MSI-H固形癌 KEYNOTE-158

Efficacy of Pembrolizumab in Patients With Noncolorectal High Microsatellite Instability/Mismatch Repair-Deficient Cancer: Results From the Phase II KEYNOTE-158 Study

Marabelle A, Le DT, Ascierto PA, et al. J Clin Oncol. 2020 Jan 1;38(1):1-10. [PubMed]

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対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
MSI-H/dMMR
大腸癌以外の固形癌
二次治療以降 第2相 奏効割合 国際 あり

試験名 :KEYNOTE-158

レジメン:ペムブロリズマブ

登録期間:2016年2月1日〜2018年5月8日

背景

ミスマッチ修復欠損(mismatch repair deficiency: dMMR)の頻度は固形癌全体の約2~4%とされている。ミスマッチ修復欠損はリンチ症候群のような遺伝性腫瘍や散発性(より高頻度)に発生し、子宮体癌では17~33%、胃癌では9~22%、大腸癌では6~13%に認められ、他の癌種では頻度が低い(例:膀胱癌、前立腺癌、乳癌、腎細胞癌、膵癌、小細胞肺癌、甲状腺癌、肉腫)。
ミスマッチ修復欠損により生じたDNA複製エラーは、マイクロサテライトと呼ばれるDNAの1〜数塩基の繰り返し配列の部分で起こりやすく、高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-High: MSI-H)をもたらす。dMMR固形癌は、ミスマッチ修復欠損による高免疫原性に加え、腫瘍細胞のPD-L1発現促進等により免疫寛容機構も獲得しており、免疫チェックポイント阻害薬が有効性を示すと考えられている。
PembroはPD-1に対するヒト化モノクローナル抗体であり、不活性化T細胞のPD-1に結合することにより、癌細胞や免疫細胞上のPD-L1およびPD-L2との結合を阻害することで、T細胞を再活性化し抗腫瘍効果を発現する。MSI-H/dMMRを有する切除不能大腸癌及び、その他の固形癌に対するPembro(10mg/kg、2週毎投与)の有効性を探索した初の臨床試験 [Pubmed] (N=41)においては、マイクロサテライト安定性(microsatellite stable: MSS)大腸癌では奏効割合 0%(0/18)に対し、MSI-H大腸癌で40%(4/10)、大腸癌以外のMSI-H固形癌では71%(5/7)と極めて高い奏効割合を示した。その後、5つの臨床試験におけるMSI-H/dMMR固形癌に対するPembroの有効性の統合解析と併せ、2017年5月に米国食品医薬品局(FDA)は、標準的な治療に不応な切除不能または転移性のMSI-H/dMMR固形癌、およびフッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンに不応となったMSI-H/dMMR大腸癌に対してPembroを迅速承認した。
本試験は癌腫及び臓器横断的なMSI-HもしくはdMMRという共通のバイオマーカーに基づく初の承認形態であった。わが国においても進行MSI-H固形癌に対してPembroが同様の承認を得ている。
KEYNOTE-158試験は前治療歴を有する大腸癌以外の27癌種の進行性MSI-H/dMMR固形癌を対象に実施されたPembro(200mg、3週毎投与)の有効性と安全性を検討したマルチコホートの第2相試験である。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:客観的奏効割合(ORR) (中央判定:RECIST v1.1)

奏効割合は、点推定値及び二項分布に基づく正確法による95%信頼区間を算出した。症例数の設定根拠は記載なし。

試験結果:

