膵癌 (mFOLFIRINOX Jpn)

A Phase II Study of Modified FOLFIRINOX for chemotherapy-naïve Patients With Metastatic Pancreatic Cancer.

Ozaka M, Ishii H, Sato T, et al. Cancer Chemother Pharmacol. 2018 ;81:1017-23 [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
膵癌 一次治療 第2相 全生存期間 国内 あり

試験名 :なし

レジメン:modified FOLFIRINOX

登録期間:2014年2月〜2014年12月

背景

FOLFIRINOXはPS良好な転移性膵癌の初回治療において、ゲムシタビンとのランダム化比較第3相試験(ACCORD 11試験)の結果を基に標準治療の一つとして認識されている。本邦でも転移性膵癌を対象に第2相試験が実施され、有効性はACCORD 11試験と同等であったことが示された。しかし、Grade 3以上の好中球減少(77.8%)、発熱性好中球減少症(22.2%)の発現頻度が高かった。有効性を保ちつつ、より安全なFOLFIRINOXの開発が必要であると考えられ、最初から5-FU急速静注とイリノテカンを減量して開始する今回の第2相試験の実施に至った。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

本試験は主要評価項目を全生存期間とした。modified FOLFIRINOX(mFOLFORINOX)の全生存期間の期待値を11ヶ月、閾値を7ヶ月、検出力80%、片側α=0.025として設定し、60例の登録が必要とされた。若干の不適格例を考慮し、予定登録数は65例とした。

試験結果:

  • 2014年2月から2014年12月の間に、国内39施設より69例が登録された。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  OS中央値 95%信頼区間 1年生存割合
mFOLFIRINOX(n=69) 11.2ヶ月 9.0- 48.1%
2. 無増悪生存期間
  PFS中央値 95%信頼区間 1年無増悪生存割合
mFOLFIRINOX(n=69) 5.5ヶ月 4.1-6.7 21%
3. 奏効割合
  奏効割合
mFOLFIRINOX(n=69) 26(37.7%)
4. 病勢制御割合
  病勢制御割合
mFOLFIRINOX(n=69) 54(78.3%)
5. 有害事象
  mFOLFIRINOX(n=69)
  Grade 3以上
好中球減少 33 (47.8%)
白血球減少 20 (29%)
血小板減少 2 (2.9%)
貧血 3 (4.3%)
発熱性好中球減少 6 (8.7%)
食欲不振 11 (15.9%)
下痢 7 (10.1%)
嘔気 6 (8.7%)
胆管炎 6 (8.7%)
疲労 4 (5.8%)
末梢性感覚ニューロパチー 4 (5.8%)
インフュージョンリアクション 1(1.4%)

好中球減少や発熱性好中球減少症でG-CSFを使用された患者は18%であった。

結語
本試験の結果、modified FOLFIRINOXは有効性を保ったまま、予防的pegfilgrastimの投与なしに安全性を改善した。
執筆:杏林大学 腫瘍内科学 助教 岡野 尚弘 先生
監修:神奈川県立がんセンター 消化器内科 肝胆膵 部長 上野 誠 先生

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