+DOC群に178例、CDDP+DOC群に177例が割り付けられた。
  • CDGP群のうち1例、CDDP群のうち5例が登録後不適格であったため有効性評価から除外された。また、CDGP群のうち1例、CDDP群のうち2例が試験治療前に脱落したため安全性解析から除外された。
  • 両群間で患者背景の偏りはみられず、治療回数や投与量強度に明らかな差はなかった。
1. 全生存期間

CDGP+DOC併用療法で全生存期間は有意に延長をみとめた。

  中央値 95%信頼区間 HR 0.81     
(95% CI 0.65-1.02)
p=0.037     
CDGP+DOC 13.6ヶ月 11.6-15.6
CDDP+DOC 11.4ヶ月 10.2-12.2
2. 無増悪生存期間

CDGP+DOC併用療法で無増悪生存期間の延長をみとめなかった。

  中央値 95%信頼区間 HR 0.83     
(95% CI 0.67-1.04)
p=0.050     
CDGP+DOC 4.9ヶ月 4.5-5.6
CDDP+DOC 4.5ヶ月 4.2-4.8
3. 奏効割合

奏効割合は両群間で差をみとめなかった。

  CDGP+DOC (n=172) CDDP+DOC (n=168)  
完全奏効(CR) 3(2%) 1(1%)  
部分奏効(PR) 93(54%) 88(52%)  
安定 (SD) 50(29%) 47(30%)  
       
奏効割合 56% 53% p=0.66
病勢制御割合 85% 81% p=0.39
4. 有害事象

Grade3以上の嘔気・疲労・低ナトリウム血症・低カリウム血症はCDGP群で少なく、Grade3以上の白血球減少・好中球減少・血小板数減少はCDGP群で多くみられた。

10%以上の頻度の有害事象

  CDGP+DOC (N=177) , N(%) CDDP+DOC(N=175) , N(%)
  Grade 1-2 Grade 3 Grade 4 Grade 5 Grade 1-2 Grade 3 Grade 4 Grade 5
白血球減少 70(40) 84(48) 14(8) 0 86(49) 64(37) 13(7) 0
好中球減少 24(14) 48(27) 98(55) 0 41(23) 58(33) 65(37) 0
貧血 111(63) 18(10) 2(1) 0 123(70) 26(15) 1(1) 0
血小板減少 59(33) 15(9) 1(1) 0 26(15) 0 0 0
発熱性好中球減少症 0 22(12) 1(1) 1(1) 0 26(15) 1(1) 0
感染 19(11) 29(16) 0 2(1) 20(11) 26(15) 1(1) 1(1)
嘔気 119(67) 7(4) 0 0 113(65) 25(14) 0 0
嘔吐 45(25) 5(3) 0 0 55(31) 6(3) 0 0
食欲不振 120(68) 23(13) 0 0 111(63) 46(26) 0 0
便秘 80(45) 2(1) 0 0 99(57) 0 0 0
下痢 67(38) 7(4) 0 0 85(49) 9(5) 0 0
疲労 117(66) 6(3) 0 0 117(67) 19(11) 1(1) 0
発熱 63(36) 0 0 1(1) 58(33) 1(1) 0 0
皮疹 33(19) 0 0 0 26(15) 1(1) 0 0
粘膜炎 43(24) 1(1) 0 0 28(16) 2(1) 0 0
脱毛症 118(67) 0 0 0 116(66) 0 0 0
感覚神経障害 38(22) 2(1) 0 0 31(18) 1(1) 0 0
腫瘍疼痛 18(10) 2(1) 0 0 16(9) 1(1) 0 0
疼痛 36(20) 0 0 0 33(19) 1(1) 0 0
吃逆 7(4) 0 0 0 33(19) 1(1) 0 0
低アルブミン血症 106(60) 8(5) 0 0 119(68) 3(2) 0 0
ALP増加 49(28) 0 0 0 41(23) 0 0 0
AST増加 70(40) 2(1) 0 0 44(25) 2(1) 0 0
ALT増加 71(40) 3(2) 0 0 59(34) 3(2) 0 0
血中ビリルビン増加 30(17) 2(1) 0 0 18(10) 0 0 0
クレアチニン増加 17(10) 1(1) 0 0 82(47) 3(2) 0 0
低ナトリウム血症 85(48) 23(13) 1(1) 0 90(51) 47(27) 5(3) 1(1)
高カリウム血症 55(31) 4(2) 1(1) 0 57(33) 1(1) 0 0
低カリウム血症 18(10) 4(2) 0 0 38(22) 12(7) 3(2) 0
低カルシウム血症 100(57) 2(1) 0 0 105(60) 4(2) 2(1) 0

その他の特徴的な有害事象

  CDGP+DOC (N=177) , N(%) CDDP+DOC(N=175) , N(%)
  Grade 1-2 Grade 3 Grade 4 Grade 5 Grade 1-2 Grade 3 Grade 4 Grade 5
肺臓炎 4(2) 1(1) 0 1(1) 5(3) 4(2) 0 0
アレルギー反応 12(7) 1(1) 3(2) 0 5(3) 2(1) 0 0
運動性神経障害 5(3) 0 1(1) 0 4(2) 2(1) 0 0
高ナトリウム血症 5(3) 0 0 0 3(2) 0 0 0
高カルシウム血症 3(2) 1(1) 1(1) 0 3(2) 0 0 0
結語
CDGP+DOC併用療法はCDDP+DOC併用療法と比較して全生存期間を有意に延長した。安全性プロファイルは異なり、進行・再発肺扁平上皮癌に対する新しい治療選択肢となりえる。
執筆:千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科 医員 日野 葵 先生
監修:神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長 池田 慧 先生

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