肺癌 WJTOG9904

Phase III Study of Docetaxel Compared With Vinorelbine in Elderly Patients With Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer: Results of the West Japan Thoracic Oncology Group Trial (WJTOG 9904)

S Kudoh, K Takeda, K Nakagawa.et al. J Clin Oncol. 2006; 24(22): 3657-63. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
非小細胞肺癌 一次治療 第3相 全生存期間 日本 あり

試験名 :WJTOG9904

レジメン:ドセタキセル vs ビノレルビン

登録期間:2000年5月〜2003年9月

背景

非小細胞肺癌の高齢者に対する治療は、過去の前向き研究でビノレルビン(VNR)がBest supportive care(BSC)と比較して生存期間の延長を示し、標準治療として位置づけられていた。
本邦でおこなわれた2つの非小細胞肺癌に対するドセタキセル(DOC)単剤(60mg/m2)の3週毎投与の第2相試験に関して、70歳以上の高齢者でのサブグループ解析を追加で行ったところ、53例の患者の年齢中央値は74歳(70-80歳)で、生存期間中央値10.3ヶ月、奏効割合24.5%という結果であった。以上のことから、DOCは高齢者においても忍容性のある有効な治療と考えられた。
WJTOG 9904試験は、未治療進行非小細胞肺癌の高齢者に対するDOCとVNRの有効性を検討した第3相比較試験である。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

生存期間中央値を60%延長することを期待してVNRで6.4ヶ月、DOCで10.3ヶ月と仮定し、両側α=0.05、検出力80%を得るために両群90例ずつのサンプルサイズの設定とした。中間解析は120例登録後に実施され、試験の継続を決定した。

試験結果:

  • 2000年5月から2003年9月までに日本の32施設から182例(DOC群90例、VNR92例)が登録された。
  • VNR群より二重登録が1例、DOC群より同意撤回が1例あり、ITT集団は180例(DOC群89例、VNR群91例)で全生存期間と無増悪生存期間が解析された。DOC群のうち1例が治療前の病勢進行のため、DOC群88例、VNR群91例で毒性評価と有効性評価はおこなわれた。
  • 両群間で患者背景の偏りはみられなかったが、VNR群にPS 2の患者が多い傾向にあった(p=0.057)。
  • 治療回数中央値はDOCで4サイクル、VNRで3サイクルと有意差があった(p=0.050)。DOC群で45/88例(51.1%)、VNR群で37/91例(40.7%)が4サイクル治療を完遂した。治療完遂できなかった主な理由としては、病勢進行(DOC群19.3% vsVNR群 35.2%)、有害事象(12.5% vs 9.9%)、主治医判断(6.8% vs 5.5%)、プロトコル違反(3.4% vs 3.3%)、同意撤回(2.3% vs 3.3%)が挙げられた。
  • relative dose intensityについては両群でほぼ予定通りの投与が可能であった。(90.7% vs 83.1%)
  • 二次治療は85例(DOC群45例、VNR群40例)(47.5%)の患者におこなわれた。DOC群のうち5例が二次治療でVNRを、VNR群のうちの9例がDOCを投与された。二次治療としてゲフィチニブが52例(29.0%)に投与された(DOC群33例(37.5%)、VNR群19例(20.9%))。
1. 全生存期間

DOCは生存期間を延長する傾向がみられたが、統計学的有意差はみられなかった。

  中央値 HR 0.780      
(95% CI 0.561-1.085)
p=0.138      
DOC 14.3ヶ月
VNR 9.9ヶ月
2. 奏効割合

DOCはVNRと比較して有意に奏効割合の改善をみとめた。

 
  DOC (n=88) VNR (n=91)  
完全奏効(CR) 0 0  
部分奏効(PR) 20(22.7%) 9(9.9%)  
安定(SD) 47(53.4%) 45(49.5%)  
進行(PD) 18(20.5%) 34(37.4%)  
評価不能 3(3.4%) 3(3.3%)  
奏効割合(95% CI) 22.7%(13.9-31.5) 9.9%(3.8-16.0) p=0.019
3. 有害事象

Grade3以上の好中球減少はDOC群で多かったが(p=0.031)、Grade3以上の発熱性好中球減少症や感染の頻度はVNR群と有意差を認めなかった。DOC群で1例、治療関連の肺臓炎による死亡例がみられた。

  DOC (N=88) , (%) VNR(N=91) , (%)
  Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4 Grade 1 Grade 2 Grade 3 Grade 4
白血球減少 10.2 27.3 52.3 5.7 6.6 30.8 35.2 16.5
好中球減少 0 6.8 26.1 56.8 2.2 9.9 30.8 38.5
貧血 59.1 36.4 2.3 1.1 41.8 42.9 8.8 1.1
血小板減少 13.6 0 0 0 26.4 0 0 0
AST増加 22.7 2.3 1.1 0 24.2 4.4 3.3 0
ALT増加 27.3 3.4 1.1 0 19.8 5.5 2.2 0
クレアチニン増加 11.4 0 0 1.1 9.9 0 0 3.3
悪心 25.0 17.0 10.2 0 20.9 14.3 8.8 0
嘔吐 9.1 3.4 0 0 0 1.1 1.1 0
発熱性好中球減少症 - - 12.5 0 - - 11.0 0
感染 4.5 15.9 11.4 0 5.5 7.7 13.2 0
便秘 26.1 14.8 2.3 0 18.7 20.9 5.5 1.1
下痢 15.9 5.7 4.5 0 14.3 3.3 1.1 0
粘膜炎 10.2 5.7 0 0 3.3 0 0 0
脱毛症 45.5 28.4 - - 30.8 0 - -
末梢神経障害 12.5 1.1 0 0 7.7 0 0 0
4. QOL

Global QOLスコアでは両群に有意差をみとめなかったが、DOC群はVNR群と比較して、全身の症状に関しては有意な改善をみとめた。

  オッズ比(95%信頼区間)
Global GOL (face scale) 1.30 (0.80-2.11)
症状全体 1.86 (1.09-3.20)
咳嗽 1.21 (0.64-2.28)
疼痛 0.97 (0.35-2.73)
食欲低下 2.12 (1.02-4.43)
息切れ 0.80 (0.42-1.51)
倦怠感 2.38 (1.18-4.81)
悪心 2.06 (0.41-10.23)
胃腸症状 0.99 (0.48-2.05)
睡眠障害 1.05 (0.58-1.91)
結語
高齢者非小細胞肺癌に対して、DOCはVNRと比較して奏効割合、無増悪生存期間、治療関連症状の改善をみとめた。全生存期間は統計学的に有意な改善をみとめなかったが、本試験の結果をもとにDOCは高齢者非小細胞肺癌に対する本邦の標準治療となった。
執筆:千葉大学医学部附属病院 呼吸器内科 医員 日野 葵 先生
監修:神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長 池田 慧 先生

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