  • 2016年2月1日から2018年5月8日の間に、18ヶ国55施設より233例が登録された。
  • 年齢中央値は60.0歳、女性が58.8%(137/233)であり、59.7%(139/233)が2レジメン以上の治療歴を有していた。
  • 登録された癌種は、多い順に子宮体癌 49例(21.0%)、胃癌 24例(10.3%)、胆道癌 22例(9.4%)、膵癌 22例(9.4%)、小腸癌 19例(8.2%)、卵巣癌 15例(6.4%)、脳腫瘍 13例(5.6%)、肉腫 9例(3.9%)、神経内分泌腫瘍 7例(3.0%)、子宮頸癌 6例(2.6%)、前立腺癌 6例(2.6%)、副腎皮質癌 5例(2.1%)、乳癌 5例(2.1%)、甲状腺癌 5例(2.1%)、尿路上皮癌 5例(2.1%)、中皮腫 4例(1.7%)、小細胞肺癌 4例(1.7%)、腎癌 3例(1.3%)、唾液腺癌 2例(0.9%)、肛門管癌 1例(0.4%)、頭頚部扁平上皮癌 1例(0.4%)、上咽頭癌 1例(0.4%)、後腹膜腫瘍 1例(0.4%)、精巣腫瘍 1例(0.4%)、扁桃腺癌 1例(0.4%)、膣癌 1例(0.4%)、外陰癌 1例(0.4%)であった。
  • 本解析のデータカットオフは2018年12月6日であり、観察期間中央値は13.4ヶ月(範囲:0.4-34.2)であった。データカットオフ時に36例(15.5%)が治療継続中であった。
  • 治療中止となった症例(n=163)の内訳は、病勢進行(n=119, 51.1%)、有害事象(n=29)、患者希望(n=8)、完全寛解(n=3)、主治医判断(n=2)、不適格な投薬(n=1)、追跡不能(n=1)であった。また、34例がPembroの投与(35サイクル)を完遂した。
1. 客観的奏効割合(主要評価項目)
N=233 No. (%)
奏効割合
 [95%信頼区間]
80 (34.3)
[28.3-40.8]
 CR 23 (9.9)
 PR 57 (24.5)
 SD 42 (18.0)
 PD 92 (39.5)
 NE 2 (0.9)
 No assessment 17 (7.3)
奏効までの期間中央値;ヶ月(範囲) 2.1 (1.3-10.6)
奏効期間中央値;ヶ月(範囲)
 12ヶ月以上, No. (%)
 18ヶ月以上, No. (%)
 24ヶ月以上, No. (%)
未到達 (2.9-31.3+)
58 (86.9)
40 (79.9)
14 (77.6)
  主治医判定:奏効例 主治医判定:非奏効例
中央判定:奏効例 71 9 80
中央判定:非奏効例 13 140 153
84 149 233
  • 中央判定と主治医判定は高い一致率であった。
  • 標的病変の長径和は57.1%(133/233)で治療開始時より縮小傾向を示し、44.2%(103/233)で30%以上の腫瘍縮小を示した。
  • 標的病変の長径和が最も減少したがん種は子宮内膜癌で、47例中37例で治療開始時より縮小傾向を示し、47例中33例で30%以上の腫瘍縮小を示した。
2. 無増悪生存期間 (PFS)
症例数 イベント数 中央値 95%信頼区間 12ヶ月PFS割合 24ヶ月PFS割合
233 160 (68.7%) 4.1ヶ月 2.4-4.9 33.9% 29.3%
3. 全生存期間 (OS)
症例数 イベント数 中央値 95%信頼区間 12ヶ月OS割合 24ヶ月OS割合
233 113 (48.5%) 23.5ヶ月 13.5-未到達 60.7% 48.9%
4. がん種別の治療成績(登録数の多いがん腫)
がん種 症例数 CR (N) PR (N) 奏効割合
[95%信頼区間]
PFS中央値
[95%信頼区間]
OS中央値
[95%信頼区間]
奏効期間中央値
[範囲]
子宮体癌 49 8 20 57.1%
[42.2-71.2]
25.7ヶ月
[4.9-未到達]
未到達
[27.2-未到達]
未到達
[2.9-27.0+]
胃癌 24 4 7 45.8%
[25.6-67.2]
11.0ヶ月
[2.1-未到達]
未到達
[7.2-未到達]
未到達
[6.3-28.4+]
胆道癌 22 2 7 40.9%
[20.7-63.6]
4.2ヶ月
[2.1-未到達]
24.3ヶ月
[6.5-未到達]
未到達
[4.1+-24.9+]
膵癌 22 1 3 18.2%
[5.2-40.3]
2.1ヶ月
[1.9-3.4]
4.0ヶ月
[2.1-9.8]
13.4ヶ月
[8.1-16.0+]
小腸癌 19 3 5 42.1%
[20.3-66.5]
9.2ヶ月
[2.3-未到達]
未到達
[10.6-未到達]
未到達
[4.3+-31.3+]
卵巣癌 15 3 2 33.3%
[11.8-61.6]
2.3ヶ月
[1.9-6.2]
未到達
[3.8-未到達]
未到達
[4.2-20.7+]
脳腫瘍 13 0 0 0.0%
[0.0-24.7]
1.1ヶ月
[0.7-2.1]
5.6ヶ月
[1.5-16.2]

+ 最終評価からの病勢進行を認めていない

5. 有害事象
  全Grade, N(%) Grade 3-5, N(%)
全治療関連有害事象 151(64.8) 34(14.6)
頻度5%以上    
 疲労 34(14.6) 2(0.9)
 そう痒症 30(12.9) 0
 下痢 28(12.0) 0
 無力症 25(10.7) 1(0.4)
 甲状腺機能低下症 19(8.2) 0
 関節痛 18(7.7) 0
 悪心 15(6.4) 0
 皮疹 12(5.2) 0
免疫関連有害事象・インフュージョンリアクション    
 甲状腺機能低下症 21(9.0) 0
 甲状腺機能亢進症 12(5.2) 1(0.4)
 肺炎 9(3.9) 3(1.3)
 大腸炎 9(3.9) 2(0.9)
 肝炎 4(1.7) 2(0.9)
 重度の皮疹 3(1.3) 3(1.3)
 筋炎 3(1.3) 0
 1型糖尿病 2(0.9) 1(0.4)
 インフュージョンリアクション 2(0.9) 0
 腎炎 2(0.9) 0
 ギランバレー症候群 1(0.4) 1(0.4)
 膵炎 1(0.4) 1(0.4)
  • 治療関連死亡は1例:肺炎
  • 重篤な治療関連有害事象を18例(7.7%)に認め、22例(9.4%)において治療関連有害事象による治療中止を認めた。
  • 高頻度に生じたGrade 3以上の有害事象はGGT増加(n=4, 1.7%)と肺炎(n=3, 1.3%)であった。
  • Grade 4の有害事象を3例に認めた(ギランバレー症候群、ALT増加、好中球数減少と大腸炎の合併が各1例)。
  • 担当医により治療関連性に関わらず、免疫関連有害事象およびインフュージョンリアクションは54例(23.2%)に発症した。12例(5.2%)は免疫関連有害事象およびインフュージョンリアクションにより治療中止となった。
  • 多くの免疫関連有害事象およびインフュージョンリアクションはGrade 1-2であったが、14例(6.0%)でGrade 3-4であった。2例でGrade 4の免疫関連有害事象(ギランバレー症候群、大腸炎)を生じた。
結語
本研究では切除不能でMSI-H/dMMRを有する大腸癌以外の固形癌既治療例に対してPembroによる抗PD-1療法の持続的な臨床的有用性を示した。有害事象はPembro単剤療法の既報と一致していた。
執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 副医長 白数 洋充 先生
監修:関西医科大学付属病院 がんセンター 学長特命准教授 佐竹 悠良 先生

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